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京都ツウのススメ

第百八十二回 どこまで分かる?京ことば

黒川翠山『新京極』(一部)(昭和11年)「京都府立京都学・歴彩館 京の記憶アーカイブ」より

京の暮らしと京ことば宮中で使われていた言葉や、商家や花街などで話されていた言葉から生まれた京ことばについて「らくたび」の谷口真由美さんが紹介します。

基礎知識

其の一、

昔から京都の人々が使ってきた言葉を、「京ことば」と言います

其の二、

宮中や庶民の間で使われた言葉から生まれました

其の三、

京都の暮らしぶりがうかがえる言葉もあります

京都で生まれた様々な言葉が融合

古くからの京都の市街地で話されてきた言葉を京ことばと言います。その源流は、呉服商が栄えた室町通り界わいの商家で使われた『中京ことば』や、西陣織の職人が使った『職人ことば』、祇園で使われた『花街ことば』など、職業や住む場所により分類される『町方ことば』にあると言われます。また宮中の女官の中で使用された『御所ことば』も、武家や商家、そして一般の人々に広まるようになりました。これらが融合して出来上がったものを京ことばと言います。

「お」や「さん」が付くのも京都らしさ

京ことばには、食べ物や社寺などの頭に「お」、最後に「さん」を付けた丁寧な表現や、お粥(かゆ)を「おかい」と言うような音声が変化する傾向も見られます。また、『御所ことば』として生まれた「おひや」のように今では関西一円に広がった言葉や、「七条(ひっちょう)」のように高齢者層を中心に使われているものも。こうした京ことばを、様々な角度から紹介します。

京ことばあれこれ

京ことばは、『御所ことば』に由来し一般に広く行き渡ったものや、
『花街ことば』のように特定の場面で使われる言葉など様々なものがあります。

宮中で使われていた『御所ことば』が由来の言葉

御所に仕えた女官が使っていたことから『女房ことば』とも言われ、京都から他の地域へ伝わって定着した言葉もあります。

◎頭に「お」を付けて丁寧に
  • おひや]・・・・ 水
  • おしたじ]・・・ しょう油
  • おみあし]・・・ 足
  • おまわり]・・・ おかず
◎語尾に「もじ」を付けて遠回しに表現

現代ではあまり見られない古風な表現です。単語 の頭の音節に「もじ」という言葉を付けたもので、 単語を直接言わず遠回しに表現しました。

  • すもじ]・・・ 寿司
  • かもじ]・・・ 髪・つけ毛
  • くもじ]・・・ 茎・漬物

ここがツウ

江戸時代、女性が身に付けるべき教養などをまとめた庶民向けの書物には、項目のひとつとして『女房ことば』が収録されました

商家の食の言葉

商家の食の習わしの中でも、京ことばが使われています。

  • しぶう こぶう]・・・ 質素に倹約して

    商家では毎月決まった日に食べる料理があります。月始めは、渋味のあるニシンと昆布で作る「ニシンと昆布の煮付け」という質素な献立で、「今月もしぶうこぶう過ごしましょう」と食しました。

商家の食の言葉

ここがツウ

京ことばで「炊いたん」は煮物、「おあげ」は油揚げ。商家では毎月8日に、アラメ(海藻の一種)と油揚げで作る「おあげとあらめの炊いたん」を食べる習わしもありました

挨拶もいろいろ

京ことばを使った挨拶には、いろいろな意味が込められています。

  • おはようおかえり] ・・・

    「無事に早く帰ってきてください」の意味。家族を見送る時など普段の暮らしの中で使われます。

  • おきばりやす] ・・・

    花街で芸妓・舞妓を送り出す際の言葉。「おはようおかえり」では商売にならないため、「がんばって」という意味のこの言葉を使います。

  • おことうさんどす] ・・・

    花街や商家で、年末の挨拶回りをする際に聞かれます。「お事多さんどす」と書き、「年末になり何かと忙しくなりましたね」という意味の言葉です。

挨拶もいろいろ

外出の際、ご近所さんに「おでかけどすか?」と聞かれたら、具体的に行き先を言わず「ちょっと、そこまで」と答えます。これが互いに深入りをしない京都ならではの距離感。「そうどすか、気ぃつけて」と送り出してもらえます。

花街で使われる言葉

祇園などでは、芸妓・舞妓や行事などに関する花街特有の言葉があります。

  • おはなに行く]・・・

    お座敷に出る

  • 男衆(おとこし)]・・・

    着付けなど身の回りの世話をする男性

  • おばけ]・・・

    節分に芸妓・舞妓がグループで仮装してお座敷を回る行事

花街で使われる言葉

芸妓・舞妓は、生活の場である置屋の女将を「おかあさん」、また先輩の芸妓・舞妓を「おねえさん」と呼びます。家族のような関係の中で芸事などを身に付けます。

「さん」を付ける言葉

『御所ことば』と『町方ことば』の両方に見られ、対象となるのは、食べ物や身の回りのもの、自然や社寺など様々。敬う気持ちや、親しさが込められているようです。

  • お豆さん]・・・ 豆
  • お日(ひ)いさん]・・・ 太陽
  • おくどさん]・・・ かまど
  • 天神さん]・・・ 北野天満宮
  • くろ谷さん]・・・ 金戒光明寺

「さん」を付ける言葉

京ことばならではの発音

発音にも京ことば特有のものがあります。

◎語末や語中の母音が短くなるもの
  • さんじょ]・・・三条
  • ごこまち]・・・御幸町
◎「さ行」が「は行」に変化するもの
  • ひちじょう・ひっちょう]・・・ 七条(しちじょう)
  • ひつこい]・・・ しつこい
◎「ゆ」の音が「い」に変化するもの
  • いがむ]・・・ ゆがむ
  • おかい]・・・ お粥

ここがツウ

1877(明治10)年に開業した七条停車場(現JR京都駅)は、京都の人から「ひっちょのステンショ」(七条のステーション)という愛称で親しまれました

制作:2023年10月
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