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京都ツウのススメ

第百八十三回 京都の坪庭(つぼにわ)

角屋もてなしの文化美術館

京で楽しむ様々な坪庭 京町家に欠かせない坪庭。古い建物が今でも残る京都では、代々の家主のセンスが光る坪庭がたくさんあります。今回は「らくたび」の森明子さんが、坪庭の楽しみ方をお伝えします。

基礎知識

其の一、

坪庭とは、敷地内にある比較的小さな庭のことです

其の二、

ほとんどの京町家には採光や風通しのために坪庭があります

其の三、

坪庭のデザインに決まりはなく、それぞれの庭の個性が楽しめます

奥に長い京町家には欠かせない坪庭

坪庭とは、敷地の一角や、敷地内の建物と建物の間に作られた小さな庭のこと。民家につくられたものとしては京町家がはじまりと言われ、安土桃山時代頃から見られるようになりました。京町家は間口が狭く、奥に長いのが特徴で、同じ形状の家が密集しているため、奥に行くほど風も光も入りにくいのが悩みでした。そこで敷地の中の採光と風通しを良くするために設けられたのが坪庭です。

茶庭をベースにデザインされた坪庭

坪庭は採光などの機能的な役割とともに、住む人やそこを訪れる人たちの目も楽しませてきました。安土桃山時代から江戸時代にかけての京都は、町人による経済活動がとても盛んだった時代。当時流行していた茶の湯の茶庭(露地)の影響を受けながら、町人たちは自身の家にも坪庭を作るようになりました。現在でも古い京町家などでは、様々な坪庭を見ることができます。今回はその一部をご紹介しましょう。

坪庭って何?

知っているようで知らない「坪庭」。
まずは役割やよく使われるものなど基本から解説します。

坪庭とは、敷地の中にある小さな庭のこと。
安土桃山時代には京町家で見られるようになり、江戸時代には現代に通じる形が確立されました。

役割1採光と風通しを確保する

「うなぎの寝床」とも呼ばれる京町家では、敷地の中に庭を設けることで、家の奥まで日の光が入るようになり、風通しも良くなります。

役割2火災時の延焼を防ぐ

家々が密集して建てられた京都では火災時の延焼は悩みのタネ。坪庭は延焼を防ぐ役割もありました。

役割3鑑賞して癒やされる

自然の風景を家の中に取り入れることで、四季折々の風景を楽しむことができます。また時間や天候による景色の変化が楽しめるのも坪庭の魅力です。

間取り図

ここがツウ

坪庭の原点は、平安時代の宮中にあった「壺」と呼ばれた、渡り廊下に面した場所。『源氏物語』に登場する天皇の后の通称「桐壺」や「藤壺」は、住んでいた殿舎の「壺」の植栽にちなみます。京都御所には今も藤壺と呼ばれる場所があります

坪庭を彩る小道具たち

京町家の主人たちは、茶庭に刺激を受けながら坪庭をデザインしました。
坪庭を装飾するアイテムには次のようなものがあります。

石灯籠(いしどうろう)
もとは社寺の明かりとして設置されていましたが、茶の湯の隆盛とともに様々なデザインの灯籠が生み出されました。

石灯籠

植栽
季節感を演出するのに欠かせないのが植栽です。草木を組み合わせたり、印象的なもの1点に絞ったりと家主のセンスが表れます。

植栽

つくばい
手水鉢(ちょうずばち)をはじめとした手洗いの道具です。自然石をそのまま使ったものと、石を加工したものとに分けられます。

石灯籠

いろいろな形の石を置いたり、茶庭でよく見られる飛び石を 敷いたり…。石は坪庭の重要な小道具です。

石

ここがツウ

京町家に登場するよりも早い鎌倉時代、寺院ではすでに坪庭が作られていました。当時、庭づくりを専門とする僧侶のことを石立僧(いしだてそう)と呼んでおり、その呼び名からも、庭における石の重要性がわかります

坪庭を彩る小道具たち

家主の美意識を自由に表現できる坪庭は見ていて飽きることがありません。
お気に入りを探しに訪れてみませんか。

江戸時代から続く広々とした坪庭

角屋(すみや)もてなしの文化美術館[下京区]

江戸時代のもてなしの空間である揚屋(あげや)建築唯一の遺構。高低差のある植栽やどっしりしたたたずまいの石灯籠に、日光による陰影が加わり、まるで絵画のような美しさです。

江戸時代から続く広々とした坪庭

ここがツウ

坪庭に配される石や灯籠などは何かに見立てられることが多く、角屋の坪庭(中庭)の大石は富士山を表していると言われています

約4坪に表現された無限の広がり

龍源院(りょうげんいん)〈大徳寺塔頭(だいとくじたっちゅう)〉[北区]

1502(文亀2)年に創建された大徳寺の中でも古い時代の塔頭寺院。1958(昭和33)年に 作庭された「東滴壺(とうてきこ)」は、4坪ほどの坪庭に敷かれた白砂の上に5つの石だけが置かれ、砂に描かれた波紋によって、1滴の水が大河となり、やがて大海原へと広がっていく様子が表現されています。

