- 其の一、
- 足利尊氏によって京都に幕府が開かれた室町時代(14世紀半ば~16世紀半ば)の文化です
- 其の二、
- 北山文化と東山文化に大別され、公家文化と武家文化の融合が特徴です
- 其の三、
- 能・狂言、茶の湯、水墨画など、今に伝わる多くの伝統芸能・芸術が育まれました
室町文化の興り
鎌倉幕府を倒した足利尊氏は、1336(建武3/延元元)年、京都に室町幕府を開きました。地方から多くの武士が上洛し住むようになったことから、都と地方の文化が混交。それまでの優美で華やかな公家文化を、禅宗の影響を強く受けた質素で力強い武家文化が吸収する形で、特色ある新しい文化が育まれました。それが、今に伝わる“日本美”の原点と言われる室町文化です。
花開く室町文化
室町時代の文化は、初期の北山文化と中期の東山文化に大きく分けられます。この2つの文化をそれぞれ象徴する建物が、足利義満の別荘であった金閣寺(鹿苑寺)と足利義政が築いた山荘・銀閣寺(慈照寺)です。また、新しい住宅様式である書院造りをはじめ、枯山水庭園、能・狂言、茶の湯、生け花、水墨画など、日本を代表する様々な文化がこの時代に発展しました。日本人の美意識に多大な影響を与えた室町文化は、時を超えて今に受け継がれています。
足利義満の後押しで、観阿弥・世阿弥親子が神社の祭礼などで行われていた猿楽の能を「幽玄」の美意識を持った舞台芸術として大成。能との組み合わせによって発展した狂言は、風刺性の強い喜劇として庶民の人気を集めました。
室町時代前期の能役者。父・観阿弥とともに能を総合芸術として完成。神や幽霊が登場する「夢幻能」という様式を確立し、日本最古の能楽論『風姿花伝』を記しました。
足利義満の支援を受けた世阿弥は、義満の命を受け、しばしば金閣寺で能を舞いました
室町時代中期以降に誕生した新しい武家住宅の様式。「書院」とは居間兼書斎として用いた部屋で、東山文化の中で形式が整えられていきました。床の間・違い棚・付け書院などの座敷飾りを備えているのが特徴です。
足利義政の書斎で、銀閣寺東求堂(とうぐどう)にある「同仁斎」は現存する最古の書院で、
四畳半茶室の始まりとも言われています
水墨画は、鎌倉時代に禅宗とともに中国から伝わりました。北山文化では相国寺の画僧・如拙(じょせつ)、周文らが禅の精神を広める宗教画として確立。東山文化では雪舟が登場し、風景を描く「山水画」において日本独自の表現方法を確立しました。
室町時代後期の画僧。京都・相国寺で修行したのち、中国の明に渡って画を学びました。奥行きのある山水図で知られ、『天橋立図』などの傑作を残しました。
室町時代の水墨画は、「京都五山」(幕府が住職を任命する官寺)の寺として足利義満が建立した相国寺で発展。優れた画僧を多く輩出し、中央画壇として栄えました
茶の湯の起源は、東山文化に興った「わび茶」が始まりと言われています。わび茶とは茶に禅の精神を融合させ、四畳半以下の茶室を用いた簡素な茶の湯の形式で、村田珠光によって創始され、安土桃山時代の千利休によって大成されました。
室町時代中期の茶人。奈良に生まれ、元は僧侶であったと伝わります。上洛後、大徳寺の一休に学び、茶禅一味(茶道と禅の精神の統一)の境地に到達しました。
村田珠光は、茶の湯が人間の成長をもたらす心の道であるとする「心の文」という文章を残し、
茶の湯にはじめて禅の精神を取り入れました
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