京都ツウのススメ
第百八十六回 京都の地ソース
京都の食卓を彩る地ソース
ビールや日本酒に地ビールや地酒があるように、ソースにも地ソースがあるのを知っていますか?
実は、京都には個性的で歴史のある地ソースがたくさん。
その理由と主な商品を「らくたび」の森明子さんがご紹介します。
基礎知識
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其の一、
- ウスターソースが日本に伝わったのは明治時代の初めのことです
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其の二、
- 昭和初期には、京都をはじめ日本各地にソースメーカーが登場しました
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其の三、
- 食文化が豊かな京都にはいろいろな地ソースがあります
洋食文化とともに広がったウスターソース
ソースとは本来、料理の調理や仕上げに用いられる調味料全般を指しますが、日本でソースと言えば多くの人がウスターソースを想像するのではないでしょうか。ウスターソースの誕生については諸説ありますが、イギリスのウスターシャ地方で生まれたと言われています。日本に伝わったのは明治時代に入ってすぐ。その後、横浜や神戸など外国人居留地を起点にした洋食文化とともに、京都をはじめ全国に広がっていきました。
食文化の豊かな京都の地ソース
ソースが一般家庭に定着したきっかけのひとつは、大正時代の終わりに流行した一銭洋食です。水に溶いた小麦粉にネギなどをのせて焼き、ウスターソースを塗って食べる一銭洋食は京都でも人気がありました。こうして庶民にウスターソースが知られるようになると、日本各地にソースメーカーが登場。食文化の豊富な京都にも様々な地ソースが誕生しました。今回は京都で古くから愛されている地ソースをご紹介します。
幕末の開国とともに日本に伝えられた洋食は、
明治時代の終わり頃までに京都にも登場。
次々にお店が誕生しました。
京都で最も古いとされる洋食店「東洋亭」(北区)が開業したのは1897(明治30)年。その後、「グリル富久屋」「欧風料理開陽亭」(ともに東山区)などが次々にオープンしました。とはいえ、当時の洋食は高級品。庶民が日常的に食べるというものではありませんでした。一般家庭にソースの味が広がったのは大正時代の終わり頃。一銭洋食の流行がきっかけでした。この流行の前後に、京都ではソースメーカーが創業しています。戦後には一銭洋食の発展系とも言えるお好み焼きが全国で食されるようになり、ソースの消費量は一気に拡大しました。
京都・祇園にある「壹銭洋食本店」では、創業当時から変わらず、京都のオジカソースの特注品を使っています。中には辛いソース、外には甘いソースの2種類が使われています
京都市内で製造されている地ソースをご紹介します。
- オジカソース(オジカソース工業)[山科区]
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オジカソースは京都初のソースメーカー。イギリスでソース作りを学んだ創業者が初めて作ったソースを再現したのが『復刻版オジカソース』です。イギリスのウスターソースに欠かせないアンチョビに加え赤ワインが入っており、料理に使うとまろやかな味を生み出します。ビフテキに使うと香りが際立ち、食欲をそそります。
- ツバメソース(ツバメ食品)[南区]
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製造だけでなく、充填やラベル貼りなど、すべて創業時のまま手作業で行っています。人気の『ビフテキソース』は甘口のウスターソース。粉末を炊き上げることが多い香辛料をツバメ食品では原形のまま使用。スパイスの味や香りをしっかり感じられます。スライストマトにかけたり、カレーの風味付けに。
ウスターソースに『ビフテキソース』と命名したのは、当時高級品として人気だったビフテキにあやかって高級感を出すためだったそうです
- アジロソース(日の出食品)[中京区]
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『味露(あじろ)』とは、創業者が「京都の人の味覚に合ったしょう油を」と開発したさしみじょう油に付けた名前。その後ソース作りも行うようになり、ウスターソースにもその名を付けました。味の決め手は配合にこだわった約10種類のスパイスと国産リンゴ。スパイシーな中にリンゴの甘みが感じられます。
- ヒロタソース[北区]
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伝統的な製法を追求し、独自に確立した「熟成煮上げ製法」から生まれる濃厚なコクと深い味わいがヒロタソースの特徴。幅広いラインアップの中でも一番人気の『うすたーソースはんなりラベル』は野菜やスパイスなどの旨み成分をたっぷり使ってじっくり熟成。肉料理から海鮮料理まで、どんな料理にも合う万能品です。
京都市北区のヒロタソースの店舗前には京都初となるソースの自動販売機が設置されています
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- 第二十五回 葵祭
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- 第二十三回 涅槃会
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- 第二十回 京の梵鐘
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- 第十六回 京のお盆行事
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- 第十四回 京都の路地
- 第十三回 宇治茶
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- 第三回 祇園祭の楽しみ方
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- 第一回 池泉庭園の眺め方