- 其の一、
- 香文化は、飛鳥時代に中国から伝わったとされています
- 其の二、
- 平安時代、貴族の間で香りを楽しむ遊びが流行しました
- 其の三、
- 香道は、茶道・華道と並ぶ日本三芸道のひとつです
香文化の成り立ち
日本の香文化は、飛鳥時代の仏教伝来とともに中国から、香木を焚(た)いて用いる焚香料(ふんこうりょう)が渡来したのが始まりです。当初は宗教とのつながりが強く、仏像開眼などの儀式の時に香を焚いていましたが、平安時代になると、貴族の間で香料を調合した練り香「薫物(たきもの)」が盛んになり、着物や部屋に香り付けをするようになりました。室町時代には禅の精神と結び付き、香木そのものの香りを鑑賞する「聞香(もんこう)」が成立します。その後、香木を焚いてその名を言い当てる「組香(くみこう)」が生まれました。
香道の確立
江戸時代には、香木を産地などから6つに分類し、さらにその香りを甘・苦・辛・酸・鹹(かん)(塩辛い)の5つの味で表現する「六国五味(りっこくごみ)」という鑑定基準が完成します。これにより香りを楽しむための作法や道具などが広く発展し、やがて茶道・華道と並んで日本三芸道のひとつとして香道が確立しました。その伝統は現代まで受け継がれ、より香りを気軽に楽しめるよう、匂い袋や線香など、様々なスタイルで生活に取り入れられています。
もともと宗教儀式に用いられていた香は、平安時代に貴族たちが風流な遊びとして楽しむようになったことから、やがて和歌や文学とも関わりの深い芸道となりました。
香木を粉末にしたものに蜜や梅肉などを加えて練り、つぼの中で熟成させた丸薬状の練り香「薫物」を持ち寄り、誰の香りが優れているかなどを競います。平安貴族の間で流行した雅な遊びです。
平安時代末期の書物「薫集類抄(くんしゅうるいしょう)」には、当時の貴族が好んだ香りの調合が多く記されています。それをもとに当時の香に近いものを調合し、聞くことができます
香道とは、作法を重んじながら香木を焚き、香りを楽しみながら鑑賞する芸道です。香道では「香りを聞く」と言い、「香りをかぐ」という表現は使いません。香りの違いを聞き分ける香遊びを「組香」、香りを鑑賞することを「聞香」と言います。
和歌や物語などを題材にして2種類以上の、小さく切り分けた香木を組み合わせ、その香りを聞き当てる遊び。香木を一片ずつ包んだ香包(こうづつみ)を香炉に焚き、参加している人たちが順番に香りを聞いていきます。各自で答えを用紙に記入し、最後に答え合わせをします。遊び方には、源氏物語にちなんだ「源氏香」や、上賀茂神社で行われる競馬(くらべうま)を題材にした「競馬香」など、数百種類もあると言われます。
左手にのせた香炉を右手で覆い、呼吸を整えて静かに香を鑑賞します。茶道のように、作法に従って香木の香りを聞くことで、心を落ち着けて深く鑑賞することができ、聞き比べをじっくり楽しみます。
1334(建武元)年、鴨川の二条河原に掲示された社会風刺の落書きには、都で流行しているものとして、10種類の香りを聞き分ける遊び「茶香十炷(ちゃこうじっしゅ)の寄合」が挙げられました
平安時代の貴族にとって薫物の調合は社交の場で必要な教養でもあったため、王朝文学には香に関する記述が多く見られ、「源氏物語」や「枕草子」にも登場します。中でも源氏物語の「梅枝(うめがえ)」の帖で、光源氏の娘である明石の姫君が11歳で宮中へ嫁ぐ際、嫁入り道具のひとつとして薫物を作る場面が有名です。
この時代、厳しい冬の終わりを告げる梅に人々は特別な心を寄せていたため、梅の香りが最も好まれていました
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