京都ツウのススメ

第七十九回 京の紅葉

[京都の秋を愛でる紅葉巡り)]

京の紅葉の基礎知識

其の一、
もみじについて初めて記されたのは、奈良時代の『万葉集』です
其の二、
平安時代、貴族たちが紅葉を楽しむ様子や行事が『古今集』『源氏物語』『小倉百人一首』などに登場しました
其の三、
京都には美しい紅葉の条件がそろう場所が多く存在します

紅葉の歴史と文化

四季折々の風景が美しい日本では、秋の紅葉は古くから人々に愛されてきました。日本最古の歌集である奈良時代の『万葉集』にも、もみじを詠んだ歌が多く残っています。

平安時代、紅葉を観賞することは貴族たちの生活文化のひとつとなり、秋にはこぞって紅葉の名所を訪れていました。また、宮中や邸宅の庭園にも紅葉する木々を植え、居ながらにしてその彩りを楽しんだとされています。そして、『古今集』や『源氏物語』『小倉百人一首』にももみじが登場しました。

鎌倉時代以降には、寺院の庭園にもイロハモミジなどが植えられました。自生する木々の紅葉や、庭園のもみじが織り成す色彩、またそれを感じる美意識は、今も人々に受け継がれています。

【京都の紅葉を楽しむ】カエデやイチョウなど、錦秋の美しさを愛でる京都の紅葉。今回はこれまでとは視点を変えて、シーズンを迎えた名所の観賞ポイントや紅葉文化、豆知識を2人の達人がご紹介します。

美しい紅葉の条件

日当たりが十分なこと
葉が紅葉するためには光合成が必須。日照時間が長く、日当たりが良いほど早く色付きます。
最低気温が5℃前後
気温7~8℃以下で紅葉が始まり、徐々に5℃前後まで下がると美しくなるとされています。
適度な水分
年間を通して適度な降水量があり、土中に浸透した水分を根が定期的に吸い上げることが重要です。

京都は盆地のため昼と夜の気温差が大きく、また市内中心に河川が流れているので湿度が高いことが特徴です。これが、紅葉を美しくする条件だと言われますココがツウ

【京の紅葉・美しさのヒミツ1】自然が生んだ錦秋のコントラスト

平安時代、貴族たちは主に自生する木々が紅葉する様子を観賞し、楽しんでいました。当時は、赤い葉よりも黄色い葉がもみじ(黄葉)として認識され、もみじを詠んだ歌の中でも圧倒的に黄色を愛でていたことがわかるそうです。また紅葉は、厳しい冬の到来と冬に備える準備の合図にもなっていました。嵐山や高雄、洛北エリアでは、木々の葉が緑から黄色や赤、さらに黄金色や深い赤へと移ろいゆく錦秋のコントラストが見事で、平安貴族も多く訪れました。美しい紅葉を楽しむ文化はこの頃から育まれたようです。

ココがツウ

染料をもみ出す様子を表す「もみづ」が由来となり、秋になると葉が赤や黄色に色付き変わることを、「もみじ」と呼ぶようになったとされています

地下鉄 蹴上/神宮丸太町からバス
永観堂(えいかんどう)

[寺宝展]

  • 11/8(土)~12/4(木) 9時~16時(受付)
  • 大人1,000円・小中高生400円
    ※11/7(金)までと12/5(金)からは大人600円・小中高生400円
  • 075-761-0007 京都市左京区永観堂町48
  • 地下鉄蹴上駅下車 北東へ徒歩約15分/神宮丸太町駅からバス 東天王町下車 南東へ徒歩約10分

ライトアップ

  • 11/8(土)~12/4(木)
    17時30分~20時30分(受付)
  • 中学生以上600円
観賞ポイント
約3,000本のもみじを楽しむには、樹木に対して立つ位置を変え、いろいろな角度から見てみましょう。もみじの種類や葉によって、何通りも楽しむことができます。

ココがツウ境内東側の急斜面に自生しているタカオカエデのことを岩垣もみじと呼びます。平安時代の歌人・藤原関雄が「奥山の岩垣もみじ散りぬべし照る日の光見るときなくて」と詠んだことから名付けられました

叡山電車(市原駅~二ノ瀬駅間)
もみじのトンネル[11月は秋ダイヤで運行]
  • 10時~15時台(平日)鞍馬ゆきを各約15分間隔で運行
    ※11/8(土)~30(日)の土・日・祝・休日は9時~18時台 鞍馬ゆきを13~15分間隔で運行
  • 075-781-5121
観賞ポイント
朝夕の太陽の光で、葉の輝き方や鮮やかさが違うところを車内から見てみましょう。同じ場所でも、もみじのイメージが大きく異なります。

