- 其の一、
- 仏様に花を供える「供花(くげ)」という習慣がルーツです
- 其の二、
- 「華道」としてのいけばなは、室町時代に京都のお寺で生まれました
- 其の三、
- 今では全国に広がり、流派は数百あると言われます
いけばなのルーツは仏教
飛鳥時代、日本に仏教が伝わり、仏前に花を供える習慣が生まれました。この「供花」がいけばなのルーツだと言われますが、現在のように床の間に花を飾るようになるのは、床の間のある書院造が発達した室町時代になってからのこと。武家の間で、中国の絵画や工芸などの美術品を楽しむことが流行し、室内の飾りが発展しました。足利家に仕えた座敷飾りの専門家が残した教本によると、床の間の飾りは花瓶・香炉・燭台の3点が基本です。これらはすべて仏教の道具であり、やはり仏教の影響がみられます。
平安時代の『枕草子』にも瓶(かめ)に挿した桜を愛でるシーンがありますが、部屋の外に飾った花を室内から鑑賞するという形でした。また、貴族の間では栽培した花の優劣を競う遊びもあったそうです
華道発祥の地、京都
室町時代、東福寺の僧・雲泉太極(うんぜん たいぎょく)の日記『碧山日録(へきざんにちろく)』に、池坊専慶(いけのぼう せんけい)という花の名手が登場します。池坊は六角堂の住職として飛鳥時代から仏様に花を供えていましたが、専慶のいけた花が評判を呼び一躍有名に。花をいける心構えを本にまとめ、華道の基礎を作ったのが専慶の後に登場する池坊専応(せんのう)です。安土桃山時代に活躍した池坊専好(せんこう)は、豊臣秀吉に引き立てられて注目を浴びました。さらに江戸時代には、天皇が催す花会の指導者として招かれる機会も多くなり、その後、弟子も増え華道は全国へ広がっていったのです。
代々の六角堂住職は、寺の池のほとりにある建物に住んでいたことから「池坊」と呼ばれるようになりました
現在、華道の流派は全国に数百あると言われていますが、多くの流派に共通した理念があります。例えば、いけばなの花形の一種である生花(しょうか)は、骨組みとなる「真(しん)・副(そえ)・体(たい)」と呼ばれる3つの枝で構成されています。呼び方は流派によって異なりますが、この3つの枝を中心に美しい形を表現するという点は同じです。
いけばなは、花や枝を切り落としながら調和させる「引きの美学」が特徴。対して、西洋のフラワーアレンジメントは、花で空間を埋めながら作品を作ります
550年の歴史の中で、いけばなにも様々な形が生まれました。時代ごとの住宅事情が背景にあるようです。
仏様に供えた花に由来する、最も古典的ないけ方で、江戸時代に大成した大型で豪華な形。「花をたてまつる」という意味があり、仏教の聖地・須弥山(しゅみせん)を表しています。
《特徴》大自然の景観美を表現したもので、9つの役枝を基に構成されます。仏様を迎える役割の枝があるなど、仏教の影響が色濃くみられます。
立花に比べると小ぶりな生花は、いけるのも床の間に飾るのも簡易なことから、数寄屋造が流行した江戸時代以降、庶民に広く好まれました。千利休など、茶人が茶室にいけた簡素な「いけはな」が元になっています。
《特徴》野や山、崖などの、自然に花が咲いている環境を想像しながらいける心掛けが大切です。
伝統的な形式にとらわれない自由な発想でいけられます。昭和に入り、洋風住宅が増加したことや、流通の進化などによって様々な西洋の花が出回るようになり普及しました。
《特徴》素材にひらめきを得て生まれる創作いけばな。花そのものの色や質感にこだわることもあれば、自分の気持ちを表現する手段としていける場合もあります。
池坊専慶の弟子たちは、京都をはじめ全国で活躍していけばなを広めました。池坊以外にも、現在京都に本部を置く流派には、お寺や皇室と深いつながりを持つところが多くあります。
池坊専慶を中興の祖とする日本最古の流派。六角堂の仏様に花を供えていたことが始まりですが、やがて天皇が御所で催す花会の指導も行いました。 | |
