京都ツウのススメ
第百四十五回 ヴォーリズ建築
京の街にたたずむヴォーリズ建築京都の街のあちこちで見られるヴォーリズ建築。らくたびの若村亮さんと一緒に、ヴォーリズの人物像とその作品を見てみましょう。
基礎知識
其の一、
- 建築家として知られるヴォーリズは英語教師として来日しました
其の二、
- ヴォーリズが初めて建築事務所を開いたのは京都でした
其の三、
- 京都の街には、様々な形で残されているヴォーリズ建築があります
英語を教えるために来日
日本各地に優美な建物を残したことで知られる建築家のウィリアム・メレル・ヴォーリズ。彼による建物はヴォーリズ建築と呼ばれ、今も多くの人に愛されています。ヴォーリズが生まれたのは、アメリカのカンザス州。大学卒業後、キリスト教の精神に基づいて青少年の生活指導などを行う公共団体・YMCAに勤務し、その紹介で24歳の時に英語教師として滋賀県近江八幡市にやって来ました。これがヴォーリズと日本の出会いでした。
教職を解雇され、建築の道へ
英語教師になったヴォーリズは、放課後に聖書を使って英語を教えるバイブルクラスを開講しました。多くの生徒に慕われる一方で、仏教徒の多い地域の反感を買い、教師の職を解かれます。その後、近江八幡YMCA会館(現・アンドリュース記念館)を建設。その実績が評価され、京都YMCA会館の建築工事を監督する仕事を得ました。これを機にヴォーリズは建築現場内に事務所を設立。建築家の道を歩むことになりました。
ウィリアム・メレル・ヴォーリズ
1880年、アメリカ・カンザス州生まれ。1905年の来日以来、滋賀県近江八幡市、長野県軽井沢町などを拠点に建築家として活動する一方、実業家としての顔も持つ。1919年、子爵・一柳末徳(ひとつやなぎすえのり)の娘・満喜子と結婚。1941年日本に帰化し、一柳米来留(めれる)と改名。1964年、83歳で永眠。
何のためにニッポンヘ?
大学生の時ヴォーリズは、課外活動としてYMCAやキリスト教の海外宣教運動組織に所属し、熱心に活動していました。4年生で出席した世界大会で、東洋での宣教活動の話を聞き、自身も東洋の国々での伝道を志すようになりました。その後、YMCAに就職。その紹介で英語教師として来日しました。
建築家としてのスタートは?
来日2年目の春、ヴォーリズは宣教活動を理由に教師を解任されてしまいます。解任の翌年に京都YMCA会館建設現場の監督の職を得ますが、もともと建築家になることはキリスト教の宣教を志すまでの彼の夢。これが建築の道を歩むきっかけとなりました。
ほかの事業も?
ヴォーリズは、軟膏薬「メンターム」で知られる近江兄弟社の創始者でもあります。熱心なクリスチャンであったアメリカの実業家ハイドが発明した軟膏薬を輸入し発売したのが始まりです。この日本での販売はヴォーリズの宣教や社会奉仕活動に大きな支援となりました。
京都御幸町教会 (きょうとごこまちきょうかい) [中京区]
京の街のための教会
1913(大正2)年に竣工。尖塔アーチを描く大窓が印象的な教会堂で、ヴォーリズ初期の代表的な作品のひとつです。京都市の有形指定文化財に登録されています。
和風建築の多い京都の街になじむことを考えてか、屋根には十字架が掲げられていません。しかし、窓の周囲など随所に十字架をモチーフにしたデザインが施されています
東華菜館 (とうかさいかん) [下京区]
四条通のシンボル
1926(大正15)年竣工。もとは八尾政という西洋レストランでした。ヴォーリズによる商業施設の建築は少なく、東華菜館の建物はヴォーリズ建築唯一のレストランです。
エントランスやドア上部などの美しいレリーフが特徴ですが、そのモチーフにはレストランらしく、イカやタコ、ホタテなどが刻まれています
駒井家住宅 (こまいけじゅうたく) [左京区]
