京都ツウのススメ

第十六回 京のお盆行事

[先祖の精霊を迎える六道まいり]8月に入ると、京都市東山区の六道皇寺では精霊を迎える六道まいりが行われます。精霊送りとともに、大切に受け継がれてきた「迎え」の行事を、らくたびの若村亮さんがご紹介。

京のお盆行事の基礎知識

其の一、
京都では、先祖の精霊を「お精霊(しょらい)さん」と呼びます
其の二、
精霊を迎える伝統行事のひとつが、「六道まいり」です
其の三、
精霊を再び冥土へ送りと届けるため、五山送り火が行われます

京のお盆

お盆は、正しくは「盂蘭盆会(うらぼんえ)」と言い、その語源はサンスクリット語の「ullambava(ウランバナ)」(逆さづりの意:地獄で受ける苦しみのひとつ)に由来すると言われています。8月13日に家に迎えたお精霊さんを、16日の夜、五山送り火とともに再び冥土へ見送ります。昔からの風習が残る京都では、六道まいりや万灯会(まんとうえ)などのお盆行事が行われ、夜には献灯や提灯(ちょうちん)の明かりがともり、幻想的な雰囲気が漂います。

六道の辻と六道まいり

六道とは、死者が生前の行いにより導かれる6つの世界(地獄・餓鬼・畜生・修羅・人間・天上)を指し、その分岐点となる冥土の入り口を「六道の辻」と呼びます。ちょうど六道珍皇寺の付近は、平安時代より葬送地・鳥辺野(とりべの)への通路にあたり、この世とあの世の境界、つまり「六道の辻」とされ、この寺の鐘をついてお精霊さんをお迎えする「六道まいり」の信仰が広まりました。付近の寺では地獄絵の展示や説法も行われ、お参りに訪れる人の波が早朝から夜遅くまで続きます。

鐘の音に先祖を迎える気持ちを込めて・・・ 六道まいり 古くから冥土の入り口とされた「六道の辻」。その傍らにある六道珍皇寺などで行われるお盆行事。参詣者は参道で高野槇(こうやまき)を買い求め、先祖の戒名(かいみょう)を書いてもらった水塔婆(みずとうば)を水回向(みずえこう)にて供養し、迎え鐘をついてお精霊さんをお迎えします。

高野槇 参道で買えます

高野槇には、迎え鐘によりこの世に戻って来るお精霊さんが乗り移ると言われています。

ココがツウ

アンテナのような放射状の形をした高野槇は、霊魂が宿る依代(よりしろ)として先祖の霊を家に運びます

ほおずき
お盆の飾りとして、高野槇とともに売られています。袋状の果実がだいだい色に熟すことから、古くより提灯に見立てられ、お盆には枝付きで飾る風習が残っています。

水塔婆 先祖を思い浮かべながら水回向を行います

先祖の戒名を水塔婆に書いてもらい、それを持って迎え鐘をつきます。線香の煙で清めた後、境内奥の「賽(さい)の河原」に奉納します。

ココがツウ

高野槇の葉で水をかけて行う水回向は、御霊(みたま)を浄水で清め、浄土再生を願う儀式とも言われています

迎え鐘 心を込めてつきましょう

鐘の音に誘われて、お精霊さんが現世に戻ってくると言われています。迎え鐘は四方を壁に囲まれた鐘楼の中にあり、外からは見えません。手前に綱を引いてつくのが特徴です。

ココがツウ

迎え鐘の音は十万億土(この世と極楽の間にある無数の世界)の果てまで響くと言われています

六道珍皇寺 小野篁の「冥界伝説」が残る

門前には「六道の辻」の石碑が建っています

平安時代に創建され、その後建仁寺の塔頭(たっちゅう)となりました。地獄の閻魔(えんま)大王に仕えたという小野篁の伝説で知られ、境内にはあの世へ行くのに使ったと言う「冥土通いの井戸」が残されています。六道まいりの期間は閻魔堂の扉が開かれ、「閻魔大王坐像」とともに「小野篁立像」が見られます。

六道まいり

  • 8/7(金)~10(月)
    6時~23時
    ※10日は22時まで
  • 075-561-4129
  • 清水五条駅下車
    北東へ徒歩約15分
西福寺

嵯峨天皇の皇后・檀林(だんりん)皇后の亡骸(なきがら)が次第に崩れ、土にかえる様子を描いた「檀林皇后九相図絵」や地獄絵図「六道十界図絵」が公開されます。

  • 8/8(土)~10(月) 7時~21時
  • 075-551-0675
  • 清水五条駅下車 北東へ徒歩約15分

檀林皇后九相図絵

明かりが揺らめく堂内

六波羅蜜寺萬会 送り火の原型とも

夜になると数多くの灯明を人形(ひとがた)文字「大」の形に点灯し、お精霊さんをお迎えします。

  • 8/8(土)~10(月) 20時~21時頃
    16(日)18時~19時頃
  • 075-561-6980 www.rokuhara.or.jp
  • 清水五条駅下車 東へ徒歩約10分
大文字五山送り火 晴霊を送る

お盆に迎えたお精霊さんを、再び天上へ送り届けるため、夜空に向かって火をたき、あの世へ通じる道を明るく照らします。

  • 8/16(日) 20時
制作:2009年7月
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