- 其の一、
- 平安時代、天皇や貴族は景勝地に別邸を造りました
- 其の二、
- 庭園などの日本美が集結され、政治的な場としても発展しました
- 其の三、
- 明治時代から昭和にかけ、南禅寺界隈に多くの別邸が生まれました
京の別邸の役割
平安時代、天皇や貴族は遊興や休息が目的の別邸を造営し、桓武天皇は沼を切り開いて宮中に庭園・神泉苑を造り、宴を催すなどして行事を楽しみました。また、藤原家別邸の白河院が院政の拠点となって、政治的な役割も果たすようになります。室町時代には、足利家によって金閣・銀閣という時代を象徴する別邸も誕生しました。
南禅寺界隈の別荘庭園群
琵琶湖疏水が開通した明治時代から昭和初期にかけては、南禅寺の敷地であった場所に、別邸が相次いで造られました。この界隈に別邸が集まったのは、神仏分離令や社寺上知令によって広大な敷地があった南禅寺の土地の大部分が民間へ払い下げられたことによるものでした。内閣総理大臣も務めた山縣有朋や野村家といった財閥など、政財界の人々がステータスとして競って別邸を建てたのです。東山の景観と琵琶湖疏水の水を利用した庭園の多くを作庭家・小川治兵衛が手掛けています。庭園や数奇屋建築に趣向を凝らし、社交の舞台となったこの別邸群を『南禅寺界隈別荘庭園群』と呼び、現在は15の邸宅が残っています。
1885(明治18)年に着工した琵琶湖疏水には、当初、水車を作って機械を動かし南禅寺界隈を工業地化する目的もありました。しかし、水力発電へと計画が変更されたことにより工業地化はされず、疏水分線路の水は無料で使えることに。これが南禅寺周辺の別荘地開発の誘い水になったと言われています。
植治(うえじ)の屋号で知られる作庭家。特に近代で活躍した7代目は、自然の景観と躍動的な疏水の流れを組み込み、植治流と言われる独創的な庭を作り上げ、近代日本庭園の先駆者として活躍しました。
7代目小川治兵衛は、山縣有朋の別邸・無鄰菴で作庭を担当。伝統的な作庭に批判的だった山縣有朋に認められたことで、ほかの別邸の庭園も手掛けるようになりました
1895(明治28)年完成、山縣有朋の別邸で、この界隈の別荘庭園群の先駆けとされます。敷地の大半を占める庭園は、山縣有朋が設計・監修し、7代目小川治兵衛が作庭しました。疏水を取り入れ、三段の滝や池、芝生を配した池泉回遊式庭園です。
日露戦争の開戦について、山縣有朋や伊藤博文ら4人が話し合った「無鄰菴会議」の舞台となった洋館も残されています
元は藤原良房の別荘で、やがて白河天皇に献上され、この地に法勝寺が建てられました。広大な敷地を誇った法勝寺でしたが、のちに廃寺に。近代になって呉服商・下村忠兵衛が所有し、1919(大正8)年、建築家・武田五一による数寄屋造りの建物と7代目小川治兵衛の庭園が造られました。庭内には多種の樹木があり、四季によって様々な風情を感じられます。
呉服商・寺村助右衛門の別邸で、現在は料理旅館として営業。7代目小川治兵衛の庭園や、明治時代以前に造られた薮内流茶室と裏千家流の茶室があります。
茶室は移築されましたが、今でも建築当時のままの内装などを観ることができます
大正・昭和期に活躍した俳優・大河内傳次郎が設計し、庭師・広瀬利兵衛とともに30年の年月をかけて造った回遊式庭園。
名称 | 元の所有者 | 公開 |
---|---|---|
大雲院書院(東山区) | 大倉財閥創始者・大倉喜八郎 | 7/12(土)~9/30(火)公開 |
長楽館(東山区) | 実業家・村井吉兵衛 | ホテル・カフェとして営業 |
夷川邸(中京区) | 実業家・藤田傳三郎 | ホテル内へ移築、レストランとして営業 |
吉田山荘(左京区) | 東伏見宮家 | 料理旅館として営業 |
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