【京の紅葉・美しさのヒミツ2】先人から受け継ぐ美意識と庭園の紅葉

京都では、鎌倉時代に入ると先人たちの類いまれな美意識の高さもあり、寺院の庭園に紅葉する木々を植えて、“紅葉×庭園”の生み出す絵画のような美しさを追求するようになりました。世界遺産・天龍寺をはじめとする嵐山や東山エリアの寺院では、京都の中でも美しい紅葉の条件を満たす場所が多いため、庭園にはイロハモミジを筆頭に紅葉する木が植えられました。さらに遠近法を利用して背景の紅葉と組み合わせ、庭園の美しさを引き出しているのも特徴です。

ココがツウイロハモミジは別名、イロハカエデ、タカオモミジ、タカオカエデとも呼ばれています。京都の高雄エリアが特に美しく彩る名所と知られ、地名が入った名前になっています。寺院の庭園に植えられた紅葉する樹木の多くは、葉の小さなイロハモミジです

嵐電(京福) 嵐山
天龍寺(てんりゅうじ)
  • 8時30分~17時
  • 庭園:大人500円・小中生300円
  • 075-881-1235
  • 京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町68
  • 嵐電(京福)嵐山駅下車 北西へすぐ
観賞ポイント
庭園のもみじと背景にある山々の錦秋の彩りの対比が見事。2度、3度と訪れると、葉の色の変化によって、季節の移り変わりをより一層感じることができます。
叡電 一乗寺/出町柳からバス
詩仙堂(しせんどう)
  • 9時~16時45分(受付)
  • 大人500円・高校生400円・小中生200円
  • 075-781-2954 京都市左京区一乗寺門口町27
  • 叡電一乗寺駅下車 東へ徒歩約15分/
    出町柳駅からバス 一乗寺下り松町下車 東へ徒歩約10分
観賞ポイント
白砂とサツキの奥に紅葉が広がり、様々な色彩が合わさって、遠近感を感じることができます。場所によって景色が変わり、何度でも楽しむことができます。
ココがツウ

“もみじ狩り”という言葉は、鎌倉時代の和歌で初めて使われたとされています。『源氏物語』第7帖「 紅葉賀」にも、光源氏がもみじを冠に挿して、舞を踊るシーンが描写されています

紅葉巡りの前に...葉っぱの豆知識

紅葉する植物は多数あり、イロハモミジなどが属するムクロジ科だけでも世界で約150種類、京都にはその内14種類ほどが自生しています。紅葉は、樹木の葉が落葉するまでに生じる一種の老化現象であり、冬を告げる役割を果たしています。ここでは秋を彩る代表的な葉について見てみましょう。

【①イロハモミジ】京都で多く見られる代表的なモミジ。3~7cmと葉が小さく、葉のふちのギザギザが大小ふぞろいです 【②オオモミジ】イロハモミジに比べて葉が大きく、やや厚さがあるのが特徴です。葉のふちに細かいギザギザがあります 【③ウリハダカエデ】葉の大きさは10~15cmで、やや厚め。葉裏に毛があり、黄色から赤褐色に紅葉するのが特徴です 【④イチョウ】害虫に強く寿命が長いため、高さ30mにもなる巨木も見られます 【⑤ヤマウルシ】樹皮から漆液が出ることが名前の由来。葉の両面に細かな軟毛が密生しています

