京都ツウのススメ
第百七十五回 京表具(きょうひょうぐ)
写真提供:藤田月霞堂
京都で育まれた表具の技術と文化茶室や寺院などでよく見られる京表具は芸術性の高さで国内外から高い評価を得ています。書画を優雅に彩る京表具を「らくたび」の森明子さんが解説します。
基礎知識
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其の一、
- 表具とは書や絵画を布や紙に貼り、掛軸や屏風(びょうぶ)などに仕立てたものです
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其の二、
- 京表具の特徴は書画と裂地(きれじ)<織物>の美しい調和にあります
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其の三、
- 京都では文化財の修復分野においても表具師が活躍しています
京表具の歴史が日本の表具の歴史そのもの
表具とは、書や絵を布や紙などに貼り、掛軸や屏風、襖(ふすま)などに仕立てたもの。中でも京都やその近隣で作られた素材を使い、京都府内で作られた表具を京表具と言います。平安時代から長く都だった京都には国内外から優れた表具が多く集まり、その結果職人の技術が向上し、感性が研ぎ澄まされていきました。卓越した技術と高い美意識を備えた職人たちが多くの名品を残してきた京表具の歴史は、日本の表具の歴史そのものとも言えます。
書画と裂地とのはんなりとした調和が特徴
表具の特徴は書画と裂地との上品な調和。主役である書画を引き立てながら、はんなりとした優雅さを感じさせるように仕上げます。京都で表具が作られ始めた平安時代は、経文や仏画の保護と保管のための表具が多かったのですが、鎌倉・室町時代に入って書院建築に「床の間」が登場したことをきっかけに、部屋の装飾品としても広く親しまれるようになりました。
京表具の歴史
表具を作ることを表装と言います。中国から伝えられた表装の技術と文化は都であった京都の街を中心に確立・発展していきました。表具の代表とも言える掛け軸の歴史を追ってみましょう。
平安時代京表具の誕生
京表具の始まりは平安時代と言われています。中国から仏教とともに伝えられた表装の技術は、経文を巻物にする際に用いられました。当時、京都の貴族の間では仏教画を掲げて供養することが盛んに行われており、その際も表具が多く使われていました。
鎌倉〜室町時代掛軸の広まり
京都を中心に禅宗が広まると、禅の教えに関わる書画の掛軸が多く作られるようになりました。さらに、武士の住居である書院建築が建てられるようになり「床の間」が登場すると、掛軸は室内装飾のひとつとして扱われるようになりました。
室町幕府第8代将軍・足利義政の時代には京都・銀閣寺を中心に東山文化が花開きました。
京表具もそのひとつで、義政に仕えた能阿弥(のうあみ)・相阿弥(そうあみ)によって表装の形式が確立されました。
江戸時代〜現代茶の湯の広まりの中で種類も豊富に
京都をはじめ全国で茶の湯が盛んになると、茶室に合うように仕立てた掛軸が数多く作られました。茶の湯の隆盛の中で広く親しまれるようになった京表具は、現在でも和室に彩りを添えるものとして楽しまれています。
京表具Q&A
京表具の特徴は?
京表具を手本として発展してきた表具は、制作の手順や素材が全国どこでも同じです。その中でも京表具が確固たる地位を築いている理由は、本紙と呼ばれる書画と周囲に配置する裂地の見事な調和。本紙を保護し、引き立てることを第一にしつつ、上品に仕上げます。千年を超す長い歴史の中で培われた職人の技術と洗練された美意識がそれを支えているのです。
写真提供:藤田月霞堂
なぜ、京都で発展してきたの?
大きな理由は京都が都であった時代に、国内外の名品が京都に集まったことにあり、京の表具師たちは優れた作品を見て、技術とセンスを磨いていきました。また、表具は何枚もの紙を重ねては乾かすという工程を踏みますが、風が少なく、寒暖差の大きい京都の気候も上質な表具作りに適していました。
表具を豪華に仕上げる際には金襴という金糸の入った織物を使います。京表具の金襴のほとんどは京都・西陣で表装専用に織られています。
京表具師に求められる
修復の技術
表具師は新しい作品の表装だけでなく、古い書画の修復も行います。破れや虫食いは裏から和紙を貼って修繕し、水で洗うなどして汚れやシミを取り除きます。多くの作品に関わってきた京都の表具師のところには全国から修復の依頼があると言います。
たくさんの虫食いを丁寧に修復。新たな表装には絵の中の装束と同じ柄の裂地が用いられました。
写真提供:井上光雅堂
国宝などの文化財の修復作業は京都国立博物館の敷地内にある文化財保存修理所で行われます。そこでも京の表具師たちの卓越した技術が頼りにされています。
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