京都ツウのススメ

第八十六回 小野小町(おののこまち)と一族

[京都で活躍した才能あふれる一族] 都が誕生する前の飛鳥時代より様々な分野で活躍した小野一族。中でも、女流歌人として有名な小野小町を中心に、一族ゆかりの地をらくたびの佐藤理菜子さんが案内します。

新選組の基礎知識

其の一、
小野一族は、飛鳥時代より京都の洛北と山科に住んでいたと伝わります
其の二、
小野小町をはじめ、一族からは才能豊かな人物が輩出されました
其の三、
様々な分野で活躍した人物が多く、京都の各所に伝説が残ります

歴史に残る小野一族

小野一族は飛鳥時代から平安時代にわたって活躍し、小野氏(おのうじ)とも言われ、孝昭(こうしょう)天皇の子・天足彦国押人命(あまたらしひこくにおしひとのみこと)が祖となります。
飛鳥時代の遣隋使・小野妹子(おののいもこ)や妹子の子であり天武天皇の朝廷に仕え、太政官兼刑部大郷(ぎょうぶだいごう)に任命された官吏・小野毛人(おののえみし)や奇才と呼ばれた官僚・小野篁(おののたかむら)など、一族は政治や文化の分野を中心に、歴史に名を残す人物を多く輩出しました。また、一族の中で最も有名とされるのが、絶世の美女と言われた小野小町。女流歌人として活躍する一方、その生涯は謎が多く、様々な逸話が残っています。

京都と小野一族のつながり

京都市左京区には、平安時代から小野郷(おのごう)と呼ばれる朝廷の領地があり、今も地名が残っています。京都の北東に位置するこの地には、都ができる前から小野一族が住んでいたとされ、ゆかりのある神社や遺跡などもあります。また、平安時代に入ると、滋賀県の領地から交通の便が良い山科へ勢力を広げました。山科は一族が栄えた場所のひとつと伝えられ、小町ゆかりの地も多く残ります。

【京都と小野一族の伝説】 京都の名所と深く関わりのある小野小町と小野篁を中心に、一族ゆかりの地を紹介します。

家系図

小野小町(おののこまち)(平安時代前期~900年頃)

絶世の美女とされながら生涯独身だった謎多き女性。歌人の才能を開花させ様々な歌を詠みました。篁の孫であったとも言われ霊力を使った逸話もあります。

補陀洛寺(ふだらくじ) 【左京区】

鞍馬街道の北にあり、通称・小町寺と言います。小町が実父の暮らした生家を訪ね、900(昌泰3)年4月1日にこの地で息絶えたという逸話が伝わります。敷地内には、供養塔や小町が井戸の水に映る年老いた自分の姿を見て嘆き悲しんだとされる井戸など、ゆかりの場所があります。

隨心院(ずいしんいん) 【山科区】

本堂の裏手には、小町に寄せられた千通の手紙が埋められていると伝わる小町文塚があります。薬医門の西側には、小町が宮廷を辞した後、晩年を過ごしたという邸宅があり、小町が朝夕に顔を洗った井戸が今も残っています。

隨心院(ずいしんいん)

能の間には、小町宛ての恋文を貼って造られた小町文張地蔵尊と、晩年の姿を写したとされる卒塔婆(そとば)小町像が安置されています

百夜(ももよ)通いとカヤの木

百夜(ももよ)通いとカヤの木

隨心院には、平安時代、深草少将が愛する小町のもとに百夜通うことを誓った「百夜通い」伝説にゆかりのあるカヤの木が残っています。小町はカヤの実を糸に綴ってその日数を数えていたそうですが、99日目の大雪の日に少将は凍死し、願いが叶いませんでした。そして菩提を弔うために、そのカヤの実をまいたと伝えられています。

小野篁(おののたかむら)(802~853年)

平安時代の官僚・学者・歌人と、各分野で活躍した人物。身長約190cmの大柄で、武芸にも優れ、自由奔放な性格だったと言われています。

六道珍皇寺 【東山区】

篁は閻魔(えんま)庁に務める役人であったとされ、昼は朝廷で、夜は閻魔庁で働いていたという伝説が残ります。本堂の庭には、冥界へ行くための井戸と、この世に戻ってくるための井戸があります。

六道珍皇寺

千本ゑんま堂 【上京区】

あの世とこの世を行き来する篁は、閻魔法王から亡き先祖をこの世へ迎える供養法「精霊迎え」を授かりました。そして法王の像を彫り、船岡山のふもとにお堂を建て安置したのが始まりです。観音堂には篁の像もあります。

