京都ツウのススメ

第二十回 京の梵鐘(ぼんしょう)

[京都に響く 梵鐘の音]日本三大梵鐘に数えられる知恩院の大鐘など、京都には深い歴史を秘めた数々の梵鐘が残っています。心を清める京の梵鐘を、らくたびの山村純也さんがご紹介します。

京の梵鐘の基礎知識

其の一、
仏教伝来とともに日本に伝わり、京都でも多くの梵鐘が造られました
其の二、
京都には、日本三大梵鐘のうちふたつ(知恩院・方広寺)があります
其の三、
知恩院の「除夜の鐘」は、暮れの風物詩のひとつとして親しまれています

時を知らせる梵鐘の音

梵鐘の「梵」は、サンスクリット語の「ブラフマン」に由来し、神聖・清浄を意味します。梵鐘はインドや中国を経て、仏教とともに日本に伝来。仏教法具として宗教儀式に用いられてきました。やがて朝夕など、法要の始まる「時」を知らせる道具となり、その厳かな響きで寺院と庶民をつなぐ大切な役割を担うようになりました。ちなみに、寺で日(太陽)の動きを見て、時刻を知らせたことから、「日」+「寺」で「時」という漢字ができたとも言われています。

京都の名鐘

日本最大級の知恩院の大鐘、豊臣家滅亡の引き金となった方広寺の梵鐘など、京都には歴史的な名鐘が数多く残っています。このふたつに、奈良県・東大寺の梵鐘(国宝)を加えたものが、一般に日本三大梵鐘と呼ばれています。このほか、右京区花園の妙心寺には約1300年前の鋳造という日本最古の「黄鐘調(おうじきちょう)」や、高雄・神護寺の「三絶の鐘」(ともに国宝)など、その音色・姿形・銘文から名鐘と誉れ高い梵鐘が市内各所に点在しています。

深い歴史を秘めた京の梵鐘 京都でも特に有名な、知恩院・方広寺・平等院の梵鐘を紹介します。

知恩院 祇園四条
迫力ある大鐘

1636(寛永13)年に鋳造された鐘。高さ約3.3m、口径約2.2m、厚さ0.3mという日本最大級のもので、戦時中に供出を迫られた時も、大き過ぎて持ち出せなかったという逸話が残ります。この鐘が響くのは4月に行われる法然上人(ほうねんしょうにん)の御忌大会(ぎょきだいえ)と大みそか、そして同院で行われる成人式の年3回です。

  • 9時~16時(受付)
  • 境内無料 庭園:大人300円・小中生150円
  • 075-531-2111 www.chion-in.or.jp
  • 祇園四条駅下車 東へ徒歩約15分
ココがツウ

1922(大正11)年、相対性理論で知られるアインシュタインは、鐘の下では音の波が打ち消し合って無音になるかどうか、知恩院の鐘をついて実験をしました

歴史揺るがした「国家安康の鐘」

1614(慶長19)年に、豊臣秀吉の嫡男・秀頼により造られた梵鐘。鐘の表面に刻まれた銘文中に「国家安康(こっかあんこう)」「君臣豊楽(くんしんほうらく)」の文字があるのを知った徳川家康は、「家康の名が引き裂かれている」と激怒。この事が大坂冬の陣のきっかけとなり、豊臣家の滅亡を加速させたと言われています。

  • 9時~16時
  • 境内無料 本堂:大人200円・中学生以下100円
  • 七条駅下車 北東へ徒歩約10分
ココがツウ

方広寺の北東に鐘鋳(かねい)町という地名があり、この鐘はここで造られたと言われています

方広寺 七条
平等院 宇治
「姿の平等院鐘」と呼ばれる国宝

平安時代を代表する梵鐘として知られ、現在は平等院ミュージアム鳳翔館で見ることができます。日本の梵鐘の中でもとりわけ華麗な装飾文様を施したものとして知られ、神護寺の「銘の神護寺鐘」(または、奈良県・東大寺の「勢の東大寺鐘」)、滋賀県・三井寺の「声の園城寺鐘」と並び、日本三名鐘のひとつに数えられています。

  • 8時30分~17時15分(受付)
    ※鳳翔館は9時~16時45分(受付)
  • 大人600円・中高生400円・小学生300円
  • 0774-21-2861 www.byodoin.or.jp
  • 宇治駅下車 南へ徒歩約10分
ココがツウ

平等院の梵鐘は、かつて鳳凰堂南側の池のほとりに建つ鐘楼にかけられていました

除夜の鐘

1年の最後の夜を「除夜」と言い、この時つく鐘が「除夜の鐘」です。人間が持つと言われる108の煩悩を除くため、鐘は108回つかれます。知恩院では、親綱・子綱を引く17人の僧侶が「えーいひとつ」「そーれ」の掛け声で1分間に1回打ち鳴らします。そのダイナミックなつき方と重厚な音は人々を圧倒し、毎年約3万もの人が訪れます。

鐘の音とともに新年を迎えませんか?

各寺の除夜の鐘 12/31(木)

  • 知恩院 22時40分頃 ※見学のみ
  • 方広寺 23時50分 先着順(108つまで)
  • 平等院 23時30分 先着順
制作:2009年11月
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