- 其の一、
- 平安時代、公家が牛車(ぎっしゃ)に独自の文様を付けたのが始まりです
- 其の二、
- 家紋は名字に代わるものとして、様々な場所で用いられました
- 其の三、
- 代々受け継がれ、現在、約24,000種類あると言われています
家紋の起源
平安時代、公家たちを乗せた牛車で内裏(だいり)は混雑していました。それを見分けるために、独自の文様を付けたのが家紋の始まりとされています。建保・承久年間(1213~21年)の書物「大要抄(だいようしょう)」にもその時の様子が記され、名字に代わるものとして図形で一族を表す家紋が普及していたことが分かります。また、当時は“家の紋”や“紋所”、“ご紋”などと呼ばれていたそうです。
家紋の役割
平安時代、公家の衣服や調度品に付けられていた家紋は、花鳥風月など写実的なものが描かれていました。鎌倉時代から室町時代になると、武家が戦の際に敵味方を見分けられるように簡単で明快な図案のものが多くなり、次第に家紋の種類も増えていったそうです。戦国時代に入ると戦意などを表すという意味も加わり、個性的な図案になりました。江戸時代には庶民にも広がり、先祖から譲り受けて子孫につなげることや家を守る意味を込めて、表札や墓石にも用いられるようになりました。その後バリエーションも増え、多種多様な家紋が現在に伝わっています。
花や草木など、植物をモチーフにした紋は最も種類が多く、自然の美しさが上品に描かれているため公家に好まれました。
鳥や蝶、鷹の羽などを用いた動物紋は、武士が武勇を誇示する意味で使いました。
井戸の枠(=井桁や井筒)や庵、社寺の建造物などを表しています。
武具やくし・銭などの生活用品をモチーフにした紋です。
直線や曲線を幾何学的に図案にした文様紋は、巴や鱗(うろこ)、亀甲などがあります。
名字やゆかりのある字などから用いたものが多く、幸福や繁栄の願いが込められています。
太陽や月、波などの自然がモチーフ。昔は自然を利用した吉凶占いが行われており、信仰の対象であったこれらを紋として使用しました。
着物に家紋を描く職人を「紋上絵師」と呼びます。伝統芸能や茶道、華道などの装束、衣装にも用いられるため、京都には技術の高い紋上絵師が多く集まりました。
菊が群生した沢の水を飲むと長寿が得られるという中国の伝説や、菊の花弁が太陽の光に似ていることから、日本では皇室が菊紋を用いるようになりました。
鎌倉時代初期に後鳥羽上皇が菊を好み愛用していたことから、菊紋が皇室の紋様となったと言われています
平安時代の右大臣・菅原道真が梅を愛でたことから、道真ゆかりの北野天満宮では梅紋を用いました。また、天神信仰のある多くの家が梅紋をモチーフにした家紋を使っています。
木瓜紋は子孫繁栄の意味を持つ鳥の巣をかたどっていると言われています。社寺で多く用いられる御簾(みす)の紋様であることから、縁起が良いとされています。
祇園地域では木瓜紋がキュウリの切り口に似ていることから、祇園祭の間は口にしない習わしです
葵は賀茂神社の神草で、祭器などに付けられ神紋として扱われました。毎年5月に行われる葵祭では、葵紋が付いた冠・牛車・桟敷(さじき)の御簾などが使われます。のちに、賀茂神社の氏子や信仰する家の家紋になりました。
上賀茂神社と下鴨神社の紋は二葉葵で、別名・賀茂葵とも呼ばれています。葵は「あふひ」と読み、「ひ」は神霊のことから「神と逢う」の意味で神紋となったとされています
※由来や分類には諸説あります