約4坪に表現された無限の広が

近代的に改修された京町家の坪庭

小川珈琲 堺町錦店[中京区]

築100年以上の京町家をリノベーションした喫茶店。ふたつあるイートインスペースをつなぐ渡り廊下のそばに坪庭があり、近代的な内装に京都らしさを添えています。日本の自生種約30種類が楽しめる植栽が大きな軽石の上に据えられているのは、窓際のイスに座った人の目の高さを意識しているからだそうです。

近代的に改修された京町家の坪庭

制作:2023年11月
バックナンバー
第百八十六回 京都の地ソース
第百八十五回 『源氏物語』ゆかりの地
第百八十四回 京の煤払(すすはら)い
第百八十三回 京都の坪庭(つぼにわ)
第百八十二回 どこまで分かる?京ことば
第百八十一回 京都の中華料理
第百八十回 琵琶湖疏水と京都
第百七十九回 厄除けの祭礼とお菓子
第百七十八回 京都と徳川家
第百七十七回 京の有職文様(ゆうそくもんよう)
第百七十六回 大念仏狂言(だいねんぶつきょうげん)
第百七十五回 京表具(きょうひょうぐ)
第百七十四回 京の難読地名
第百七十三回 京の縁日
第百七十二回 京の冬至(とうじ)と柚子(ゆず)
第百七十一回 京都の通称寺
第百七十回 京都とキリスト教
第百六十九回 京都の札所(ふだしょ)巡り
第百六十八回 お精霊(しょらい)さんのお供え
第百六十七回 京の城下町 伏見
第百六十六回 京の竹
第百六十五回 子供の行事・儀式
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第百六十三回 普茶(ふちゃ)料理
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第百四十八回 京の雲龍図(うんりゅうず)
第百四十七回 明治の京都画壇
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第百三十三回 明治時代の京の町
第百三十二回 皇室ゆかりの建物
第百三十一回 京の調味料
第百三十回 高瀬川
第百二十九回 蹴鞠
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第百二十七回 京都に残るお屋敷
第百二十六回 京の仏像 [スペシャル版]
第百二十五回 京の学校
第百二十四回 京の六地蔵めぐり
第百二十三回 京の七不思議<通り編>
第百二十二回 京都とフランス
第百二十一回 京の石仏
第百二十回 京の襖絵(ふすまえ)
第百十九回 生き物由来の地名
第百十八回 京都の路面電車
第百十七回 神様への願いを込めて奉納
第百十六回 京の歴食
第百十五回 曲水の宴
第百十四回 大政奉還(たいせいほうかん)
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第百八回 春の京菓子
第百七回 幻の京都
第百六回 京の家紋
第百五回 京の門前菓子
第百四回 京の通り名
第百三回 御土居(おどい)
第百二回 文学に描かれた京都
第百一回 重陽(ちょうよう)の節句
第百回 夏の京野菜
第九十九回 若冲と近世日本画
第九十八回 京の鍾馗さん
第九十七回 言いまわし・ことわざ
第九十六回 京の仏師
第九十五回 鴨川
第九十四回 京の梅
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第九十二回 京の冬の食習慣
第九十一回 京の庭園
第九十回 琳派(りんぱ)
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第八十七回 夏の京菓子
第八十六回 小野小町(おののこまち)と一族
第八十五回 新選組
第八十四回 京のお弁当
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第八十回 義士ゆかりの地・山科
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第六十七回 茶の湯(茶道)
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第六十二回 能・狂言
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第六十回 京狩野派
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第五十七回 百人一首
第五十六回 京の年末
第五十五回 いけばな
第五十四回 京の城
第五十三回 観月行事
第五十二回 京の塔
第五十一回 錦市場
第五十回 京の暖簾
第四十九回 大原女
第四十八回 京友禅
第四十七回 京のひな祭り
第四十六回 京料理
第四十五回 京の町家〈内観編〉
第四十四回 京の町家〈外観編〉
第四十三回 京都と映画
第四十二回 京の門
第四十一回 おばんざい
第四十回 京の焼きもの
第三十九回 京の七不思議
第三十八回 京の作庭家
第三十七回 室町文化
第三十六回 京都御所
第三十五回 京の通り
第三十四回 節分祭
第三十三回 京の七福神
第三十二回 京の狛犬
第三十一回 伏見の酒
第三十回 京ことば
第二十九回 京の文明開化
第二十八回 京の魔界
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第二十六回 夏越祓
第二十五回 葵祭
第二十四回 京の絵師
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第十一回 京菓子の歴史
第十回 枯山水庭園の眺め方
第九回 京阪沿線 初詣ガイド
第八回 顔見世を楽しむ
第七回 特別拝観の楽しみ方
第六回 京都の着物
第五回 仏像の見方
第四回 送り火の神秘
第三回 祇園祭の楽しみ方
第二回 京の名水めぐり
第一回 池泉庭園の眺め方
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