京都ツウのススメ

第七十八回 京の漫画

[京都から全国へ漫画の原点(ルーツ)] 国宝「鳥獣人物戯画」を中心に、京都発祥の漫画についてらくたびの山村純也さんが解説します。

京の漫画の基礎知識

其の一、
平安時代、漫画のルーツと言われる絵巻物「鳥獣人物戯画(ちょうじゅうじんぶつぎが)」が誕生しました
其の二、
江戸時代の「鳥羽絵(とばえ)」など、娯楽としての絵画が後に漫画と呼ばれます
其の三、
明治時代に漫画が流行し、著名な絵師たちも漫画を描きました

漫画の成り立ち

京都・高山寺(こうさんじ)が所蔵する絵巻物「鳥獣人物戯画」は平安時代末期から鎌倉時代に描かれ、日本最古の漫画とされています。戯画とは世相を映し、戯れに描いた絵のこと。作者と言われる鳥羽僧正(とばそうじょう)の名は、江戸時代に関西から広まって流行した、日常生活を題材とする滑稽(こっけい)画の総称「鳥羽絵」としても残っています。一方「漫画」という呼称は、浮世絵師・山東京伝(さんとうきょうでん)が1798(寛政10)年発行の絵本の序文で“気の向くままに(絵を)描く”という意味で使ったのが初めとされています。その後「○○漫画」という書名の戯画集がいくつも出版されるようになり、江戸時代後期から明治時代前期にかけて全15編が発行された葛飾北斎の「北斎漫画」は大好評を博しました。

京都が発信する漫画文化

「鳥獣人物戯画」に始まる漫画文化。発祥の地・京都では現在も様々な取り組みが行われています。漫画について学べる環境が整った大学があるほか、日本初の漫画文化施設・京都国際マンガミュージアムも開設されました。「京都国際マンガ・アニメフェア」などのイベントも行われ、街全体で漫画文化を盛り上げています。

日本最古の漫画 鳥獣人物戯画をひも解く

京都・高山寺に伝わる絵巻物「鳥獣人物戯画」は全4巻からなり、平安時代後期に甲・乙巻、鎌倉時代に丙・丁巻が制作されました。各巻のサイズは幅約30㎝で長さ約11mにも及びます。甲巻には擬人化された動物たちの物語性のある動き、乙巻は空想上や実在する動物の生態図、丙巻は前半に人物、後半に動物たちの遊ぶさま、丁巻は勝負事や行事などの人間社会が描かれています。セリフや解説文は全くなく、絵だけで物語を楽しめます。

ココがツウ 作者には高僧・鳥羽僧正や絵仏師・定智(じょうち)などの名前が挙がっているものの、誰が何のために描いたのかは現在も不明です

見どころ

甲巻では、動物たちが遊び戯れる様子が擬人化して描かれています。水遊び、相撲、射的などに興じるウサギやカエル、サルたちの躍動感あふれる動きや生き生きとした表情に注目!

ココがツウ 絵巻物は右から左へ見ていきます。冒頭の場面から時間をさかのぼって物語る手法が取られています

国宝 鳥獣人物戯画(甲巻)〈部分〉 高山寺蔵

  • 解説3
    カエルが倒れている場所に、動物たちが集まっています。ウサギはキツネの腰に付いたオモダカの葉が気になるようですが、結末は描かれていないので、サルとキツネのどちらが犯人なのかはわかりません。
  • 解説2
    カエルが仰向けで気絶しています。通りかかったウサギが声をかけますが、反応がありません。また、そばに落ちているオモダカの葉は、事件と解くカギとして描かれているようです。
  • 解説1
    いたずら好きなサルが笑いながら逃げています。それをススキの刀をかざして追いかけるウサギとカエル。一体、何があったのでしょうか。
イベント紹介

京都国立博物館 「国宝 鳥獣戯画と高山寺」 ●2014年10/7(火)~11/24(休・月)

漫画家デビューをした名絵師たち

葛飾北斎の北斎漫画

江戸時代後期に活躍した浮世絵師。「北斎漫画」は1814(文化11)年に初編発表、全15編が発行されました。人物、風俗、動植物、妖怪変化など4,000点が描かれ、モネやゴッホなど印象派の画家たちにも影響を与えました。

国立国会図書館蔵
尾形光琳の光琳漫画

京都の呉服店に生まれ、40歳で日本画の絵師となった光琳。1817(文化14)年に、いくつもの戯画風の絵が描かれた作品集「光琳漫画」が出版されました。書名には当時流行していた「漫画」が付けられました。

ココがツウ 現在のコミックとは違いストーリーはなく、四季の植物などを墨絵で描いた、いわゆる画集のようなものでした

月岡芳年の芳年漫画

幕末から明治時代にかけて活躍、最後の浮世絵師と呼ばれています。1885(明治18)年発行の「芳年漫画」に見られる動きの瞬間を切り取って描く技法には、現代の漫画に通じるものがあることから、現代漫画の先駆者とも言われています。