円熟期の傑作
1927(昭和2)年、京都大学名誉教授・駒井卓の私邸として建築されました。妻・静江は、ヴォーリズの妻の学友。その居心地の良さに「人が仲良くなる家」と呼ばれたと言います。
建物2階の南東角の部屋の壁面は床から窓になっており、京都五山送り火で知られる大文字山(如意ヶ嶽)と比叡山の両方が眺められます
京都YWCAサマリア館 [上京区]
受け継がれる建物
1936(昭和11)年に設計された京都YWCA会館の一部で、2014(平成26)年に一粒社ヴォーリズ建築事務所によって改修されました。現在、1階はカフェ、2階はレンタルスペースなどとして活用されています。
- 第百九十三回 秋の京菓子
- 第百九十二回 京都の植物
- 第百九十一回 京都の風習
- 第百九十回 幻の巨椋池(おぐらいけ)
- 第百八十九回 京都と魚
- 第百八十八回 京都とお花見
- 第百八十七回 京の歌枕(うたまくら)の地
- 第百八十六回 京都の地ソース
- 第百八十五回 『源氏物語』ゆかりの地
- 第百八十四回 京の煤払(すすはら)い
- 第百八十三回 京都の坪庭(つぼにわ)
- 第百八十二回 どこまで分かる?京ことば
- 第百八十一回 京都の中華料理
- 第百八十回 琵琶湖疏水と京都
- 第百七十九回 厄除けの祭礼とお菓子
- 第百七十八回 京都と徳川家
- 第百七十七回 京の有職文様(ゆうそくもんよう)
- 第百七十六回 大念仏狂言(だいねんぶつきょうげん)
- 第百七十五回 京表具(きょうひょうぐ)
- 第百七十四回 京の難読地名
- 第百七十三回 京の縁日
- 第百七十二回 京の冬至(とうじ)と柚子(ゆず)
- 第百七十一回 京都の通称寺
- 第百七十回 京都とキリスト教
- 第百六十九回 京都の札所(ふだしょ)巡り
- 第百六十八回 お精霊(しょらい)さんのお供え
- 第百六十七回 京の城下町 伏見
- 第百六十六回 京の竹
- 第百六十五回 子供の行事・儀式
- 第百六十四回 文豪と京の味
- 第百六十三回 普茶(ふちゃ)料理
- 第百六十二回 京都のフォークソング
- 第百六十一回 京と虎、寅
- 第百六十回 御火焚祭
- 第百五十九回 鴨川の橋
- 第百五十八回 陰陽師(おんみょうじ)
- 第百五十七回 京都とスポーツ
- 第百五十六回 貴族の別荘地・伏見
- 第百五十五回 京都の喫茶店
- 第百五十四回 京の刃物
- 第百五十三回 京都の南蛮菓子
- 第百五十二回 京の社家(しゃけ)
- 第百五十一回 京都にゆかりのある言葉
- 第百五十回 京のお雑煮
- 第百四十九回 京の牛肉文化
- 第百四十八回 京の雲龍図(うんりゅうず)
- 第百四十七回 明治の京都画壇
- 第百四十六回 京の名所図会(めいしょずえ)
- 第百四十五回 ヴォーリズ建築
- 第百四十四回 島原の太夫(たゆう)
- 第百四十三回 京の人形
- 第百四十二回 京の社寺と動物
- 第百四十一回 鳥居(とりい)
- 第百四十回 冬の食べ物
- 第百三十九回 能・狂言と京都
- 第百三十八回 京都と様々な物の供養
- 第百三十六回 京都とビール
- 第百三十五回 京都と鬼門(きもん)
- 第百三十四回 精進料理
- 第百三十三回 明治時代の京の町
- 第百三十二回 皇室ゆかりの建物
- 第百三十一回 京の調味料
- 第百三十回 高瀬川
- 第百二十九回 蹴鞠
- 第百二十八回 歌舞伎
- 第百二十七回 京都に残るお屋敷
- 第百二十六回 京の仏像 [スペシャル版]
- 第百二十五回 京の学校
- 第百二十四回 京の六地蔵めぐり
- 第百二十三回 京の七不思議<通り編>
- 第百二十二回 京都とフランス
- 第百二十一回 京の石仏
- 第百二十回 京の襖絵(ふすまえ)
- 第百十九回 生き物由来の地名
