京都ツウのススメ

第六十一回 京の伝説

[古都の歴史を語り継ぐ 京の伝説]京都のいたるところに隠されている逸話の数々。古の人々が紡ぎ出し、現代にも息づく京の伝説を、らくたびの森明子さんが解説します。

京の伝説の基礎知識

其の一、
京都には、語り継がれてきた多くの伝説が残されています
其の二、
能や狂言の演目に取り入れられたり、説話集に登場するものもあります
其の三、
歴史上の人物や動物、信仰に関するものが登場するのが特徴です

語り継がれる伝説

京都の長い歴史の中で起きた数々の事件や出来事。それらは、文字や紙が普及していなかった時代、想像や願いも織り交ぜながら、人々の口伝えで世間へ広まりました。そうして生まれた伝説の中には、能や狂言の題材や、民話を集めた『今昔物語集』などの説話集に取り入れられたものも多くあります。

京の伝説の特徴

京都の伝説には、歴史上の人物や今も残る地名が登場し、史学的な証言とも言えるものが多いのが特徴です。また、動物が登場し、不思議な現象が起きるというパターンも見られます。さらに、京都は比叡山延暦寺をはじめ仏教が盛んであったため、信仰に関する伝説も数知れません。受け継がれた伝説をひも解くことで、身近に隠れていた歴史や、宗教都市としての京都の新たな一面を垣間見ることができます。

都に息づく伝説と3つのキーワード

京都に数多く残る伝説を、「歴史上の人物」「信仰」「動物」のキーワードに沿って紹介します。

歴史上の人物

地ずり柳[六角堂]

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平安時代、妃との出会いを願っていた嵯峨天皇に、夢で「六角堂の柳の下を見よ」とのお告げがありました。行ってみると、枝が地面まで伸びた“地ずり柳”の下に絶世の美女がたたずんでおり、天皇は早速妃に迎えたとされます。この伝説から、六角堂は縁結びの名所として知られます。

ココがツウ

“地ずり柳”の2本の枝をおみくじで結びつけて願い事をすると、良縁に恵まれると言われています

地ずり柳
弁慶石

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三条京極に、弁慶が大切にしていた石が置かれていました。弁慶の死後、奥州(現・東北地方)へ移されましたが、弁慶が幼少期を過ごした京都に行きたいと石が騒ぎ出し、また周りでは熱病がはやり始め人々が弁慶のたたりだと恐れるようになったので、石は京都に戻されたとか。「この石に触ると火魔や病魔から逃れられる」「男の子が触ると力持ちになる」と言い伝えられています。

信仰

証拠の阿弥陀[勝林院]

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平安時代、大原にある勝林院で、法然と比叡山延暦寺の僧が念仏について議論を行った“大原問答”の際、法然が「念仏によって人々は救われる」と説いたところ、本尊の阿弥陀如来像が手から光明を放って法然を支持したと伝わります。このことから、本尊は「証拠の阿弥陀」と呼ばれるようになりました。

勝林院には、“大原問答”の時に法然が休んだとされる
「法然腰掛石」が残されています

ココがツウ
証拠の阿弥陀
こぬか薬師

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住職の夢枕に本尊の薬師如来像が立ち、「私の前に来れば、一切の病気を除いてやろう。来ぬか、来ぬか」と告げました。参拝者が祈ると、流行していた疫病がたちまち治ったと伝わります。

動物

相槌稲荷[合槌稲荷神社]

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名匠として名高い三条小鍛冶(こかじ)宗近は、朝廷から刀を造るよう命じられました。刀を交互に打つための優秀な相槌がいない宗近は、稲荷明神に祈願します。すると、稲荷神社の使者である狐が人に化けて現れ、相槌を務めました。そうして完成した刀は、「小狐丸」と名付けられたとされます。

ココがツウ

この伝説を題材として、おめでたい能の演目である
「小鍛冶」が生まれました

相槌稲荷
鬼門の猿[猿が辻]

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京都御所の北東角は猿が辻と呼ばれ、鬼門を守る木彫りの猿が置かれています。この猿は夜な夜な大声を出しては通行人にいたずらをするため、金網で閉じ込められていると言われます。

1六角堂

2弁慶石

2弁慶石

2弁慶石

2弁慶石

2弁慶石

制作:2013年4月
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