- 其の一、
- しきたりとは、昔から“仕来(しき)たること”(=して来たこと)という意味です
- 其の二、
- 物事を円滑に進めるための作法のひとつです
- 其の三、
- 社寺や年中行事が多い古都ならではのしきたりも数多く存在します
長い歴史の中で育まれた風習
しきたりの語源は「仕来たる」、つまり昔からずっと「して来たこと」という意味です。1200余年の歴史をもつ京都には、先人たちより脈々と引き継がれてきたしきたりが数多く存在します。それらは、要点を押さえれば物事をうまく進められる、理にかなったマニュアルのようなもの。日々の暮らしや人間関係を円滑に進めるための細かな心配りと工夫であり、これこそが京都人の知恵が生み出したコミュニケーション文化と言えるでしょう。
京都のしきたりの特徴
長きに渡って都であり、政治や文化の中心地であった京都。年中行事や、御所を中心とした宮廷文化から影響を受けた独特の風習が数多く残されています。それらの中には、お返しの作法である「おため」などのように、京都近郊でのみ受け継がれている風習がある一方、鬼を追い払う追儺式(ついなしき)から始まったとされる節分の豆まきのように、京都から全国に広がり日本文化として定着したものもあります。
自宅でご祝儀を受け取ったら、その場で1割の現金をため紙(半紙)とともに返すことを「おため」と言います。ため紙は次の祝い事の際に使ってもらうために渡すもので、これには“末永いお付き合いを”という気持ちが込められています。「おうつり」とも呼ばれ、“幸せが移りますように”という想いの表現とされます。
長居する客がいる場合、ほうきを逆さに立てておく風習は全国的に見られますが、さらに京都ではほうきに布や手拭いをかけ、拝んだりお供えをします。
神様を掃き出してしまうことになるので、お正月は、ほうきを使わない風習があります。そこには、普段忙しい女性に休んでもらうための思いやりが隠されています
京都の商家では、毎月8日・18日・28日にアラメ(コンブの一種)を食べる風習があります。これは「商いに芽が出るよう」という商売繁盛の願いが込められています。また、おからは“炊く”ではなく“炒る”と言うので、お金やお客が“入る”とかけて、月末に験を担いで食されました。
京都の結婚祝いは、心が込もった丁寧なもの。片木台(へぎだい)に金封・寿恵廣(すえひろ)・熨斗(のし)をのせ、それを広蓋(ひろぶた)にのせて袱紗(ふくさ)をかけ、さらに風呂敷で包みます。これを大安・先勝・友引の午前中に先方へ届けるのがマナーです。また、もったいないという京都人の“始末”の考えから、寿恵廣・熨斗は使い回してよいとされています。
京都のお葬式では、黒白ではなく黄白の金封を使用するのが礼儀です。宮廷への献上品に使用されていた最も格の高い“紅白”の水引の紅色が、黒に近い玉虫色に輝くものでした。それと黒白の水引とを見間違えないようにするため、仏事には黄白の水引が使用されるようになりました。また、金封の表書きは「御香典」ではなく「御仏前」と書きます。
生死を白黒はっきりさせる武家社会の考えから生まれた“黒白”は、公家文化中心の京都では浸透しませんでした
京の家庭の台所にはよく「火廼要慎」と書かれたお札が貼られています。これは愛宕神社(京都市右京区)で授与される火災除けの護符です。
毎年、地域や町内の代表が愛宕神社に参拝し、人数分の護符を買って配る代参の風習があります。また、3歳まに愛宕神社に参拝すると一生火難を逃れると言われます
京都では、毎年6月30日に「水無月」というお菓子を食べます。これは、宮中の人々が氷を食べて暑気払いをした「氷の節句」という年中行事に由来するもの。氷のかけらを模した三角形のういろうの上に、“魔を滅する”という意味の小豆がのっています。
