京都ツウのススメ

第八十二回 京の禅寺

[禅の世界と京都の禅寺] 京都市内に数多くある禅寺。禅に秘められた歴史や文化をらくたびの若村亮さんが案内します。

京の禅寺の基礎知識

其の一、
仏様の心を持ち、悟りを開くという禅の考えが中国から伝わりました
其の二、
日本3大禅宗が確立し、修行する道場として各地に禅寺が建立されました
其の三、
京都初の禅寺は建仁寺で、日本の臨済宗の祖・栄西が開山しました

禅の教えと禅寺の生活

禅とは、本来人に備わっている、仏様と同じ澄み切った心や、自らの心を見つめ直してそれを自覚した境地(悟り)を意味し、インド人仏教僧・菩提達磨(ぼだいだるま)が、中国でその教えを説いて誕生したとされています。その後、日本にも禅の教えが伝わり、僧侶たちが修行するための道場である禅寺が建てられました。禅寺では、坐禅などの修行や、禅僧が出世するのに必要な教養とされた漢詩や語録を記した五山文学、水墨画などの文芸活動も盛んに行われました。

3大禅宗と京都

一般的に禅宗と言いますが、これは臨済宗・曹洞宗・黄檗宗の3つの宗派の総称で、宗派によって思想や修行は若干異なります。鎌倉時代に栄西が臨済宗、道元が曹洞宗を伝え、室町時代には幕府の下で発展しました。江戸時代になって中国の隠元が黄檗宗を伝え、武士や民衆を中心に禅が広まりました。また、臨済宗は鎌倉幕府の北条家と室町幕府の足利家にあつく信仰され、特に室町時代の武家政権に支持されました。幕府から保護を受けたことにより、京都には臨済宗のお寺が多いと言われています。

【京の禅寺】 京都にある禅寺の歴史についてご紹介します。

京都最古の禅寺は、1202(建仁2)年、禅宗の一派である臨済宗の祖・栄西が開山した建仁寺です。禅の作法や規則が厳格に守られた道場で、戦乱や鎌倉幕府の衰退によって荒廃しますが、復興して現在に至ります。室町時代以降、金閣寺・銀閣寺・龍安寺・東福寺などを含めた72の禅寺が次々と建立され、それらの中には、日本最大規模を誇る妙心寺や、最も格式高い南禅寺をはじめ、京都五山と呼ばれる禅寺などがありました。

南禅寺 ココがツウ
京都五山とは…

禅宗の統制と保護のために始めた中国の五山制度にならい、室町時代初期に後醍醐天皇が定めた、京都の格式高い5つの禅寺。時代により入れ替わりがありましたが、1386(至徳3)年、足利義満は自ら建立した相国寺を五山に加えるため、天皇によって建立された南禅寺を五山より上となる禅寺の最高位としました。同年から京都五山は、天龍寺・相国寺・建仁寺・東福寺・万寿寺と定められました

【禅寺を知るキーワード】 意外と知らない禅寺の特徴を見ていきましょう。

坐禅
【1】 坐禅

坐禅は、姿勢を正して座り、心を静め精神統一をはかる禅の基本的な修行法です。姿勢が乱れると警策(けいさく)を持った僧が肩を打って戒めます。近年では、一般の人も坐禅を体験できる禅寺が増えています。

ココがツウ

臨済宗は人と向かい合う対面形式の坐禅、曹洞宗は壁に向かって行う面壁(めんぺき)と呼ばれる坐禅で、宗派によって違いがあります

精進料理
【2】 精進料理

禅の教えを実践するため、食事も重要な修行と位置付けられています。肉食を禁ずる教えに従って、穀類や豆、野菜など植物性の材料を使い、素材そのものの味を生かすように調理したのが精進料理です。また、黄檗宗では「普茶(ふちゃ)料理」という中国風の精進料理を食べます。様々な植物油を使った炒め物や揚げ物、豆腐を素材にして肉や魚に似せた擬製料理などが特徴です。

ココがツウ

安土桃山時代、禅の影響を受けた千利休が茶の湯に取り入れた簡素な料理を「茶懐石」と言い、後の懐石料理に受け継がれました

【3】 龍の絵
龍の絵 東福寺「蒼龍図」

禅寺では、本堂や法堂の天井や襖に「昇り龍」が描かれています。龍は、仏教を守護する8つの神・八部衆のひとつとされ、龍神とも言われます。そのため、龍を天井に描くことで、師匠から弟子へ法を説く場を空から見守るという意味が込められているほか、龍は法の雨を降らすという教えがあります。また、龍神が水をつかさどることから、寺院を火災から守ると言い伝えられています。

京都の代表的な龍図
  • 天龍寺「雲龍図」(加山又造筆)
  • 相国寺「蟠(ばん)龍図」(狩野光信筆)
  • 建仁寺「双龍図」(小泉淳作筆)
  • 東福寺「蒼龍図」(堂本印象筆) など
【4】 塔頭(たっちゅう)

元来は亡き祖師や高僧の徳を慕った弟子が敷地内に建てた塔や小さな院のこと。後に、引退した高僧が住んだ子院もこう呼ばれるように。京都では、特に塔頭の多い寺院として東福寺、南禅寺、大徳寺、妙心寺が知られています。

制作:2015年1月
バックナンバー
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第十八回 時代祭
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第十一回 京菓子の歴史
第十回 枯山水庭園の眺め方
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第六回 京都の着物
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第四回 送り火の神秘
第三回 祇園祭の楽しみ方
第二回 京の名水めぐり
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