※掲載している紋章は代表的な形で、本文中の社寺などのものとは異なる場合があります
- 第百九十三回 秋の京菓子
- 第百九十二回 京都の植物
- 第百九十一回 京都の風習
- 第百九十回 幻の巨椋池(おぐらいけ)
- 第百八十九回 京都と魚
- 第百八十八回 京都とお花見
- 第百八十七回 京の歌枕(うたまくら)の地
- 第百八十六回 京都の地ソース
- 第百八十五回 『源氏物語』ゆかりの地
- 第百八十四回 京の煤払(すすはら)い
- 第百八十三回 京都の坪庭(つぼにわ)
- 第百八十二回 どこまで分かる?京ことば
- 第百八十一回 京都の中華料理
- 第百八十回 琵琶湖疏水と京都
- 第百七十九回 厄除けの祭礼とお菓子
- 第百七十八回 京都と徳川家
- 第百七十七回 京の有職文様(ゆうそくもんよう)
- 第百七十六回 大念仏狂言(だいねんぶつきょうげん)
- 第百七十五回 京表具(きょうひょうぐ)
- 第百七十四回 京の難読地名
- 第百七十三回 京の縁日
- 第百七十二回 京の冬至(とうじ)と柚子(ゆず)
- 第百七十一回 京都の通称寺
- 第百七十回 京都とキリスト教
- 第百六十九回 京都の札所(ふだしょ)巡り
- 第百六十八回 お精霊(しょらい)さんのお供え
- 第百六十七回 京の城下町 伏見
- 第百六十六回 京の竹
- 第百六十五回 子供の行事・儀式
- 第百六十四回 文豪と京の味
- 第百六十三回 普茶(ふちゃ)料理
- 第百六十二回 京都のフォークソング
- 第百六十一回 京と虎、寅
- 第百六十回 御火焚祭
- 第百五十九回 鴨川の橋
- 第百五十八回 陰陽師(おんみょうじ)
- 第百五十七回 京都とスポーツ
- 第百五十六回 貴族の別荘地・伏見
- 第百五十五回 京都の喫茶店
- 第百五十四回 京の刃物
- 第百五十三回 京都の南蛮菓子
- 第百五十二回 京の社家(しゃけ)
- 第百五十一回 京都にゆかりのある言葉
- 第百五十回 京のお雑煮
- 第百四十九回 京の牛肉文化
- 第百四十八回 京の雲龍図(うんりゅうず)
- 第百四十七回 明治の京都画壇
- 第百四十六回 京の名所図会(めいしょずえ)
- 第百四十五回 ヴォーリズ建築
- 第百四十四回 島原の太夫(たゆう)
- 第百四十三回 京の人形
- 第百四十二回 京の社寺と動物
- 第百四十一回 鳥居(とりい)
- 第百四十回 冬の食べ物
- 第百三十九回 能・狂言と京都
- 第百三十八回 京都と様々な物の供養
- 第百三十六回 京都とビール
- 第百三十五回 京都と鬼門(きもん)
- 第百三十四回 精進料理
- 第百三十三回 明治時代の京の町
- 第百三十二回 皇室ゆかりの建物
- 第百三十一回 京の調味料
- 第百三十回 高瀬川
- 第百二十九回 蹴鞠
- 第百二十八回 歌舞伎
- 第百二十七回 京都に残るお屋敷
- 第百二十六回 京の仏像 [スペシャル版]
- 第百二十五回 京の学校
- 第百二十四回 京の六地蔵めぐり
- 第百二十三回 京の七不思議<通り編>
- 第百二十二回 京都とフランス
- 第百二十一回 京の石仏
- 第百二十回 京の襖絵(ふすまえ)
- 第百十九回 生き物由来の地名
- 第百十八回 京都の路面電車
- 第百十七回 神様への願いを込めて奉納
- 第百十六回 京の歴食
- 第百十五回 曲水の宴
- 第百十四回 大政奉還(たいせいほうかん)
- 第百十三回 パンと京都
- 第百十二回 京に伝わる恋物語
- 第百十一回 鵜飼(うかい)