- 第百十八回 京都の路面電車
- 第百十七回 神様への願いを込めて奉納
- 第百十六回 京の歴食
- 第百十五回 曲水の宴
- 第百十四回 大政奉還(たいせいほうかん)
- 第百十三回 パンと京都
- 第百十二回 京に伝わる恋物語
- 第百十一回 鵜飼(うかい)
- 第百十回 扇子(せんす)
- 第百九回 京の社寺と山
- 第百八回 春の京菓子
- 第百七回 幻の京都
- 第百六回 京の家紋
- 第百五回 京の門前菓子
- 第百四回 京の通り名
- 第百三回 御土居(おどい)
- 第百二回 文学に描かれた京都
- 第百一回 重陽(ちょうよう)の節句
- 第百回 夏の京野菜
- 第九十九回 若冲と近世日本画
- 第九十八回 京の鍾馗さん
- 第九十七回 言いまわし・ことわざ
- 第九十六回 京の仏師
- 第九十五回 鴨川
- 第九十四回 京の梅
- 第九十三回 ご朱印
- 第九十二回 京の冬の食習慣
- 第九十一回 京の庭園
- 第九十回 琳派(りんぱ)
- 第八十九回 京の麩(ふ)
- 第八十八回 妖怪紀行
- 第八十七回 夏の京菓子
- 第八十六回 小野小町(おののこまち)と一族
- 第八十五回 新選組
- 第八十四回 京のお弁当
- 第八十三回 京都の湯
- 第八十二回 京の禅寺
- 第八十一回 京の落語
- 第八十回 義士ゆかりの地・山科
- 第七十九回 京の紅葉
- 第七十八回 京の漫画
- 第七十七回 京の井戸
- 第七十六回 京のお地蔵さん
- 第七十五回 京の名僧
- 第七十四回 京の別邸
- 第七十三回 糺(ただす)の森
- 第七十二回 京舞
- 第七十一回 香道
- 第七十回 天神さん
- 第六十九回 平安京
- 第六十八回 冬の京野菜
- 第六十七回 茶の湯(茶道)
- 第六十六回 京の女流文学
- 第六十五回 京の銭湯
- 第六十四回 京の離宮
- 第六十三回 京の町名
- 第六十二回 能・狂言
- 第六十一回 京の伝説
- 第六十回 京狩野派
- 第五十九回 京寿司
- 第五十八回 京のしきたり
- 第五十七回 百人一首
- 第五十六回 京の年末
- 第五十五回 いけばな
- 第五十四回 京の城
- 第五十三回 観月行事
- 第五十二回 京の塔
- 第五十一回 錦市場
- 第五十回 京の暖簾
- 第四十九回 大原女
- 第四十八回 京友禅
- 第四十七回 京のひな祭り
- 第四十六回 京料理
- 第四十五回 京の町家〈内観編〉
- 第四十四回 京の町家〈外観編〉
- 第四十三回 京都と映画
- 第四十二回 京の門
- 第四十一回 おばんざい
- 第四十回 京の焼きもの
- 第三十九回 京の七不思議
- 第三十八回 京の作庭家
- 第三十七回 室町文化
- 第三十六回 京都御所
- 第三十五回 京の通り
- 第三十四回 節分祭
- 第三十三回 京の七福神
- 第三十二回 京の狛犬
- 第三十一回 伏見の酒
- 第三十回 京ことば
- 第二十九回 京の文明開化
- 第二十八回 京の魔界
- 第二十七回 京の納涼床
- 第二十六回 夏越祓
- 第二十五回 葵祭
- 第二十四回 京の絵師
- 第二十三回 涅槃会
- 第二十二回 京のお漬物
- 第二十一回 京の幕末
- 第二十回 京の梵鐘
- 第十九回 京のお豆腐
- 第十八回 時代祭
- 第十七回 京の近代建築
- 第十六回 京のお盆行事
- 第十五回 京野菜
- 第十四回 京都の路地
- 第十三回 宇治茶
- 第十一回 京菓子の歴史
- 第十回 枯山水庭園の眺め方
- 第九回 京阪沿線 初詣ガイド
- 第八回 顔見世を楽しむ
- 第七回 特別拝観の楽しみ方
- 第六回 京都の着物
- 第五回 仏像の見方
- 第四回 送り火の神秘
- 第三回 祇園祭の楽しみ方
- 第二回 京の名水めぐり
- 第一回 池泉庭園の眺め方