沿線おでかけ情報

京都ツウのススメ

第百八十八回 京都とお花見

仁和寺の桜

平安時代に始まる春の楽しみ 京都には、たくさんのお花見の名所があります。平安時代から行われているお花見の歴史や、京都ゆかりの桜を「らくたび」の森明子さんがご案内します。

基礎知識

其の一、

京都のお花見の始まりは、平安時代の「花宴之節(かえんのせち)」と言われています

其の二、

桜を愛で、詩や和歌を詠んだり酒宴を開くなど、お花見の楽しみ方は様々でした

其の三、

お花見で楽しみたい京都ならではの桜があります

平安時代から楽しまれているお花見

桜は、日本を代表する春の花木。京都には社寺や公園をはじめ、桜の名所が多くあり、たくさんの人がお花見にでかけます。京都において桜を愛でるお花見が最初に行われたのは、平安時代に嵯峨天皇が神泉苑で開いた「花宴之節」だと言われています。紫式部も『源氏物語』の中で、光源氏らが宮中で花宴を楽しむ場面を書いています。千年以上前の京の都でも、人々は春の到来を心待ちにし、楽しんでいたことがうかがえます。

様々なお花見の楽しみ方

お花見の場所は様々で、貴族の邸宅や寺院、嵐山など景勝地の桜を楽しむ風習が広まります。桜を見るためにでかける「桜狩」という言葉もありました。豊臣秀吉は晩年に醍醐寺の境内に桜を植え、招いた客人をもてなす「醍醐の花見」を催しました。また江戸時代には、新しい小袖(普段の着物)を着て、仁和寺など桜の名所に出かける人も多かったそう。今も春の京都には、思い思いにお花見を楽しむ人の姿が見られます。

京のお花見物語 京のお花見物語

京都の最初のお花見は神泉苑での「花宴之節」

平安時代初期にまとめられた史書『日本後記』には、812(弘仁3)年、嵯峨天皇が「花宴之節」を開いたという記述があり、これが京都でのお花見の始まりと言われています。場所は、天皇のための庭園(禁苑)として平安京に造営された神泉苑〈中京区〉でした。嵯峨天皇はここで桜を観賞し、文人と詩宴を催していました。

秀吉が催した盛大なお花見

1598(慶長3)年、豊臣秀吉が醍醐寺〈伏見区〉で催した「醍醐の花見」。正室・北政所、側室・淀殿など、女性を中心に約1,300人が招かれました。秀吉は桜が咲く境内を巡り、大名らが亭主を務める茶屋でもてなしを受けるなどして1日を過ごしました。現在、醍醐寺の三宝院前には、秀吉にちなんで名付けられた「太閤しだれ桜」があります。

秀吉が催した盛大なお花見

ここがツウ

秀吉は「醍醐の花見」の前年にも醍醐寺で桜を観賞。その美しさを忘れられず、翌年、改めて醍醐寺を訪ね、桜の名所・吉野(現奈良県)などから桜約700本を移植するなどして境内を整備。お花見の準備を進めました

『源氏物語』の中の桜の宴

宮中や貴族の邸宅には桜が植えられました。『源氏物語』の8帖「花宴(はなのえん)」には、南殿(儀式などが行われる紫宸殿の別名)での桜の宴の様子が書かれています。宴は夜まで続き、光源氏らは詩を詠み、舞などを楽しみました。

ここがツウ

京都御所〈上京区〉の紫宸殿の南庭には「左近の桜」が植えられています。平安京遷都の際に植えられた梅が承和年間(834〜48年)に枯れてしまったことから、仁明天皇が梅の代わりに桜を植えたと伝わります

お花見で愛でたい京都の桜 お花見で愛でたい京都の桜

歌人の心が通じた
墨染桜(すみぞめざくら)
太政大臣・藤原基経が亡くなったことを悲しんだ平安時代の歌人・上野峯雄は「深草の桜よ 心があるなら今年は墨染色に咲いてほしい」と詠みました。すると気持ちが伝わったかのように薄墨色の桜が咲いたとされます。この伝説が「墨染」という地名の由来に。現在、墨染寺(ぼくせんじ)〈伏見区〉では、咲き始めは白く、やがて淡いピンクに色付く4代目の墨染桜を観賞できます。
感謝の気持ちを込めた
関雪桜(かんせつざくら)

哲学の道〈左京区〉の桜並木は、大正・昭和時代に京都画壇で活躍した兵庫県神戸市生まれの日本画家・橋本関雪夫妻が「お世話になった京都へのお礼」と、桜の苗木を約300本寄贈したのが始まり。今も「関雪桜」と親しまれています。

秀吉が催した盛大なお花見

春の鞍馬山(くらまやま)を彩る
雲珠桜(うずざくら)
平安時代からの桜の名所・鞍馬山の桜を雲珠桜と言います。雲珠とは、馬具の飾り金具の名前。常緑の樹にまじって様々な種類の桜が咲く鞍馬山の景観が雲珠を思わせることからその名が付いたとされます。

お花見の楽しみ方

桜の枝を飾り、歌会を楽しむ
平安時代は、花見を「桜狩」とも言いました。『伊勢物語』には、都から遠く離れた交野(現大阪府枚方市・交野市)に桜狩にでかけた惟喬(これたか)親王が、素晴らしい風情の桜を見付け、その枝を頭に飾り、歌会を楽しんだと書かれています。
にぎやかに過ごす

江戸時代の名所を紹介した図会には、嵐山や仁和寺、祇園社の春の景色が描かれています。庶民も桜の名所を訪ねて、桜を眺めながら和歌を作り、料理やお酒を楽しみました。

ここがツウ

江戸時代初期の京都の年中行事をまとめた『日次紀事(ひなみきじ)』によれば、春は花見用に小袖を作る人が多かったそう。
女性は花見小袖で着飾って、花見にでかけました

拾遺都名所図会「御室花見」

拾遺都名所図会「御室花見」
国際日本文化研究センター蔵

制作:2024年4月
バックナンバー
第百八十八回 京都とお花見
第百八十七回 京の歌枕(うたまくら)の地
第百八十六回 京都の地ソース
第百八十五回 『源氏物語』ゆかりの地
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第百八十三回 京都の坪庭(つぼにわ)
第百八十二回 どこまで分かる?京ことば
第百八十一回 京都の中華料理
第百八十回 琵琶湖疏水と京都
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第百二十六回 京の仏像 [スペシャル版]
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第十回 枯山水庭園の眺め方
第九回 京阪沿線 初詣ガイド
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第七回 特別拝観の楽しみ方
第六回 京都の着物
第五回 仏像の見方
第四回 送り火の神秘
第三回 祇園祭の楽しみ方
第二回 京の名水めぐり
第一回 池泉庭園の眺め方
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