毎年8月16日に行われる京都五山の送り火に用いる護摩木の消し炭を、白い奉書紙に巻いて家の軒先に吊るし、家内安全を祈る盗難除けのお守りとする家庭が多く見られます。
- 京都の「門(かど)掃き」は、門前を掃除しながらあいさつや世間話ができる、コミュニケーションの手段でもあります。近所と程良い関係を保つため、お隣の前も一尺(30cm)程度を掃き清めます。
- 人のお宅を訪問する際、もてなしの準備で忙しい相手を思いやる気持ちから、先方の準備が整ってほんの一息ついた頃に到着するよう、約束の時間から“髪の毛一本”遅れて行くのが京都のマナーです。
- 嫁ぎ先から戻って来ないよう、お嫁入りの時には、堀川に架かる一条戻橋を渡ることがないようにします。
- 第百九十三回 秋の京菓子
- 第百九十二回 京都の植物
- 第百九十一回 京都の風習
- 第百九十回 幻の巨椋池(おぐらいけ)
- 第百八十九回 京都と魚
- 第百八十八回 京都とお花見
- 第百八十七回 京の歌枕(うたまくら)の地
- 第百八十六回 京都の地ソース
- 第百八十五回 『源氏物語』ゆかりの地
- 第百八十四回 京の煤払(すすはら)い
- 第百八十三回 京都の坪庭(つぼにわ)
- 第百八十二回 どこまで分かる?京ことば
- 第百八十一回 京都の中華料理
- 第百八十回 琵琶湖疏水と京都
- 第百七十九回 厄除けの祭礼とお菓子
- 第百七十八回 京都と徳川家
- 第百七十七回 京の有職文様(ゆうそくもんよう)
- 第百七十六回 大念仏狂言(だいねんぶつきょうげん)
- 第百七十五回 京表具(きょうひょうぐ)
- 第百七十四回 京の難読地名
- 第百七十三回 京の縁日
- 第百七十二回 京の冬至(とうじ)と柚子(ゆず)
- 第百七十一回 京都の通称寺
- 第百七十回 京都とキリスト教
- 第百六十九回 京都の札所(ふだしょ)巡り
- 第百六十八回 お精霊(しょらい)さんのお供え
- 第百六十七回 京の城下町 伏見
- 第百六十六回 京の竹
- 第百六十五回 子供の行事・儀式
- 第百六十四回 文豪と京の味
- 第百六十三回 普茶(ふちゃ)料理
- 第百六十二回 京都のフォークソング
- 第百六十一回 京と虎、寅
- 第百六十回 御火焚祭
- 第百五十九回 鴨川の橋
- 第百五十八回 陰陽師(おんみょうじ)
- 第百五十七回 京都とスポーツ
- 第百五十六回 貴族の別荘地・伏見
- 第百五十五回 京都の喫茶店
- 第百五十四回 京の刃物
- 第百五十三回 京都の南蛮菓子
- 第百五十二回 京の社家(しゃけ)
- 第百五十一回 京都にゆかりのある言葉
- 第百五十回 京のお雑煮
- 第百四十九回 京の牛肉文化
- 第百四十八回 京の雲龍図(うんりゅうず)
- 第百四十七回 明治の京都画壇
- 第百四十六回 京の名所図会(めいしょずえ)
- 第百四十五回 ヴォーリズ建築
- 第百四十四回 島原の太夫(たゆう)
- 第百四十三回 京の人形
- 第百四十二回 京の社寺と動物
- 第百四十一回 鳥居(とりい)
- 第百四十回 冬の食べ物
- 第百三十九回 能・狂言と京都
- 第百三十八回 京都と様々な物の供養
- 第百三十六回 京都とビール
- 第百三十五回 京都と鬼門(きもん)
- 第百三十四回 精進料理
- 第百三十三回 明治時代の京の町
- 第百三十二回 皇室ゆかりの建物
- 第百三十一回 京の調味料
- 第百三十回 高瀬川
- 第百二十九回 蹴鞠
- 第百二十八回 歌舞伎
- 第百二十七回 京都に残るお屋敷
- 第百二十六回 京の仏像 [スペシャル版]
- 第百二十五回 京の学校
- 第百二十四回 京の六地蔵めぐり
- 第百二十三回 京の七不思議<通り編>
- 第百二十二回 京都とフランス
- 第百二十一回 京の石仏
- 第百二十回 京の襖絵(ふすまえ)
- 第百十九回 生き物由来の地名