1835(天保6)年に藤木月亭光信が創流。流祖は、知恩院の門跡である法親王(ほっしんのう)の華道師範を務めました。 | |
仁和寺に伝わる流派で、寺を創建した宇多天皇を流祖とします。寺院華道として花を通して人格の形成と、感性の涵養(かんよう=水が自然にしみこむように、少しずつ養い育てること)に力を注いでいます。 | |
元禄年間(1688~1704年)に、立花の名手として京都で活躍した桑原冨春軒仙溪(くわはらふしゅんけんせんけい)が創始しました。 | |
嵯峨天皇の離宮・嵯峨院が前身の大覚寺に伝わるいけばなが元になっています。大覚寺には、花をいけることに従事する嵯峨御流華道総司所が存在します。 |
髙島屋京都店
- ●11/14(水)~19(月)
- ●祇園四条駅下車 西へ徒歩約5分
池坊会館・六角堂ほか
- ●11/16(金)~19(月)
- ●三条駅下車 南西へ徒歩約20分/地下鉄烏丸御池駅下車
南東へ徒歩約5分
時間・料金などについてはお問い合わせください
- ●075-231-4922(池坊華道会)
※用語・写真は池坊のものです
- 第百九十三回 秋の京菓子
- 第百九十二回 京都の植物
- 第百九十一回 京都の風習
- 第百九十回 幻の巨椋池(おぐらいけ)
- 第百八十九回 京都と魚
- 第百八十八回 京都とお花見
- 第百八十七回 京の歌枕(うたまくら)の地
- 第百八十六回 京都の地ソース
- 第百八十五回 『源氏物語』ゆかりの地
- 第百八十四回 京の煤払(すすはら)い
- 第百八十三回 京都の坪庭(つぼにわ)
- 第百八十二回 どこまで分かる?京ことば
- 第百八十一回 京都の中華料理
- 第百八十回 琵琶湖疏水と京都
- 第百七十九回 厄除けの祭礼とお菓子
- 第百七十八回 京都と徳川家
- 第百七十七回 京の有職文様(ゆうそくもんよう)
- 第百七十六回 大念仏狂言(だいねんぶつきょうげん)
- 第百七十五回 京表具(きょうひょうぐ)
- 第百七十四回 京の難読地名
- 第百七十三回 京の縁日
- 第百七十二回 京の冬至(とうじ)と柚子(ゆず)
- 第百七十一回 京都の通称寺
- 第百七十回 京都とキリスト教
- 第百六十九回 京都の札所(ふだしょ)巡り
- 第百六十八回 お精霊(しょらい)さんのお供え
- 第百六十七回 京の城下町 伏見
- 第百六十六回 京の竹
- 第百六十五回 子供の行事・儀式
- 第百六十四回 文豪と京の味
- 第百六十三回 普茶(ふちゃ)料理
- 第百六十二回 京都のフォークソング
- 第百六十一回 京と虎、寅
- 第百六十回 御火焚祭
- 第百五十九回 鴨川の橋
- 第百五十八回 陰陽師(おんみょうじ)
- 第百五十七回 京都とスポーツ
- 第百五十六回 貴族の別荘地・伏見
- 第百五十五回 京都の喫茶店
- 第百五十四回 京の刃物
- 第百五十三回 京都の南蛮菓子
- 第百五十二回 京の社家(しゃけ)
- 第百五十一回 京都にゆかりのある言葉
- 第百五十回 京のお雑煮
- 第百四十九回 京の牛肉文化
- 第百四十八回 京の雲龍図(うんりゅうず)
- 第百四十七回 明治の京都画壇
- 第百四十六回 京の名所図会(めいしょずえ)
- 第百四十五回 ヴォーリズ建築
- 第百四十四回 島原の太夫(たゆう)
- 第百四十三回 京の人形
- 第百四十二回 京の社寺と動物
- 第百四十一回 鳥居(とりい)
- 第百四十回 冬の食べ物
- 第百三十九回 能・狂言と京都
- 第百三十八回 京都と様々な物の供養
- 第百三十六回 京都とビール
- 第百三十五回 京都と鬼門(きもん)
- 第百三十四回 精進料理
- 第百三十三回 明治時代の京の町
- 第百三十二回 皇室ゆかりの建物
- 第百三十一回 京の調味料
- 第百三十回 高瀬川
- 第百二十九回 蹴鞠
- 第百二十八回 歌舞伎
- 第百二十七回 京都に残るお屋敷
- 第百二十六回 京の仏像 [スペシャル版]
- 第百二十五回 京の学校
- 第百二十四回 京の六地蔵めぐり