国立国会図書館蔵
制作:2014年9月
バックナンバー
第百八十七回 京の歌枕(うたまくら)の地
第百八十六回 京都の地ソース
第百八十五回 『源氏物語』ゆかりの地
第百八十四回 京の煤払(すすはら)い
第百八十三回 京都の坪庭(つぼにわ)
第百八十二回 どこまで分かる?京ことば
第百八十一回 京都の中華料理
第百八十回 琵琶湖疏水と京都
第百七十九回 厄除けの祭礼とお菓子
第百七十八回 京都と徳川家
第百七十七回 京の有職文様(ゆうそくもんよう)
第百七十六回 大念仏狂言(だいねんぶつきょうげん)
第百七十五回 京表具(きょうひょうぐ)
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第百七十三回 京の縁日
第百七十二回 京の冬至(とうじ)と柚子(ゆず)
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第百七十回 京都とキリスト教
第百六十九回 京都の札所(ふだしょ)巡り
第百六十八回 お精霊(しょらい)さんのお供え
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第百六十六回 京の竹
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第百六十三回 普茶(ふちゃ)料理
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第百六十回 御火焚祭
第百五十九回 鴨川の橋
第百五十八回 陰陽師(おんみょうじ)
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第百五十六回 貴族の別荘地・伏見
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第百四十九回 京の牛肉文化
第百四十八回 京の雲龍図(うんりゅうず)
第百四十七回 明治の京都画壇
第百四十六回 京の名所図会(めいしょずえ)
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第百四十二回 京の社寺と動物
第百四十一回 鳥居(とりい)
第百四十回 冬の食べ物
第百三十九回 能・狂言と京都
第百三十八回 京都と様々な物の供養
第百三十六回 京都とビール
第百三十五回 京都と鬼門(きもん)
第百三十四回 精進料理
第百三十三回 明治時代の京の町
第百三十二回 皇室ゆかりの建物
第百三十一回 京の調味料
第百三十回 高瀬川
第百二十九回 蹴鞠
第百二十八回 歌舞伎
第百二十七回 京都に残るお屋敷
第百二十六回 京の仏像 [スペシャル版]
第百二十五回 京の学校
第百二十四回 京の六地蔵めぐり
第百二十三回 京の七不思議<通り編>
第百二十二回 京都とフランス
第百二十一回 京の石仏
第百二十回 京の襖絵(ふすまえ)
第百十九回 生き物由来の地名
第百十八回 京都の路面電車
第百十七回 神様への願いを込めて奉納
第百十六回 京の歴食
第百十五回 曲水の宴
第百十四回 大政奉還(たいせいほうかん)
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第百十二回 京に伝わる恋物語
第百十一回 鵜飼(うかい)
第百十回 扇子(せんす)
第百九回 京の社寺と山
第百八回 春の京菓子
第百七回 幻の京都
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第百五回 京の門前菓子
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第百三回 御土居(おどい)
第百二回 文学に描かれた京都
第百一回 重陽(ちょうよう)の節句
第百回 夏の京野菜
第九十九回 若冲と近世日本画
第九十八回 京の鍾馗さん
第九十七回 言いまわし・ことわざ
第九十六回 京の仏師
第九十五回 鴨川
第九十四回 京の梅
第九十三回 ご朱印
第九十二回 京の冬の食習慣
第九十一回 京の庭園
第九十回 琳派(りんぱ)
第八十九回 京の麩(ふ)
第八十八回 妖怪紀行
第八十七回 夏の京菓子
第八十六回 小野小町(おののこまち)と一族
第八十五回 新選組
第八十四回 京のお弁当
第八十三回 京都の湯
第八十二回 京の禅寺
第八十一回 京の落語
第八十回 義士ゆかりの地・山科
第七十九回 京の紅葉
第七十八回 京の漫画
第七十七回 京の井戸
第七十六回 京のお地蔵さん
第七十五回 京の名僧
第七十四回 京の別邸
第七十三回 糺(ただす)の森
第七十二回 京舞
第七十一回 香道
第七十回 天神さん
第六十九回 平安京
第六十八回 冬の京野菜
第六十七回 茶の湯(茶道)
第六十六回 京の女流文学
第六十五回 京の銭湯
第六十四回 京の離宮
第六十三回 京の町名
第六十二回 能・狂言
第六十一回 京の伝説
第六十回 京狩野派
第五十九回 京寿司
第五十八回 京のしきたり
第五十七回 百人一首
第五十六回 京の年末
第五十五回 いけばな
第五十四回 京の城
第五十三回 観月行事
第五十二回 京の塔
第五十一回 錦市場
第五十回 京の暖簾
第四十九回 大原女
第四十八回 京友禅
第四十七回 京のひな祭り
第四十六回 京料理
第四十五回 京の町家〈内観編〉
第四十四回 京の町家〈外観編〉
第四十三回 京都と映画
第四十二回 京の門
第四十一回 おばんざい
第四十回 京の焼きもの
第三十九回 京の七不思議
第三十八回 京の作庭家
第三十七回 室町文化
第三十六回 京都御所
第三十五回 京の通り
第三十四回 節分祭
第三十三回 京の七福神
第三十二回 京の狛犬
第三十一回 伏見の酒
第三十回 京ことば
第二十九回 京の文明開化
第二十八回 京の魔界
第二十七回 京の納涼床
第二十六回 夏越祓
第二十五回 葵祭
第二十四回 京の絵師
第二十三回 涅槃会
第二十二回 京のお漬物
第二十一回 京の幕末
第二十回 京の梵鐘
第十九回 京のお豆腐
第十八回 時代祭
第十七回 京の近代建築
第十六回 京のお盆行事
第十五回 京野菜
第十四回 京都の路地
第十三回 宇治茶
第十一回 京菓子の歴史
第十回 枯山水庭園の眺め方
第九回 京阪沿線 初詣ガイド
第八回 顔見世を楽しむ
第七回 特別拝観の楽しみ方
第六回 京都の着物
第五回 仏像の見方
第四回 送り火の神秘
第三回 祇園祭の楽しみ方
第二回 京の名水めぐり
第一回 池泉庭園の眺め方
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