- 其の一、
- 京都では野菜の保存方法のひとつとして古くから発展しました
- 其の二、
- 漬物は、平安時代に書かれた書物にも登場します
- 其の三、
- 京都の三大漬物と言えば、千枚漬・すぐき・しば漬です
庶民の日常食として発展
京都の食文化のひとつとして親しまれる京のお漬物。野菜本来の味を生かした、ほどよい酸味とまろやかな風味が特徴です。漬物の歴史は古く、平安時代に宮中の儀式などについて書かれた書物『延喜式(えんぎしき)神名帳』にもその名前が登場します。もともと、良質な野菜の産地であった京都では、塩漬けやぬか漬けなどの保存方法が考案され、庶民の日常食として各家庭で作られてきました。やがて、発酵によって生じる奥深いうまみが好まれるようになり、現在でも親しまれている漬物に発展したと言われています。
京の三大漬物
聖護院カブラを原材料とする「千枚漬」、カブラの一種であるすぐき菜を原材料とする「すぐき」、そして赤シソとナスを塩で漬け込んだ「しば漬」は、京の三大漬物と呼ばれています。これらは京都を発祥の地とし、すぐき・しば漬は安土桃山時代、千枚漬は江戸時代後期からの歴史を誇ります。また、漬物は食事の締めくくりに出されるひと品として京料理にも欠かせない存在。単なる保存食ではなく、料理のひとつとして磨かれた京のお漬物は、伝統的な製法と技術を受け継ぎ、今日に至っています。
原材料●聖護院カブラ
発 祥●京都市左京区聖護院
漬込み●9月~3月
主な製造法
1 聖護院カブラをカンナなどで薄く輪切りにする 2 塩で下漬けして余分な水分を取り除く 3 酢で戻した上質のだし昆布と交互に重ねて本漬けし、乳酸発酵させる 4 数日間寝かせ、昆布の粘りで糸が引けばでき上がり
発祥は1864(慶応元)年、もと御所の料理人だった「大藤(だいとう)」の創業者・大黒屋藤三郎が考案したのがきっかけと伝わっています。御所を懐かしみ、敷き詰められた白い玉砂利をイメージしたという優美な姿は、はんなりとした京風情を思わせます。カブラの甘みと昆布のうまみが調和したコクのある味わいが特徴。
漬物職人が素早くカブラを薄切りにする様子を見た人たちが「樽の中には千枚はあるはずだ」と噂になり、千枚漬と呼ばれるようになったと言われています
原材料●すぐき菜(酢茎)
発 祥●京都市北区上賀茂
漬込み●11月下旬~12月上旬
主な製造法
1 表面の皮をむき、大きな樽に塩をたっぷりかけ、一昼夜漬ける(荒漬け) 2 荒漬けしたすぐき菜を水洗いして樽に渦巻状に並べ、塩を振って葉で覆い、フタをして重石をかける(本漬け) 3 丸太棒の先に重石をくくり付けた「天秤押し」で圧力をかける 4 1週間ほど室(むろ)で熟成させればでき上がり
安土桃山時代に上賀茂神社の神官が宮中から賜った種を栽培し、御所や公家など上流階級への贈り物としたのが始まりと言われています。すぐき菜の茎を葉とともに塩だけで漬け込みます。乳酸菌の発酵作用による味わい深い酸味が特徴です。
江戸時代、京都の漬物店はダイコンやカブの塩漬けを中心に商い、「茎屋(くきや)」とも呼ばれていました
原材料●赤シソ・ナスなど
発 祥●京都市左京区大原
漬込み●6月下旬~7月中旬
主な製造法
1 シソを水洗いする 2 シソを葉と枝に分け、シャキッとした若々しい葉だけを選別する 3 シソ、薄切りにしたナスに、塩を加えてかくはんする 4 熟成蔵に移し、乳酸発酵を促して2週間ほどすればでき上がり
京の山里・大原の名産品として知られる漬物で、主に赤シソ・ナス・塩で作られます。もとは、村人たちが保存食として漬けていたものを、大原女たちが都へ出向き行商し、全国に広まりました。塩のみで漬け込み乳酸発酵させた、独特のほどよい酸味と色鮮やかさが特徴です。
源平合戦の後、大原に住んだ建礼門院は村人たちが献上した漬物を気に入り、シソの入った漬物をその色から「紫葉(しば)漬け」と名付けたという逸話が残っています
千枚漬の元祖。今も創業当時の漬け方にこだわり、カンナで1枚1枚押して切り、昆布・塩・砂糖などで味付け。原材料となる野菜は国産にこだわり、一子相伝の味を伝えています。
- ●8時30分~18時 木曜休業(3月~9月)
- ●075-221-5975
- ●senmaiduke.com
- ●祇園四条駅下車 西へ徒歩約15分
すべて国内産の原材料を使用し、化学調味料・保存料・合成着色料を使わない自然の味を大切にした漬物がそろいます。千枚漬をはじめ、京都ならではの漬物が充実。
- ●9時~18時
- ●0120-05-7172(9時~17時30分)
- ●www.daiyasu.co.jp
- ●神宮丸太町駅下車 南東へ徒歩約20分/地下鉄 東山駅下車 北へ徒歩約10分
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