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京都ツウのススメ

第百十四回 大政奉還(たいせいほうかん)

幕末の京都が舞台になった大政奉還 今年は二条城で宣言された大政奉還から150年。
長く続いた江戸幕府に京都でピリオドが打たれるという歴史的な出来事をらくたびの若村亮さんが紹介します。

基礎知識

其の一、

江戸時代、京都に置かれた朝廷は幕府の監視下にありました

其の二、

幕府が弱体化した江戸時代末期、朝廷を支持する勢力が生まれました

其の三、

政権を朝廷に返す決断をしたのが、第15代将軍・徳川慶喜です

幕府が朝廷を抑え込んでいた江戸時代

大政奉還は、政権を天皇に返すことを徳川幕府の将軍が朝廷に申し入れ、認められた歴史的な出来事です。鎌倉時代以降、武家政権の最高位の征夷大将軍は、朝廷から任命されるのが慣例でした。江戸幕府も朝廷の存在を重んじてこれを踏襲しますが、同時に幕府の権威を高めるため京都に幕府の機関として京都所司代を置くなどして天皇や公家の生活を監視し、その行動を厳しく制限。朝廷を統制下に置いた体制は幕末まで続きました。

倒幕運動が公然化する中で将軍に就任

しかし江戸時代末期、外国から開国を迫られると状況は一変。幕府だけでは対応しきれず、朝廷にも意見を求めるようになり、これが朝廷の権威を高める一因となりました。幕府の統制力にもほころびが目立ち始め、武力で幕府を倒し新しい政権を作ろうという考えも生まれるように。そんな時代に将軍に就いたのが第15代将軍・徳川慶喜でした。自身に刃が向けられている中で下した大きな決断の背景を振り返ってみましょう。

260年以上続いた政権が返上された背景を解説します。

様々な思惑が交錯した幕末の京都

幕末の代表的な「思想」

尊王攘夷(そんのうじょうい)
天皇を尊ぶ尊王論と外国勢力を追い払おうとする攘夷論が合体したもの。
倒幕(とうばく)
幕府を倒し、天皇(朝廷)中心の政治を目指す考え。
佐幕(さばく)
倒幕に反対し、これまで通り幕府を支持する考え。
公武合体(こうぶがったい)
朝廷と幕府で協力して政治を行うこと。

約200年ぶりに将軍が上洛

1863(文久3)年、第14代将軍・徳川家茂が上洛。「外国勢力を日本から追い出す攘夷を約束してほしい」という朝廷の求めに応じたもので、朝廷の権威の高まりが垣間見えます。

思想の対立から戦闘も

1864(元治元)年の蛤御門の変では、京都の中心部で長州藩と薩摩藩・会津藩が戦いました。この戦いによる大火事で市中は広く焼失。幕末の不安定な政情は民衆の生活にも影響を与えました。

When(いつ)?1867(慶応3)年10月

10月13日、徳川慶喜は政権返上を表明し、翌14日に朝廷にその申し入れをします。実は同じ14日に、武力倒幕を目指す薩摩藩と長州藩が、公家の岩倉具視らと連携して朝廷から内々に倒幕の命令を引き出していたとされ、幕府の危機は目前に迫っていました。

Where(どこで)?二条城

二条城で、最も格式の高い部屋・二の丸御殿大広間二条城で、最も格式の高い部屋・二の丸御殿大広間

二条城の二の丸御殿大広間に、在京40藩の大名家の重臣が集められました。くしくも江戸幕府初代将軍の徳川家康が築城を命じた二条城で、その終わりが告げられたのです。

ここがツウ

二条城は、天守閣が落雷で失われ、本丸御殿も大火で焼失。そんな中、唯一残る江戸時代初期の遺構が二の丸御殿。狩野派による障壁画も見られます

Why(なぜ)?倒幕回避

大政奉還のきっかけは、1867(慶応3)年10月3日に、 土佐藩旧藩主の山内容堂が慶喜に提出した大政奉還の建白書です。政権返上なら、薩摩藩と長州藩がもくろむ倒幕は成立しないだろうという慶喜の思惑もありました。

What(なにが)?政権返上が決定

京都御所 小御所京都御所 小御所

10月15日に天皇の許可を得て、政権返上が認められ、これにより倒幕は事実上不可能になりました。しかし徳川家そのものが無くなったわけではなく、徳川家を含めた新体制で政権を樹立する構想もありました。

約2カ月後に政変、新政権が樹立
12月9日に、倒幕派の薩摩藩・長州藩が王政復古の大号令を発し、天皇中心の新政府樹立を宣言。その夜、京都御所内での会議で、徳川慶喜の官位剥奪(はくだつ)と領地没収が決定しました。

ここがツウ

12月9日夜の会議は、開かれた場所の名前から「小御所会議」と言われます。
天皇も出席し、徳川家の処分について討議されました

Who(だれが)?第15代将軍・徳川慶喜

徳川慶喜徳川慶喜

第14代将軍・家茂の将軍後見職として上洛、攘夷実行を迫る朝廷と幕府との調整役に。朝廷を警護する役職に就任以降は京都に住み、1866(慶応2)年、家茂が21歳で没すると将軍職に就きました。

ここがツウ

第4代将軍以降、朝廷による将軍任命は江戸城で行われていましたが、徳川慶喜は京都に住んでいたため、二条城でその儀式が行われました

大政奉還のその後は?

小御所会議の結果に反発した幕臣らを抑えるため、徳川慶喜は大坂城に退きましたが、薩摩藩が江戸で騒乱を起こすなどして挑発。これを機に1868(明治元)年1月、旧幕府軍と新政府軍の間で鳥羽・伏見の戦いが勃発、戊辰戦争が始まります。 翌年5月に旧幕府軍が降伏して戦争は終結、新政府主導の時代が始まりました。

写真提供:元離宮二条城事務所(二条城)、宮内庁京都事務所(京都御所)、茨城県立歴史館(徳川慶喜)

制作:2017年10月
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