小野妹子(生没年不詳)・毛人(?~677年)と三宅八幡宮 【左京区】

飛鳥時代、妹子は遣隋使として渡航のために筑紫(現北九州)に出向いた際に病気になり、宇佐八幡宮に祈願すると全快。帰国後、かつて、小野郷と呼ばれ、領地内だった現在の左京区上高野に八幡宮を移して三宅八幡宮を創建したとされています。

江戸時代、三宅八幡宮の東にある西明寺山で発見された、板石を組み合わせた土葬石室は小野毛人の墓と判明しました

小野妹子と六角堂 【中京区】

聖徳太子が創建したと伝わる六角堂は、華道家元・池坊が住職を務めており、その始祖は妹子とされます。遣隋使として大陸に渡った際、仏に花を捧げるのを目にした妹子は、太子の死後、菩提を弔うために出家し、晩年は毎日仏前に花を供えました。この日課は六角堂の住職が代々行う風習となり、生け花の発祥の地となりました。

本堂の北側は、太子が沐浴した池の跡とされ、その池のほとりにあった僧侶の住まいが池坊と呼ばれるようになりました

小野道風(みちかぜ)(894~966年)と道風(どうふう)神社 【北区】

篁の孫で能書家として秀でた才能を持っており、平安時代前期に日本独自の書道(和様書道)の基礎を築いた人物。道風を祭神とする道風神社の境内にある池の水をすずりに用いたとされ、その水を使って書くと上達すると伝わります。

