京都ツウのススメ

第五十九回 京寿司

[ハレの日を彩る京寿司]とっておきのごちそうとして多くの人から愛される京都の寿司。見目麗しく味わい深い京寿司について、らくたびの若村亮さんが解説します。

京寿司の基礎知識

其の一、
海から離れた京都では、鯖(さば)寿司など保存性の高い寿司が生まれました
其の二、
祇園祭の鱧(はも)寿司や舞妓さん向けの手まり寿司など、京都独自の寿司もあります
其の三、
華やかな京寿司は、ハレの日の定番メニューです

京寿司の特徴

寿司の原型は、魚を保存するために米を使って発酵させたもので、今と違って発酵した魚のみを食べていました。酢が作られるようになる安土桃山時代に酢飯を使用した寿司が登場すると、山に囲まれ海産物が手に入りにくい京都では、鯖寿司や箱寿司など、保存の利く調理方法が広まり、寿司文化は独自の発展を遂げました。また、朝廷が置かれた都らしく、洗練された彩り豊かな美しい姿も京寿司ならではです。

ハレの日の引き立て役

見た目も華やかな京寿司は、祭りや祝いの席など、ハレの日のごちそうとして欠かせないメニューです。家族や親戚が集まる際には、箱寿司やちらし寿司などの盛り合わせを囲んで過ごします。また、祇園祭の時期に登場する鱧寿司や、冬限定の蒸し寿司などは、京都の四季や風物を感じる味として親しまれています。舞妓さんが食べやすいひと口サイズの手まり寿司が登場したことも、花街から生まれた京都独自の寿司文化と言えるでしょう。

京都らしさが光る寿司

細やかな手間と時間をかけて作る京寿司をご紹介します。

美しい彩り

京都の太巻きはかんぴょうの色が薄いのが特徴で、黄色い卵に緑の三つ葉、薄茶色のかんぴょうと、彩りにもこだわって作られています。また、見た目も鮮やかなちらし寿司は、お祝い事に欠かせないメニューです。

じゃこや錦糸卵など、家庭で手に入る具材で作られたちらし寿司は、“お台所寿司”とも呼ばれます

太巻き

高い保存性

京寿司は、江戸前寿司に比べ、寿司飯に砂糖をたくさん使うことで保存性を高めています。また、関東では人肌が適温とされるシャリですが、京都ではしっかり冷ましてから使い、時間がたっても味が変わらない工夫がされています。

“ばら寿司”とも呼ばれる京都のちらし寿司には生ものはのせず、火を通したものやお酢で締めたものが盛られます

バラ寿司

巻き寿司(ココがツウ)

関東では細巻きがメジャーですが、関西では主に太巻きを指します。京都はお寺が多いため、仏事の際に精進巻きが配られる風習により定着したと考えられます。

下ボーダー
稲荷寿司(ココがツウ)

関東では五穀豊穣の象徴である俵型ですが、京都では三角形。これは稲荷神の使いであるキツネの顔や耳を、または稲荷山をイメージしているとも言われています。

下ボーダー
箱寿司(ココがツウ)

関西の名物・箱寿司。主にアナゴを使う大阪の箱寿司と違い、京都ではすりつぶした鱧を使います。卵やエビ、鯛、サワラを使ったものも一般的です。

下ボーダー
鯖寿司(ココがツウ)

若狭湾から塩をまぶして運び、京都へ着く頃にちょうど良い塩加減となった鯖を使って作られたのが鯖寿司のはじまり。その名残で今も、若狭と京都をつなぐ道を“鯖街道”と呼びます。

下ボーダー

ほかにもこんな「京寿司」が/かわいらしいひと口サイズ手まり寿司

手まり寿司

もともと小ぶりの寿司が主流の京都。中でも手まり寿司は、舞妓さんが大きく口を開けずに食べられるように作られたもの。漬物などを使い、京都らしさを味わうことができます。

蒸し寿司

蒸し寿司

味付けをしたシイタケ・かんぴょう・焼きアナゴなどを刻んで寿司飯に混ぜ、その上に錦糸卵をのせて蒸します。寒い時期に作られる、京都の冬の風物詩で、温かい(=ぬくい)ことから、“ぬく寿司”“ぬくめ寿司”とも呼ばれます。

オレンジ下ボーダー

制作:2013年2月
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第十回 枯山水庭園の眺め方
第九回 京阪沿線 初詣ガイド
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第六回 京都の着物
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第四回 送り火の神秘
第三回 祇園祭の楽しみ方
第二回 京の名水めぐり
第一回 池泉庭園の眺め方
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