京都ツウのススメ

第四十六回 京料理

[伝統の食文化を伝える京料理] 様々な料理が融合して形づくられた京料理。中でも茶の湯から生まれた懐石料理に注目し、その歴史やもてなしの心をらくたびの若村亮さんがひも解きます。

京料理の基礎知識

其の一、
江戸時代、江戸の料理と区別するために「京料理」という言葉が生まれました
其の二、
大饗料理、精進料理、懐石料理などが融合して現在の京料理が成り立っています
其の三、
季節感を大切にし、器や盛り付けに工夫が凝らされています

京料理の成り立ち

日本料理は、平安時代に五穀豊穣を願う儀式で神様に供えた料理「神饌(しんせん)」をルーツとします。中でも京料理は、京都の歴史文化と風土を背景に育まれました。平安時代、宮廷や貴族の宴会で出されていた大饗(だいきょう)料理は、公家の料理として発展して有職(ゆうそく)料理に。鎌倉時代から安土桃山時代にかけては、武家の料理である本膳料理、禅宗の寺の食事で肉や魚を使わない精進料理、そして茶の湯の流行とともに誕生した茶懐石から発展した懐石料理が登場。これらが融合して現在の「京料理」が成り立っています。

京料理のルーツのひとつ・懐石料理

室町時代の茶席では、食べきれないほどの豪華な料理が出されましたが、安土桃山時代に千利休が禅宗の影響を受けた「わび茶」を大成させると、その料理も一汁三菜を基本とする簡素なものへと変化。また、亭主自らが客に心を尽くす「もてなし」の精神が重視され、季節感や器との調和などに趣向が凝らされました。こうした禅の精神や美意識を取り入れた懐石料理は現代の京料理にも受け継がれ、四季の風趣を織り込んだ見目美しい独自の食文化が築かれています。

[京料理のルーツをひも解く] わび茶の精神から生まれた懐石料理

  • [懐石料理とは?]茶懐石の流れをくんで発展。一汁三菜を基本に八寸や蓋物(ふたもの)などの料理が順番に提供されます。旬の食材を使い、素材の持ち味を生かす調理法や盛り付けの美しさ、その都度出来立ての料理を運ぶという配膳方法が特徴。酒席のためのごちそう「会席」とは区別されます。 [ココがツウ]「懐石」という呼称は、江戸時代に禅宗の僧侶が温めた石を懐に抱いて寒さや飢えをしのいだという故事に由来するという説が一般的で、質素な料理を意味する造語です
  • [懐石料理を知るキーワード]「茶懐石」茶事で、亭主が自ら料理をし、客をもてなす料理のこと。空腹のまま刺激の強い濃茶(こいちゃ)を飲むことを避けるために振る舞われます。 「一汁三菜」ご飯と汁物、向付・煮物・焼き物の3種のおかずで構成された献立のこと。この一汁三菜の中に季節感を取り入れ、器との調和を工夫して盛り付けられます。

2月の献立例ともてなしの基本 もてなしの総合芸術と言われる懐石料理について、2月の献立例とともに紹介します。※献立の順や内容はお店によって異なります

猪口(ちょく)