- 第百十八回 京都の路面電車
- 第百十七回 神様への願いを込めて奉納
- 第百十六回 京の歴食
- 第百十五回 曲水の宴
- 第百十四回 大政奉還(たいせいほうかん)
- 第百十三回 パンと京都
- 第百十二回 京に伝わる恋物語
- 第百十一回 鵜飼(うかい)
- 第百十回 扇子(せんす)
- 第百九回 京の社寺と山
- 第百八回 春の京菓子
- 第百七回 幻の京都
- 第百六回 京の家紋
- 第百五回 京の門前菓子
- 第百四回 京の通り名
- 第百三回 御土居(おどい)
- 第百二回 文学に描かれた京都
- 第百一回 重陽(ちょうよう)の節句
- 第百回 夏の京野菜
- 第九十九回 若冲と近世日本画
- 第九十八回 京の鍾馗さん
- 第九十七回 言いまわし・ことわざ
- 第九十六回 京の仏師
- 第九十五回 鴨川
- 第九十四回 京の梅
- 第九十三回 ご朱印
- 第九十二回 京の冬の食習慣
- 第九十一回 京の庭園
- 第九十回 琳派(りんぱ)
- 第八十九回 京の麩(ふ)
- 第八十八回 妖怪紀行
- 第八十七回 夏の京菓子
- 第八十六回 小野小町(おののこまち)と一族
- 第八十五回 新選組
- 第八十四回 京のお弁当
- 第八十三回 京都の湯
- 第八十二回 京の禅寺
- 第八十一回 京の落語
- 第八十回 義士ゆかりの地・山科
- 第七十九回 京の紅葉
- 第七十八回 京の漫画
- 第七十七回 京の井戸
- 第七十六回 京のお地蔵さん
- 第七十五回 京の名僧
- 第七十四回 京の別邸
- 第七十三回 糺(ただす)の森
- 第七十二回 京舞
- 第七十一回 香道
- 第七十回 天神さん
- 第六十九回 平安京
- 第六十八回 冬の京野菜
- 第六十七回 茶の湯(茶道)
- 第六十六回 京の女流文学
- 第六十五回 京の銭湯
- 第六十四回 京の離宮
- 第六十三回 京の町名
- 第六十二回 能・狂言
- 第六十一回 京の伝説
- 第六十回 京狩野派
- 第五十九回 京寿司
- 第五十八回 京のしきたり
- 第五十七回 百人一首
- 第五十六回 京の年末
- 第五十五回 いけばな
- 第五十四回 京の城
- 第五十三回 観月行事
- 第五十二回 京の塔
- 第五十一回 錦市場
- 第五十回 京の暖簾
- 第四十九回 大原女
- 第四十八回 京友禅
- 第四十七回 京のひな祭り
- 第四十六回 京料理
- 第四十五回 京の町家〈内観編〉
- 第四十四回 京の町家〈外観編〉
- 第四十三回 京都と映画
- 第四十二回 京の門
- 第四十一回 おばんざい
- 第四十回 京の焼きもの
- 第三十九回 京の七不思議
- 第三十八回 京の作庭家
- 第三十七回 室町文化
- 第三十六回 京都御所
- 第三十五回 京の通り
- 第三十四回 節分祭
- 第三十三回 京の七福神
- 第三十二回 京の狛犬
- 第三十一回 伏見の酒
- 第三十回 京ことば
- 第二十九回 京の文明開化
- 第二十八回 京の魔界
- 第二十七回 京の納涼床
- 第二十六回 夏越祓
- 第二十五回 葵祭
- 第二十四回 京の絵師
- 第二十三回 涅槃会
- 第二十二回 京のお漬物
- 第二十一回 京の幕末
- 第二十回 京の梵鐘
- 第十九回 京のお豆腐
- 第十八回 時代祭
- 第十七回 京の近代建築
- 第十六回 京のお盆行事
- 第十五回 京野菜
- 第十四回 京都の路地
- 第十三回 宇治茶
- 第十一回 京菓子の歴史
- 第十回 枯山水庭園の眺め方
- 第九回 京阪沿線 初詣ガイド
- 第八回 顔見世を楽しむ
- 第七回 特別拝観の楽しみ方
- 第六回 京都の着物
- 第五回 仏像の見方
- 第四回 送り火の神秘
- 第三回 祇園祭の楽しみ方
- 第二回 京の名水めぐり
- 第一回 池泉庭園の眺め方