- 第百二十三回 京の七不思議<通り編>
- 第百二十二回 京都とフランス
- 第百二十一回 京の石仏
- 第百二十回 京の襖絵(ふすまえ)
- 第百十九回 生き物由来の地名
- 第百十八回 京都の路面電車
- 第百十七回 神様への願いを込めて奉納
- 第百十六回 京の歴食
- 第百十五回 曲水の宴
- 第百十四回 大政奉還(たいせいほうかん)
- 第百十三回 パンと京都
- 第百十二回 京に伝わる恋物語
- 第百十一回 鵜飼(うかい)
- 第百十回 扇子(せんす)
- 第百九回 京の社寺と山
- 第百八回 春の京菓子
- 第百七回 幻の京都
- 第百六回 京の家紋
- 第百五回 京の門前菓子
- 第百四回 京の通り名
- 第百三回 御土居(おどい)
- 第百二回 文学に描かれた京都
- 第百一回 重陽(ちょうよう)の節句
- 第百回 夏の京野菜
- 第九十九回 若冲と近世日本画
- 第九十八回 京の鍾馗さん
- 第九十七回 言いまわし・ことわざ
- 第九十六回 京の仏師
- 第九十五回 鴨川
- 第九十四回 京の梅
- 第九十三回 ご朱印
- 第九十二回 京の冬の食習慣
- 第九十一回 京の庭園
- 第九十回 琳派(りんぱ)
- 第八十九回 京の麩(ふ)
- 第八十八回 妖怪紀行
- 第八十七回 夏の京菓子
- 第八十六回 小野小町(おののこまち)と一族
- 第八十五回 新選組
- 第八十四回 京のお弁当
- 第八十三回 京都の湯
- 第八十二回 京の禅寺
- 第八十一回 京の落語
- 第八十回 義士ゆかりの地・山科
- 第七十九回 京の紅葉
- 第七十八回 京の漫画
- 第七十七回 京の井戸
- 第七十六回 京のお地蔵さん
- 第七十五回 京の名僧
- 第七十四回 京の別邸
- 第七十三回 糺(ただす)の森
- 第七十二回 京舞
- 第七十一回 香道
- 第七十回 天神さん
- 第六十九回 平安京
- 第六十八回 冬の京野菜
- 第六十七回 茶の湯(茶道)
- 第六十六回 京の女流文学
- 第六十五回 京の銭湯
- 第六十四回 京の離宮
- 第六十三回 京の町名
- 第六十二回 能・狂言
- 第六十一回 京の伝説
- 第六十回 京狩野派
- 第五十九回 京寿司
- 第五十八回 京のしきたり
- 第五十七回 百人一首
- 第五十六回 京の年末
- 第五十五回 いけばな
- 第五十四回 京の城
- 第五十三回 観月行事
- 第五十二回 京の塔
- 第五十一回 錦市場
- 第五十回 京の暖簾
- 第四十九回 大原女
- 第四十八回 京友禅
- 第四十七回 京のひな祭り
- 第四十六回 京料理
- 第四十五回 京の町家〈内観編〉
- 第四十四回 京の町家〈外観編〉
- 第四十三回 京都と映画
- 第四十二回 京の門
- 第四十一回 おばんざい
- 第四十回 京の焼きもの
- 第三十九回 京の七不思議
- 第三十八回 京の作庭家
- 第三十七回 室町文化
- 第三十六回 京都御所
- 第三十五回 京の通り
- 第三十四回 節分祭
- 第三十三回 京の七福神
- 第三十二回 京の狛犬
- 第三十一回 伏見の酒
- 第三十回 京ことば
- 第二十九回 京の文明開化
- 第二十八回 京の魔界
- 第二十七回 京の納涼床
- 第二十六回 夏越祓
- 第二十五回 葵祭
- 第二十四回 京の絵師
- 第二十三回 涅槃会
- 第二十二回 京のお漬物
- 第二十一回 京の幕末
- 第二十回 京の梵鐘
- 第十九回 京のお豆腐
- 第十八回 時代祭
- 第十七回 京の近代建築
- 第十六回 京のお盆行事
- 第十五回 京野菜
- 第十四回 京都の路地
- 第十三回 宇治茶
- 第十一回 京菓子の歴史
- 第十回 枯山水庭園の眺め方
- 第九回 京阪沿線 初詣ガイド
- 第八回 顔見世を楽しむ
- 第七回 特別拝観の楽しみ方
- 第六回 京都の着物
- 第五回 仏像の見方
- 第四回 送り火の神秘
- 第三回 祇園祭の楽しみ方
- 第二回 京の名水めぐり
- 第一回 池泉庭園の眺め方