- 其の一、
- 平安時代、職人によって年中行事や四季折々の京菓子が作られました
- 其の二、
- 江戸時代、茶の湯が盛んになり、創作の京菓子が発展しました
- 其の三、
- 寒天など、涼しさを連想させる材料が使われます
四季と京菓子の歴史
平安時代、宮廷に献上される和菓子は神と人をつなぐものとして神前に供えられていました。京都で作られた、年中行事や四季を表現したお菓子などを総称して京菓子と呼び、色彩や形はもちろん、器や盛り付けにまで細かい決まりがありました。江戸時代には民衆の間で茶の湯が広がり、茶会で振る舞う京菓子が飛躍的に発展。季節を表現した職人による京菓子が一般的になりました。
知恵から生まれた夏の京菓子
京都は盆地のため、夏の蒸し暑さは厳しく、昔から京都の人は暑さをしのぐために、生活の中で様々な知恵を絞ってきました。京菓子もそのひとつで、冷たい水や氷を連想させるものとして、職人は透明感のある寒天や葛(くず)粉、わらび粉といった材料を使い涼を感じさせる工夫をしました。中でもよく使われている寒天は、奈良時代から食べていたトコロテンが元になります。1685(貞享2)年の冬、伏見の旅館の主人が外に捨て時間が経った乾物のトコロテンを再び利用したところ、臭みの無い上質な味のものになったそうです。これが後に寒天と呼ばれ、江戸時代後期から菓子の材料として広まりました。
鎌倉時代、中国・宋から禅僧が点心として葛菓子を持ち帰ったのが始まり。室町時代中期には麺状のくずきりが作られていたそうです。
創業約300年、祇園に本店を構える鍵善良房は、昭和初期に社寺やお茶屋などへの出前で評判を呼び、くずきりの名店として知られています。
ワラビの根から取れるわらび粉を使った菓子。京都では古くから、こしあんを入れた丸い形が親しまれてきました。
花街にある、創業約110年の先斗町駿河屋では、昔ながらの作り方を守り、プルッとしてとろけるような上品な食感が特徴。土地柄、舞妓さんや芸妓さんのお客さんが多いのも京都ならではです。
醍醐天皇の好物であったため、食べ物では珍しく太夫(たゆう)の地位が与えられたと伝わります。このことから別名「岡太夫」と呼ばれます。
江戸時代中期は葛粉や小麦粉を材料としていましたが、後に栄養価の高い寒天を使うようになりました。冬に食べる風習でしたが、冷蔵技術により夏の菓子の定番になりました。
京都では清涼感ある竹を器に見立てた形状が多く、1917(大正6)年創業の二條若狭屋では毎日届く京都の青竹を使っています。
黄檗宗の隠元禅師が「寒晒(かんざら)しのトコロテン」の意味から寒天と名付けたそうです
清流を泳ぐ鮎の姿を模した、京都発祥の菓子。求肥(ぎゅうひ)を包んだ中国の調布(ちょうふ)菓子が原型とされ、アユ漁が解禁になる6月に販売されます。
各地ではあんを包みますが、1946(昭和21)年創業の永楽屋をはじめ京都では主に求肥のみです。
日持ちしないため、昔から生麩を食べる習慣があった京都で作られ、食べられていた菓子。
江戸時代後期創業の京生麩専門店・麩嘉では、生麩にのりを練り込んで京都の熊笹で包み、爽やかな磯の味と涼やかな笹の香りが清涼感を引き立てます。
小豆をのせた三角形のういろう。半年の息災を祈る夏越の祓が行われる、旧暦で夏の最後の月に当たる6月に食べる風習があります。
水無月の形と色は、夏に冷たいものを口にできなかった民衆が、氷のかけらに見立てて作ったとされています
夏の土用の入りの日に食べるあんころ餅。精が付いて暑さが乗り切れるとされ、別名「土用餅」と言います。
菊水鉾は、菊の露のしたたりを飲んで長寿を保ったという中国の故事にちなんで作られました。祇園祭のお茶席で、菊水鉾へ献上する菓子として京菓子店・亀廣永によって考案されたのがしたたりです。黒砂糖と寒天を主にした琥珀色のようかんで、八坂神社の宮司が菓銘を付けました。
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- 第五十回 京の暖簾
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- 第四十八回 京友禅
- 第四十七回 京のひな祭り
- 第四十六回 京料理
- 第四十五回 京の町家〈内観編〉
- 第四十四回 京の町家〈外観編〉
- 第四十三回 京都と映画
- 第四十二回 京の門
- 第四十一回 おばんざい
- 第四十回 京の焼きもの
- 第三十九回 京の七不思議
- 第三十八回 京の作庭家
- 第三十七回 室町文化
- 第三十六回 京都御所
- 第三十五回 京の通り
- 第三十四回 節分祭
- 第三十三回 京の七福神
- 第三十二回 京の狛犬
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- 第三十回 京ことば
- 第二十九回 京の文明開化
- 第二十八回 京の魔界
- 第二十七回 京の納涼床
- 第二十六回 夏越祓
- 第二十五回 葵祭
- 第二十四回 京の絵師
- 第二十三回 涅槃会
- 第二十二回 京のお漬物
- 第二十一回 京の幕末
- 第二十回 京の梵鐘
- 第十九回 京のお豆腐
- 第十八回 時代祭
- 第十七回 京の近代建築
- 第十六回 京のお盆行事
- 第十五回 京野菜
- 第十四回 京都の路地
- 第十三回 宇治茶
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- 第十回 枯山水庭園の眺め方
- 第九回 京阪沿線 初詣ガイド
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- 第七回 特別拝観の楽しみ方
- 第六回 京都の着物
- 第五回 仏像の見方
- 第四回 送り火の神秘
- 第三回 祇園祭の楽しみ方
- 第二回 京の名水めぐり
- 第一回 池泉庭園の眺め方