- 其の一、
- もみじについて初めて記されたのは、奈良時代の『万葉集』です
- 其の二、
- 平安時代、貴族たちが紅葉を楽しむ様子や行事が『古今集』『源氏物語』『小倉百人一首』などに登場しました
- 其の三、
- 京都には美しい紅葉の条件がそろう場所が多く存在します
紅葉の歴史と文化
四季折々の風景が美しい日本では、秋の紅葉は古くから人々に愛されてきました。日本最古の歌集である奈良時代の『万葉集』にも、もみじを詠んだ歌が多く残っています。
平安時代、紅葉を観賞することは貴族たちの生活文化のひとつとなり、秋にはこぞって紅葉の名所を訪れていました。また、宮中や邸宅の庭園にも紅葉する木々を植え、居ながらにしてその彩りを楽しんだとされています。そして、『古今集』や『源氏物語』『小倉百人一首』にももみじが登場しました。
鎌倉時代以降には、寺院の庭園にもイロハモミジなどが植えられました。自生する木々の紅葉や、庭園のもみじが織り成す色彩、またそれを感じる美意識は、今も人々に受け継がれています。
- 葉が紅葉するためには光合成が必須。日照時間が長く、日当たりが良いほど早く色付きます。
- 気温7~8℃以下で紅葉が始まり、徐々に5℃前後まで下がると美しくなるとされています。
- 年間を通して適度な降水量があり、土中に浸透した水分を根が定期的に吸い上げることが重要です。
京都は盆地のため昼と夜の気温差が大きく、また市内中心に河川が流れているので湿度が高いことが特徴です。これが、紅葉を美しくする条件だと言われます
平安時代、貴族たちは主に自生する木々が紅葉する様子を観賞し、楽しんでいました。当時は、赤い葉よりも黄色い葉がもみじ(黄葉)として認識され、もみじを詠んだ歌の中でも圧倒的に黄色を愛でていたことがわかるそうです。また紅葉は、厳しい冬の到来と冬に備える準備の合図にもなっていました。嵐山や高雄、洛北エリアでは、木々の葉が緑から黄色や赤、さらに黄金色や深い赤へと移ろいゆく錦秋のコントラストが見事で、平安貴族も多く訪れました。美しい紅葉を楽しむ文化はこの頃から育まれたようです。
染料をもみ出す様子を表す「もみづ」が由来となり、秋になると葉が赤や黄色に色付き変わることを、「もみじ」と呼ぶようになったとされています
永観堂(えいかんどう)
[寺宝展]
- ●11/8(土)~12/4(木) 9時~16時(受付)
- ●大人1,000円・小中高生400円
※11/7(金)までと12/5(金)からは大人600円・小中高生400円 - ●075-761-0007 ●京都市左京区永観堂町48
- ●地下鉄蹴上駅下車 北東へ徒歩約15分/神宮丸太町駅からバス 東天王町下車 南東へ徒歩約10分
- *11/8(土)~12/4(木)
17時30分~20時30分(受付) - *中学生以上600円
- 約3,000本のもみじを楽しむには、樹木に対して立つ位置を変え、いろいろな角度から見てみましょう。もみじの種類や葉によって、何通りも楽しむことができます。
境内東側の急斜面に自生しているタカオカエデのことを岩垣もみじと呼びます。平安時代の歌人・藤原関雄が「奥山の岩垣もみじ散りぬべし照る日の光見るときなくて」と詠んだことから名付けられました
もみじのトンネル[11月は秋ダイヤで運行]
- ●10時~15時台(平日)鞍馬ゆきを各約15分間隔で運行
※11/8(土)~30(日)の土・日・祝・休日は9時~18時台 鞍馬ゆきを13~15分間隔で運行 - ●075-781-5121
- 朝夕の太陽の光で、葉の輝き方や鮮やかさが違うところを車内から見てみましょう。同じ場所でも、もみじのイメージが大きく異なります。
京都では、鎌倉時代に入ると先人たちの類いまれな美意識の高さもあり、寺院の庭園に紅葉する木々を植えて、“紅葉×庭園”の生み出す絵画のような美しさを追求するようになりました。世界遺産・天龍寺をはじめとする嵐山や東山エリアの寺院では、京都の中でも美しい紅葉の条件を満たす場所が多いため、庭園にはイロハモミジを筆頭に紅葉する木が植えられました。さらに遠近法を利用して背景の紅葉と組み合わせ、庭園の美しさを引き出しているのも特徴です。
イロハモミジは別名、イロハカエデ、タカオモミジ、タカオカエデとも呼ばれています。京都の高雄エリアが特に美しく彩る名所と知られ、地名が入った名前になっています。寺院の庭園に植えられた紅葉する樹木の多くは、葉の小さなイロハモミジです
天龍寺(てんりゅうじ)
- ●8時30分~17時
- ●庭園:大人500円・小中生300円
- ●075-881-1235
- ●京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町68
- ●嵐電(京福)嵐山駅下車 北西へすぐ
- 庭園のもみじと背景にある山々の錦秋の彩りの対比が見事。2度、3度と訪れると、葉の色の変化によって、季節の移り変わりをより一層感じることができます。
詩仙堂(しせんどう)
- ●9時~16時45分(受付)
- ●大人500円・高校生400円・小中生200円
- ●075-781-2954 ●京都市左京区一乗寺門口町27
- ●叡電一乗寺駅下車 東へ徒歩約15分/
出町柳駅からバス 一乗寺下り松町下車 東へ徒歩約10分
- 白砂とサツキの奥に紅葉が広がり、様々な色彩が合わさって、遠近感を感じることができます。場所によって景色が変わり、何度でも楽しむことができます。
“もみじ狩り”という言葉は、鎌倉時代の和歌で初めて使われたとされています。『源氏物語』第7帖「 紅葉賀」にも、光源氏がもみじを冠に挿して、舞を踊るシーンが描写されています
紅葉する植物は多数あり、イロハモミジなどが属するムクロジ科だけでも世界で約150種類、京都にはその内14種類ほどが自生しています。紅葉は、樹木の葉が落葉するまでに生じる一種の老化現象であり、冬を告げる役割を果たしています。ここでは秋を彩る代表的な葉について見てみましょう。
京都府立植物園(きょうとふりつしょくぶつえん)
- ●9時~16時(入園)
- ●大人200円・高校生150円
- ●075-701-0141 ●京都市左京区下鴨半木町
- ●出町柳駅からバス 植物園前下車 北へ徒歩約5分/
丹波橋駅のりかえ近鉄・地下鉄、または
三条駅のりかえ地下鉄北山駅下車 南へすぐ
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- 第三十回 京ことば
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- 第一回 池泉庭園の眺め方