京都ツウのススメ

第七十二回 京舞

[花街を華やかに彩る京舞] 京都で生まれ、その文化に育まれた京舞。春の訪れを告げる都をどりでも知られる花街の舞について、らくたびの森明子さんが解説します。

京舞の基礎知識

其の一、
京都には、芸妓さんや舞妓さんがいる5つの花街(かがい)があります
其の二、
各花街には舞踊の流派があり、祇園甲部は京舞の井上流です
其の三、
能の影響を受けた優美な表現が京舞の特徴です

京の花街と舞

芸妓・舞妓の芸を鑑賞したり、もてなしを受けたりできる花街。京都には現在、祇園甲部、宮川町、先斗町、上七軒、祇園東の5つの花街があり、合わせて五花街(ごかがい)と呼ばれています。五花街の舞にはそれぞれ流派があり、祇園甲部の舞は京で生まれた「京舞」の井上流と定められています。祇園甲部では井上流以外の舞は禁じられており、井上流も祇園の地を出ることはないという密接な関係にあります。毎年春に芸舞妓が華麗な京舞を披露する『都をどり』は、井上流によって始められました。

井上流の歴史と特徴

京舞の井上流は、寛政年間(1789~1801年)に皇室ゆかりの近衛家や一条家、上皇の住まいである仙洞御所の舞指南役を務めた井上サト(初世家元・井上八千代)によって創始されました。宮廷文化を基盤とした舞の流儀は御所風で、屏風を立てた座敷で舞う座敷舞の流れをくみます。能や文楽の影響も受けており、たおやかな女性らしい所作と、緊張感のある力強さを兼ね備えた優雅さが特徴です。

[華麗なる舞踏] 古都に脈々と受け継がれてきた京の舞。花街というベールに包まれた、その歴史と文化をご紹介しましょう。

京の五花街

京都の花街では、芸舞妓がお座敷や舞踊会で舞を披露し、人々をもてなします。舞の流派は花街によって異なり、それぞれの定期公演などで鑑賞することができます。現在、五花街の中で「京舞」が見られるのは、祇園甲部だけです。

ココがツウ昭和初期まで京舞には井上流のほかに、篠塚流という流派がありました。江戸・明治時代には花街の舞踊の主流を占めるほど隆盛しましたが、後継家元の不在期間が長く続き、断絶してしまいます。現在は復興を果たしましたが、残念ながら花街では見ることはできません。

井上流と都をどり

1872(明治5)年に、京都博覧会の余興として企画された「都をどり」。その振り付けや指導を、井上流の三世井上八千代が担当し、こ の催しは大盛況となりました。以降毎年春に行われ、京都の春の風物詩として定着。この人気を受け、ほかの花街でも定期公演が開催されるようになりました。
「ヨーイヤサー」の掛け声を合図に始まる都をどり。その第1景で必ず銀襖の前で舞うのは、京舞が公家の御殿で演じられていたことに由来します。そしてその襖が開くと、春夏秋冬、そしてまた春へと四季の移り変わりを描いた全8景が、総勢約60名の祇園甲部の芸舞妓たちの華麗な京舞で綴られます。

京舞の基本

祇園甲部の女性だけが舞うことを許される、優美な井上流の特徴を見てみましょう。

ココがツウ京舞は酒席での座敷の舞として発展したため、1畳程の狭い空間で静かに舞うように構成されています。金屏風を立て、燭台にろうそくを灯して舞われることが多いのも、座敷舞の名残です

[表情]能と同じように、顔で感情を表現しないのが基本です。手ぶりや腰から上の仕草によって心の動きを表現します。 [歩き方]背筋を伸ばしたまま腰を落とした「おいど(お尻)をおろす」という姿勢と、足の裏を地面に付けたまま進むすり足が基本。これらは能から影響を受けています。 [扇]井上流の扇は、図柄が「近衛引(このえびき)」という、公家の近衛家に由来するしま模様。しまの数は舞の熟達度を表し、多いほど技量が上であることを示します。「ココがツウ」舞妓は紅、芸妓は萌黄(もえぎ)または紫、稽古用は白と、立場などによって扇の色が変わります

鑑賞するならココでも

ギオンコーナー[弥栄会館内]

舞妓さんによる京舞をはじめ、狂言、雅楽、茶道、華道、琴など日本の伝統芸能を鑑賞できます。

  • 18時・19時
  • 大人3,150円・高大生2,200円・小中生1,900円
  • 075 - 561-1119
  • 京都市東山区祇園町南側570-2
  • 祇園四条駅下車 南東へ徒歩約5分
制作:2014年3月
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