- 第百十回 扇子(せんす)
- 第百九回 京の社寺と山
- 第百八回 春の京菓子
- 第百七回 幻の京都
- 第百六回 京の家紋
- 第百五回 京の門前菓子
- 第百四回 京の通り名
- 第百三回 御土居(おどい)
- 第百二回 文学に描かれた京都
- 第百一回 重陽(ちょうよう)の節句
- 第百回 夏の京野菜
- 第九十九回 若冲と近世日本画
- 第九十八回 京の鍾馗さん
- 第九十七回 言いまわし・ことわざ
- 第九十六回 京の仏師
- 第九十五回 鴨川
- 第九十四回 京の梅
- 第九十三回 ご朱印
- 第九十二回 京の冬の食習慣
- 第九十一回 京の庭園
- 第九十回 琳派(りんぱ)
- 第八十九回 京の麩(ふ)
- 第八十八回 妖怪紀行
- 第八十七回 夏の京菓子
- 第八十六回 小野小町(おののこまち)と一族
- 第八十五回 新選組
- 第八十四回 京のお弁当
- 第八十三回 京都の湯
- 第八十二回 京の禅寺
- 第八十一回 京の落語
- 第八十回 義士ゆかりの地・山科
- 第七十九回 京の紅葉
- 第七十八回 京の漫画
- 第七十七回 京の井戸
- 第七十六回 京のお地蔵さん
- 第七十五回 京の名僧
- 第七十四回 京の別邸
- 第七十三回 糺(ただす)の森
- 第七十二回 京舞
- 第七十一回 香道
- 第七十回 天神さん
- 第六十九回 平安京
- 第六十八回 冬の京野菜
- 第六十七回 茶の湯(茶道)
- 第六十六回 京の女流文学
- 第六十五回 京の銭湯
- 第六十四回 京の離宮
- 第六十三回 京の町名
- 第六十二回 能・狂言
- 第六十一回 京の伝説
- 第六十回 京狩野派
- 第五十九回 京寿司
- 第五十八回 京のしきたり
- 第五十七回 百人一首
- 第五十六回 京の年末
- 第五十五回 いけばな
- 第五十四回 京の城
- 第五十三回 観月行事
- 第五十二回 京の塔
- 第五十一回 錦市場
- 第五十回 京の暖簾
- 第四十九回 大原女
- 第四十八回 京友禅
- 第四十七回 京のひな祭り
- 第四十六回 京料理
- 第四十五回 京の町家〈内観編〉
- 第四十四回 京の町家〈外観編〉
- 第四十三回 京都と映画
- 第四十二回 京の門
- 第四十一回 おばんざい
- 第四十回 京の焼きもの
- 第三十九回 京の七不思議
- 第三十八回 京の作庭家
- 第三十七回 室町文化
- 第三十六回 京都御所
- 第三十五回 京の通り
- 第三十四回 節分祭
- 第三十三回 京の七福神
- 第三十二回 京の狛犬
- 第三十一回 伏見の酒
- 第三十回 京ことば
- 第二十九回 京の文明開化
- 第二十八回 京の魔界
- 第二十七回 京の納涼床
- 第二十六回 夏越祓
- 第二十五回 葵祭
- 第二十四回 京の絵師
- 第二十三回 涅槃会
- 第二十二回 京のお漬物
- 第二十一回 京の幕末
- 第二十回 京の梵鐘
- 第十九回 京のお豆腐
- 第十八回 時代祭
- 第十七回 京の近代建築
- 第十六回 京のお盆行事
- 第十五回 京野菜
- 第十四回 京都の路地
- 第十三回 宇治茶
- 第十一回 京菓子の歴史
- 第十回 枯山水庭園の眺め方
- 第九回 京阪沿線 初詣ガイド
- 第八回 顔見世を楽しむ
- 第七回 特別拝観の楽しみ方
- 第六回 京都の着物
- 第五回 仏像の見方
- 第四回 送り火の神秘
- 第三回 祇園祭の楽しみ方
- 第二回 京の名水めぐり
- 第一回 池泉庭園の眺め方