制作:2015年6月
バックナンバー
第百八十七回 京の歌枕(うたまくら)の地
第百八十六回 京都の地ソース
第百八十五回 『源氏物語』ゆかりの地
第百八十四回 京の煤払(すすはら)い
第百八十三回 京都の坪庭(つぼにわ)
第百八十二回 どこまで分かる?京ことば
第百八十一回 京都の中華料理
第百八十回 琵琶湖疏水と京都
第百七十九回 厄除けの祭礼とお菓子
第百七十八回 京都と徳川家
第百七十七回 京の有職文様(ゆうそくもんよう)
第百七十六回 大念仏狂言(だいねんぶつきょうげん)
第百七十五回 京表具(きょうひょうぐ)
第百七十四回 京の難読地名
第百七十三回 京の縁日
第百七十二回 京の冬至(とうじ)と柚子(ゆず)
第百七十一回 京都の通称寺
第百七十回 京都とキリスト教
第百六十九回 京都の札所(ふだしょ)巡り
第百六十八回 お精霊(しょらい)さんのお供え
第百六十七回 京の城下町 伏見
第百六十六回 京の竹
第百六十五回 子供の行事・儀式
第百六十四回 文豪と京の味
第百六十三回 普茶(ふちゃ)料理
第百六十二回 京都のフォークソング
第百六十一回 京と虎、寅
第百六十回 御火焚祭
第百五十九回 鴨川の橋
第百五十八回 陰陽師(おんみょうじ)
第百五十七回 京都とスポーツ
第百五十六回 貴族の別荘地・伏見
第百五十五回 京都の喫茶店
第百五十四回 京の刃物
第百五十三回 京都の南蛮菓子
第百五十二回 京の社家(しゃけ)
第百五十一回 京都にゆかりのある言葉
第百五十回 京のお雑煮
第百四十九回 京の牛肉文化
第百四十八回 京の雲龍図(うんりゅうず)
第百四十七回 明治の京都画壇
第百四十六回 京の名所図会(めいしょずえ)
第百四十五回 ヴォーリズ建築
第百四十四回 島原の太夫(たゆう)
第百四十三回 京の人形
第百四十二回 京の社寺と動物
第百四十一回 鳥居(とりい)
第百四十回 冬の食べ物
第百三十九回 能・狂言と京都
第百三十八回 京都と様々な物の供養
第百三十六回 京都とビール
第百三十五回 京都と鬼門(きもん)
第百三十四回 精進料理
第百三十三回 明治時代の京の町
第百三十二回 皇室ゆかりの建物
第百三十一回 京の調味料
第百三十回 高瀬川
第百二十九回 蹴鞠
第百二十八回 歌舞伎
第百二十七回 京都に残るお屋敷
第百二十六回 京の仏像 [スペシャル版]
第百二十五回 京の学校
第百二十四回 京の六地蔵めぐり
第百二十三回 京の七不思議<通り編>
第百二十二回 京都とフランス
第百二十一回 京の石仏
第百二十回 京の襖絵(ふすまえ)
第百十九回 生き物由来の地名
第百十八回 京都の路面電車
第百十七回 神様への願いを込めて奉納
第百十六回 京の歴食
第百十五回 曲水の宴
第百十四回 大政奉還(たいせいほうかん)
第百十三回 パンと京都
第百十二回 京に伝わる恋物語
第百十一回 鵜飼(うかい)
第百十回 扇子(せんす)
第百九回 京の社寺と山
第百八回 春の京菓子
第百七回 幻の京都
第百六回 京の家紋
第百五回 京の門前菓子
第百四回 京の通り名
第百三回 御土居(おどい)
第百二回 文学に描かれた京都
第百一回 重陽(ちょうよう)の節句
第百回 夏の京野菜
第九十九回 若冲と近世日本画
第九十八回 京の鍾馗さん
第九十七回 言いまわし・ことわざ
第九十六回 京の仏師
第九十五回 鴨川
第九十四回 京の梅
第九十三回 ご朱印
第九十二回 京の冬の食習慣
第九十一回 京の庭園
第九十回 琳派(りんぱ)
第八十九回 京の麩(ふ)
第八十八回 妖怪紀行
第八十七回 夏の京菓子
第八十六回 小野小町(おののこまち)と一族
第八十五回 新選組
第八十四回 京のお弁当
第八十三回 京都の湯
第八十二回 京の禅寺
第八十一回 京の落語
第八十回 義士ゆかりの地・山科
第七十九回 京の紅葉
第七十八回 京の漫画
第七十七回 京の井戸
第七十六回 京のお地蔵さん
第七十五回 京の名僧
第七十四回 京の別邸
第七十三回 糺(ただす)の森
第七十二回 京舞
第七十一回 香道
第七十回 天神さん
第六十九回 平安京
第六十八回 冬の京野菜
第六十七回 茶の湯(茶道)
第六十六回 京の女流文学
第六十五回 京の銭湯
第六十四回 京の離宮
第六十三回 京の町名
第六十二回 能・狂言
第六十一回 京の伝説
第六十回 京狩野派
第五十九回 京寿司
第五十八回 京のしきたり
第五十七回 百人一首
第五十六回 京の年末
第五十五回 いけばな
第五十四回 京の城
第五十三回 観月行事
第五十二回 京の塔
第五十一回 錦市場
第五十回 京の暖簾
第四十九回 大原女
第四十八回 京友禅
第四十七回 京のひな祭り
第四十六回 京料理
第四十五回 京の町家〈内観編〉
第四十四回 京の町家〈外観編〉
第四十三回 京都と映画
第四十二回 京の門
第四十一回 おばんざい
第四十回 京の焼きもの
第三十九回 京の七不思議
第三十八回 京の作庭家
第三十七回 室町文化
第三十六回 京都御所
第三十五回 京の通り
第三十四回 節分祭
第三十三回 京の七福神
第三十二回 京の狛犬
第三十一回 伏見の酒
第三十回 京ことば
第二十九回 京の文明開化
第二十八回 京の魔界
第二十七回 京の納涼床
第二十六回 夏越祓
第二十五回 葵祭
第二十四回 京の絵師
第二十三回 涅槃会
第二十二回 京のお漬物
第二十一回 京の幕末
第二十回 京の梵鐘
第十九回 京のお豆腐
第十八回 時代祭
第十七回 京の近代建築
第十六回 京のお盆行事
第十五回 京野菜
第十四回 京都の路地
第十三回 宇治茶
第十一回 京菓子の歴史
第十回 枯山水庭園の眺め方
第九回 京阪沿線 初詣ガイド
第八回 顔見世を楽しむ
第七回 特別拝観の楽しみ方
第六回 京都の着物
第五回 仏像の見方
第四回 送り火の神秘
第三回 祇園祭の楽しみ方
第二回 京の名水めぐり
第一回 池泉庭園の眺め方
  • おすすめ!
  • おでかけナビ
  • 京阪沿線って?
  • K PRESSプレゼント
  • ぶらり街道めぐり
  • 京阪・文化フォーラム
  • 京阪グループおトク情報
  • 他社線から京阪電車へ
  • 京阪グループ沿線の遠足・社会見学施設のご案内
  • ひらかたパーク
  • 京阪グループのホテル・レジャー予約
  • 比叡山へいこう!
  • アートエリア ビーワン

ページの先頭へ