蟹赤蕪蒸し

初めに出される軽い料理、突き出しのこと。

八寸

2月に伏見稲荷大社で行われる初午大祭(はつうまたいさい)に合わせた絵型の盆。奥は節分行事にちなんでイワシとエビで巻いた手綱寿司

八寸(約24cm)角の器に数種類の料理を盛った酒の肴。

もてなしの基本1 季節

歳時・行事などにちなみ、ひと皿に旬の食材を取り合わせて季節が表現されます。

ココがツウ

季節を先取りする「走り」、最も食べ頃の「旬」、旬を過ぎた「名残」と、食材を使い分けて四季の移ろいを表現するのも特徴です

向付

ふぐ薄造り

酢のものや刺し身など。ご飯と汁物の奥(向こう)に置かれたことからこの名が。

蓋物

氷が薄く張ったように仕立てた鴨真薯(しんじょ)薄氷仕立て

蓋の付いた器で提供される汁物。椀物とも。

焼き物

陶芸家・河井寛次郎の器に京都の冬の味覚・甘鯛からすみ粉焼きをのせて

一汁三菜で言う三菜目にあたり、季節の魚などの焼き物。

もてなしの基本2 器

陶器・磁器・漆器などを使い分けます。器が映えるよう量はやや少なめに盛り付けられます。

強肴

京都・舞鶴産ブリしゃぶ

客にもう少し酒を勧めるために出す酒の肴。強いてもう一品の意。

ご飯物

伏見稲荷大社の千本鳥居に見立てたニンジンが色鮮やかなご飯物

締めくくりの一品。後吸物・香の物と一緒にいただきます。

もてなしの基本3 タイミング

食べるペースに合わせて、熱いものは熱いうちに、冷たいものは冷たいうちに出されます。

水物

抹茶アイスクリーム

果物や季節のデザート。

料理撮影協力/四条木屋町下ル「露庵 菊乃井」(店舗予約075-361-5580)

