京都ツウのススメ

第六十七回 茶の湯(茶道)

[もてなしの心を込める茶の湯]茶の湯は、季節の移ろいを愛で、お茶を飲むことで心を養う、日本独特の豊かな文化です。京都で育まれた、奥深い茶の湯の世界について、らくたびの佐藤理菜子さんが解説します。

茶の湯の基礎知識

其の一、
室町時代、村田珠光が茶席に禅の精神を取り入れた茶の湯を始めました
其の二、
千利休が、簡素な空間で心からもてなす「わび茶」を大成させました
其の三、
茶の湯は、日本文化の総合芸術と言われています

茶の湯の成立

奈良時代から平安時代に、遣唐使や留学僧が中国から茶を持ち帰ったのが、日本の茶文化の始まりとされています。当初は貴重な薬として扱われていましたが、鎌倉時代に、建仁寺を創建した栄西が、粉末にした茶に湯を注いで飲む抹茶法を伝えました。室町時代初期には、ぜいたくな茶道具を用いてお茶を楽しむ茶寄合が流行しますが、村田珠光は、茶席に禅の精神を取り入れ、簡素で落ち着いた茶の湯様式「草庵の茶」を生み出します。これを武野紹鷗が受け継ぎ、さらに「わび茶」として大成させたのが、後に茶聖と呼ばれる千利休です。利休は、限りなく無駄を省いた茶室で、心を込めて相手をもてなす茶の湯の様式を確立させ、多くの教えを残しました。

日本文化の総合芸術

表千家・裏千家・武者小路千家の「三千家」をはじめ、多くの茶の湯の家元が集まる京都。茶の湯は、建築や庭園、美術工芸、華道、京菓子などとつながりを持ちながら一流の文化が集まるこの地で発展を遂げました。京都の風土の中で育まれ洗練された茶の湯は、日本文化の総合芸術とも言われます。

伝統ある茶の湯の世界

茶の湯のキーパーソン

慎み深く心の美しさを求める「わび」「さび」という、日本ならではの美意識を持つ茶の湯は、室町時代から安土桃山時代にかけて活躍した茶人たちにより生み出されました。

村田珠光 むらたしゅこう 1423〜1502(応永30〜文亀2)年

大徳寺の一休宗純から禅を学び、茶と禅の精神を融合させた茶禅一味という境地に到達。心の修養を大事にした簡素な「草庵の茶」を始めました。

武野紹鷗 たけのじょうおう 1502〜1555(文亀2〜弘治元)年

村田珠光の茶風を引き継ぎ、簡素化をさらに進めます。質素な茶室で心からお客さまをもてなす「草庵の茶」を、千利休をはじめ多くの門弟に広めました。

千利休 せんのりきゅう 1522〜1591(大永2〜天正19)年

大坂・堺に生まれ、幼い頃から茶を学び、精神性を重視するわび茶を大成させます。無駄を省いた新しい茶の湯の様式を創り出す一方、織田信長や豊臣秀吉に仕え、天下一の茶匠となりました。

ココがツウ

千利休の「わび茶」を継承した孫の千宗旦は、3人の息子とともに表千家・裏千家・武者小路千家を築きました。これが、現代まで続く京都の「三千家」です

千利休

堺市博物館蔵

茶室を見てみよう

茶室は、母屋に付属して建てられたものと独立したものがあり、四畳半を基本としています。亭主はもてなしの心を込めて茶道具を取りそろえ、季節ごとのテーマやお客さまに合わせて茶室を演出します。

ココがツウ

足利義政が銀閣寺に作った四畳半の書斎が、日本最初の茶室と言われる同仁斎(どうじんさい)です

掛物 かけもの
茶花 ちゃばな
香合 こうごう
釜・炉 かま・ろ
茶器 ちゃき
茶碗 ちゃわん
水指 みずさし
点前座 てまえざ
床の間に飾る掛け軸のこと。茶会のテーマに合ったものが選ばれ、利休が「第一の道具」と言うように、茶会の中心となるものです。禅の書などから1~2句を抜き出した「一行物」が好まれます。
利休の教え「花は野にあるように」の通り、季節の山野草が自然のままの美しい姿で生けられます。
香を入れるための小さなふた付きの器。茶席の空気を浄化し、心身を清めるほか、炭の臭いを消して香りを楽しむために茶席では必ず香がたかれます。
茶会を催すことを「釜をかける」というほど釜は大事な道具。11月初旬から4月までは畳の一角に設けられた“炉”に、それ以外の時期は移動式の炉(=風炉)に釜をかけます。
抹茶を入れる器。濃茶を入れる器を茶入と言います。薄茶を入れる薄茶器は、丸みを帯びた棗(なつめ)などの形があります。
お茶をいただく茶碗は、最も代表的な茶道具です。格式の高い濃茶には、厚手で無地の楽焼などを使用します。略式の薄茶(おうす)では、美しい絵柄の京焼などを用います。 ココがツウ 薄茶では、ひとつの碗にひとり分ずつのお茶が点てられます。濃茶は、複数の人数でひとつの碗のお茶を飲みます
釜の湯加減を調整したり、茶碗などをすすぐための水を入れる壺。様々な意匠のものがあり、茶席のアクセントになります。
亭主がお茶を点てるために座る場所。様々な茶道具が並べられます。
制作:2013年10月
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