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京都ツウのススメ

第百五十五回 京都の喫茶店

京にみる喫茶店の歴史京都には、喫茶店やこだわりのカフェがたくさんあります。これらはどのように登場したのでしょうか。らくたびの谷口真由美さんが京都における喫茶文化の広がりを解説します。

基礎知識

其の一、

喫茶とは元来、薬のような効用を求めてお茶を飲むことでした

其の二、

室町時代に登場した「一服一銭(いっぷくいっせん)」は喫茶店の原形だと言われています

其の三、

京都の喫茶店数は全国的にみても多く、現在では2,000軒を超えています

中国からもたらされたお茶と喫茶文化

日本に喫茶の文化を本格的にもたらしたのは、鎌倉時代の僧で、建仁寺を開いた栄西(えいさい)です。中国から茶種を持ち帰った栄西は『喫茶養生記』を著し、薬のような効用を得るための喫茶文化を広めました。喫茶が上流階級から庶民に広がり始めたのは室町時代。社寺の門前などに登場した「一服一銭」という茶店が喫茶店の原形だと言われ、東寺門前にもあったことが分かっています。

コーヒーや紅茶も楽しまれるように

今、喫茶と言えば、喫茶店やカフェでコーヒーや紅茶を楽しむことをイメージします。コーヒーは江戸時代、紅茶は明治時代に日本に入ってきました。当初は高級品でしたが、明治 30年代には庶民にも知られるようになったようです。京都では、大正時代の「カフェー」人気を経て、昭和初期に数々の喫茶店が営業を開始。その中には、今も変わらず人々に愛されている店も多く残っています。今回は、京都でどのように喫茶が広がっていったのかについて、時代ごとに追いかけてみましょう。

京都における喫茶文化の広がり

せせらぎ沿いに歩く 上賀茂の社家町

嗜好品としてお茶やコーヒーを楽しむ喫茶の文化は、
京都でどのように広がってきたのでしょうか。

室町時代 喫茶店の原形「一服一銭」が登場

1403(応永10)年に発行された『東寺百合文書』には、東寺南大門前に茶売り商人が店を出していたことが記されています。門前で商人が茶を淹(い)れて参拝者に売る、このような茶店は当時「一服一銭」と呼ばれていました。

中世の商人や職人の様子を記した『職人尽歌合』にも「一服一銭」が描かれている
※国立国会図書館ウェブサイトより

中世の商人や職人の様子を記した『職人尽歌合』にも「一服一銭」が描かれている

ここがツウ

「一服一銭」で販売されていたのは質の低い茶葉を煮出した煎じ茶でしたが、栄西の伝えた薬効のある飲み物という考え方の影響か、薬草も加えられていたようです

江戸時代 参詣の休憩所としての掛茶屋が各所に開店

江戸時代には社寺の門前や街道沿いに休憩所「掛茶屋(水茶屋)」が登場します。八坂神社の南門前にも2軒の茶屋があり、「二軒茶屋」として知られていました。同じ場所に今も残る料亭「中村楼」と茶店「二軒茶屋」はそのうちの1軒がルーツです。

拾遺都名所図会「祇園二軒茶屋」
国際日本文化研究センター蔵

拾遺都名所図会「祇園二軒茶屋」

ここがツウ

二軒茶屋では、お茶だけでなく祇園豆腐と呼ばれる甘味も提供されました。
木綿豆腐に木の芽味噌をのせて炙ったもので、外国人も食べに訪れるほど当時話題になっていたそうです

明治時代 「ミルクホール」、そして「カフェー」が登場

明治30年代に入ると、洋風の飲み物を提供する「ミルクホール」が市街地に登場し、やがて「カフェー」へと発展します。
「カフェー」とは女給が酒類を提供するサロンのような場所で、現在の喫茶店やカフェとは雰囲気が異なるものでした。

昭和時代 現在も人々に親しまれる喫茶店が続々開業

現在のような喫茶店が街に登場したのは昭和の初期。京都で最も古い喫茶店として知られる「進々堂 京大北門前」など、現在も人々に愛されている喫茶店が営業を開始したのもこの頃です。

創業時の面影を残す進々堂 京大北門前の店内

創業時の面影を残す進々堂 京大北門前の店内

ここがツウ

フランソア喫茶室は開業当時、蓄音器とクラシックのレコードを備えた「名曲喫茶」として有名でした。
家庭で音楽を聴くのが難しい時代に一流の音楽を楽しめる貴重な場所でした

今も残る昭和初期開業の喫茶店

1930(昭和5)年
  • 進々堂 京大北門前(出町柳駅下車)
  • ティーハウス リプトン(三条駅下車)
1932(昭和7)年
  • スマート珈琲店(三条駅下車)
1934(昭和9)年
  • フランソア喫茶室(祇園四条駅下車)
  • 築地(祇園四条駅下車)
1937(昭和12)年
  • 静香(嵐電 北野白梅町駅下車)
1947(昭和22)年
  • イノダコーヒ本店(三条駅下車)

平成から令和へ 喫茶店の主役はコーヒーに

昭和、平成を経て、喫茶店やカフェの飲み物の代表はコーヒーになり、多くの店でこだわりの味が楽しめるようになりました。現在、京都には2,000軒余りの喫茶店やカフェがあり、この数は全国的に見ても多いと言えます。その理由は、古くから喫茶の文化が根付いていたことに加えて、大学や商店が多く、情報交換や交流の場として喫茶店が適していたことなどが考えられます。

制作:2021年6月
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