制作:2012年1月
バックナンバー
第百八十七回 京の歌枕(うたまくら)の地
第百八十六回 京都の地ソース
第百八十五回 『源氏物語』ゆかりの地
第百八十四回 京の煤払(すすはら)い
第百八十三回 京都の坪庭(つぼにわ)
第百八十二回 どこまで分かる?京ことば
第百八十一回 京都の中華料理
第百八十回 琵琶湖疏水と京都
第百七十九回 厄除けの祭礼とお菓子
第百七十八回 京都と徳川家
第百七十七回 京の有職文様(ゆうそくもんよう)
第百七十六回 大念仏狂言(だいねんぶつきょうげん)
第百七十五回 京表具(きょうひょうぐ)
第百七十四回 京の難読地名
第百七十三回 京の縁日
第百七十二回 京の冬至(とうじ)と柚子(ゆず)
第百七十一回 京都の通称寺
第百七十回 京都とキリスト教
第百六十九回 京都の札所(ふだしょ)巡り
第百六十八回 お精霊(しょらい)さんのお供え
第百六十七回 京の城下町 伏見
第百六十六回 京の竹
第百六十五回 子供の行事・儀式
第百六十四回 文豪と京の味
第百六十三回 普茶(ふちゃ)料理
第百六十二回 京都のフォークソング
第百六十一回 京と虎、寅
第百六十回 御火焚祭
第百五十九回 鴨川の橋
第百五十八回 陰陽師(おんみょうじ)
第百五十七回 京都とスポーツ
第百五十六回 貴族の別荘地・伏見
第百五十五回 京都の喫茶店
第百五十四回 京の刃物
第百五十三回 京都の南蛮菓子
第百五十二回 京の社家(しゃけ)
第百五十一回 京都にゆかりのある言葉
第百五十回 京のお雑煮
第百四十九回 京の牛肉文化
第百四十八回 京の雲龍図(うんりゅうず)
第百四十七回 明治の京都画壇
第百四十六回 京の名所図会(めいしょずえ)
第百四十五回 ヴォーリズ建築
第百四十四回 島原の太夫(たゆう)
第百四十三回 京の人形
第百四十二回 京の社寺と動物
第百四十一回 鳥居(とりい)
第百四十回 冬の食べ物
第百三十九回 能・狂言と京都
第百三十八回 京都と様々な物の供養
第百三十六回 京都とビール
第百三十五回 京都と鬼門(きもん)
第百三十四回 精進料理
第百三十三回 明治時代の京の町
第百三十二回 皇室ゆかりの建物
第百三十一回 京の調味料
第百三十回 高瀬川
第百二十九回 蹴鞠
第百二十八回 歌舞伎
第百二十七回 京都に残るお屋敷
第百二十六回 京の仏像 [スペシャル版]
第百二十五回 京の学校
第百二十四回 京の六地蔵めぐり
第百二十三回 京の七不思議<通り編>
第百二十二回 京都とフランス
第百二十一回 京の石仏
第百二十回 京の襖絵(ふすまえ)
第百十九回 生き物由来の地名
第百十八回 京都の路面電車
第百十七回 神様への願いを込めて奉納
第百十六回 京の歴食
第百十五回 曲水の宴
第百十四回 大政奉還(たいせいほうかん)
第百十三回 パンと京都
第百十二回 京に伝わる恋物語
第百十一回 鵜飼(うかい)
第百十回 扇子(せんす)
第百九回 京の社寺と山
第百八回 春の京菓子
第百七回 幻の京都
第百六回 京の家紋
第百五回 京の門前菓子
第百四回 京の通り名
第百三回 御土居(おどい)
第百二回 文学に描かれた京都
第百一回 重陽(ちょうよう)の節句
第百回 夏の京野菜
第九十九回 若冲と近世日本画
第九十八回 京の鍾馗さん
第九十七回 言いまわし・ことわざ
第九十六回 京の仏師
第九十五回 鴨川
第九十四回 京の梅
第九十三回 ご朱印
第九十二回 京の冬の食習慣
第九十一回 京の庭園
第九十回 琳派(りんぱ)
第八十九回 京の麩(ふ)
第八十八回 妖怪紀行
第八十七回 夏の京菓子
第八十六回 小野小町(おののこまち)と一族
第八十五回 新選組
第八十四回 京のお弁当
第八十三回 京都の湯
第八十二回 京の禅寺
第八十一回 京の落語
第八十回 義士ゆかりの地・山科
第七十九回 京の紅葉
第七十八回 京の漫画
第七十七回 京の井戸
第七十六回 京のお地蔵さん
第七十五回 京の名僧
第七十四回 京の別邸
第七十三回 糺(ただす)の森
第七十二回 京舞
第七十一回 香道
第七十回 天神さん
第六十九回 平安京
第六十八回 冬の京野菜
第六十七回 茶の湯(茶道)
第六十六回 京の女流文学
第六十五回 京の銭湯
第六十四回 京の離宮
第六十三回 京の町名
第六十二回 能・狂言
第六十一回 京の伝説
第六十回 京狩野派
第五十九回 京寿司
第五十八回 京のしきたり
第五十七回 百人一首
第五十六回 京の年末
第五十五回 いけばな
第五十四回 京の城
第五十三回 観月行事
第五十二回 京の塔
第五十一回 錦市場
第五十回 京の暖簾
第四十九回 大原女
第四十八回 京友禅
第四十七回 京のひな祭り
第四十六回 京料理
第四十五回 京の町家〈内観編〉
第四十四回 京の町家〈外観編〉
第四十三回 京都と映画
第四十二回 京の門
第四十一回 おばんざい
第四十回 京の焼きもの
第三十九回 京の七不思議
第三十八回 京の作庭家
第三十七回 室町文化
第三十六回 京都御所
第三十五回 京の通り
第三十四回 節分祭
第三十三回 京の七福神
第三十二回 京の狛犬
第三十一回 伏見の酒
第三十回 京ことば
第二十九回 京の文明開化
第二十八回 京の魔界
第二十七回 京の納涼床
第二十六回 夏越祓
第二十五回 葵祭
第二十四回 京の絵師
第二十三回 涅槃会
第二十二回 京のお漬物
第二十一回 京の幕末
第二十回 京の梵鐘
第十九回 京のお豆腐
第十八回 時代祭
第十七回 京の近代建築
第十六回 京のお盆行事
第十五回 京野菜
第十四回 京都の路地
第十三回 宇治茶
第十一回 京菓子の歴史
第十回 枯山水庭園の眺め方
第九回 京阪沿線 初詣ガイド
第八回 顔見世を楽しむ
第七回 特別拝観の楽しみ方
第六回 京都の着物
第五回 仏像の見方
第四回 送り火の神秘
第三回 祇園祭の楽しみ方
第二回 京の名水めぐり
第一回 池泉庭園の眺め方
  • おすすめ!
  • おでかけナビ
  • 京阪沿線って?
  • K PRESSプレゼント
  • ぶらり街道めぐり
  • 京阪・文化フォーラム
  • 京阪グループおトク情報
  • 他社線から京阪電車へ
  • 京阪グループ沿線の遠足・社会見学施設のご案内
  • ひらかたパーク
  • 京阪グループのホテル・レジャー予約
  • 比叡山へいこう!
  • アートエリア ビーワン

ページの先頭へ