叡電 一乗寺/出町柳からバス
京都府立植物園(きょうとふりつしょくぶつえん)
  • 9時~16時(入園)
  • 大人200円・高校生150円
  • 075-701-0141 京都市左京区下鴨半木町
  • 出町柳駅からバス 植物園前下車 北へ徒歩約5分/
    丹波橋駅のりかえ近鉄・地下鉄、または
    三条駅のりかえ地下鉄北山駅下車 南へすぐ
制作:2014年10月
バックナンバー
第百八十七回 京の歌枕(うたまくら)の地
第百八十六回 京都の地ソース
第百八十五回 『源氏物語』ゆかりの地
第百八十四回 京の煤払(すすはら)い
第百八十三回 京都の坪庭(つぼにわ)
第百八十二回 どこまで分かる?京ことば
第百八十一回 京都の中華料理
第百八十回 琵琶湖疏水と京都
第百七十九回 厄除けの祭礼とお菓子
第百七十八回 京都と徳川家
第百七十七回 京の有職文様(ゆうそくもんよう)
第百七十六回 大念仏狂言(だいねんぶつきょうげん)
第百七十五回 京表具(きょうひょうぐ)
第百七十四回 京の難読地名
第百七十三回 京の縁日
第百七十二回 京の冬至(とうじ)と柚子(ゆず)
第百七十一回 京都の通称寺
第百七十回 京都とキリスト教
第百六十九回 京都の札所(ふだしょ)巡り
第百六十八回 お精霊(しょらい)さんのお供え
第百六十七回 京の城下町 伏見
第百六十六回 京の竹
第百六十五回 子供の行事・儀式
第百六十四回 文豪と京の味
第百六十三回 普茶(ふちゃ)料理
第百六十二回 京都のフォークソング
第百六十一回 京と虎、寅
第百六十回 御火焚祭
第百五十九回 鴨川の橋
第百五十八回 陰陽師(おんみょうじ)
第百五十七回 京都とスポーツ
第百五十六回 貴族の別荘地・伏見
第百五十五回 京都の喫茶店
第百五十四回 京の刃物
第百五十三回 京都の南蛮菓子
第百五十二回 京の社家(しゃけ)
第百五十一回 京都にゆかりのある言葉
第百五十回 京のお雑煮
第百四十九回 京の牛肉文化
第百四十八回 京の雲龍図(うんりゅうず)
第百四十七回 明治の京都画壇
第百四十六回 京の名所図会(めいしょずえ)
第百四十五回 ヴォーリズ建築
第百四十四回 島原の太夫(たゆう)
第百四十三回 京の人形
第百四十二回 京の社寺と動物
第百四十一回 鳥居(とりい)
第百四十回 冬の食べ物
第百三十九回 能・狂言と京都
第百三十八回 京都と様々な物の供養
第百三十六回 京都とビール
第百三十五回 京都と鬼門(きもん)
第百三十四回 精進料理
第百三十三回 明治時代の京の町
第百三十二回 皇室ゆかりの建物
第百三十一回 京の調味料
第百三十回 高瀬川
第百二十九回 蹴鞠
第百二十八回 歌舞伎
第百二十七回 京都に残るお屋敷
第百二十六回 京の仏像 [スペシャル版]
第百二十五回 京の学校
第百二十四回 京の六地蔵めぐり
第百二十三回 京の七不思議<通り編>
第百二十二回 京都とフランス
第百二十一回 京の石仏
第百二十回 京の襖絵(ふすまえ)
第百十九回 生き物由来の地名
第百十八回 京都の路面電車
第百十七回 神様への願いを込めて奉納
第百十六回 京の歴食
第百十五回 曲水の宴
第百十四回 大政奉還(たいせいほうかん)
第百十三回 パンと京都
第百十二回 京に伝わる恋物語
第百十一回 鵜飼(うかい)
第百十回 扇子(せんす)
第百九回 京の社寺と山
第百八回 春の京菓子
第百七回 幻の京都
第百六回 京の家紋
第百五回 京の門前菓子
第百四回 京の通り名
第百三回 御土居(おどい)
第百二回 文学に描かれた京都
第百一回 重陽(ちょうよう)の節句
第百回 夏の京野菜
第九十九回 若冲と近世日本画
第九十八回 京の鍾馗さん
第九十七回 言いまわし・ことわざ
第九十六回 京の仏師
第九十五回 鴨川
第九十四回 京の梅
第九十三回 ご朱印
第九十二回 京の冬の食習慣
第九十一回 京の庭園
第九十回 琳派(りんぱ)
第八十九回 京の麩(ふ)
第八十八回 妖怪紀行
第八十七回 夏の京菓子
第八十六回 小野小町(おののこまち)と一族
第八十五回 新選組
第八十四回 京のお弁当
第八十三回 京都の湯
第八十二回 京の禅寺
第八十一回 京の落語
第八十回 義士ゆかりの地・山科
第七十九回 京の紅葉
第七十八回 京の漫画
第七十七回 京の井戸
第七十六回 京のお地蔵さん
第七十五回 京の名僧
第七十四回 京の別邸
第七十三回 糺(ただす)の森
第七十二回 京舞
第七十一回 香道
第七十回 天神さん
第六十九回 平安京
第六十八回 冬の京野菜
第六十七回 茶の湯(茶道)
第六十六回 京の女流文学
第六十五回 京の銭湯
第六十四回 京の離宮
第六十三回 京の町名
第六十二回 能・狂言
第六十一回 京の伝説
第六十回 京狩野派
第五十九回 京寿司
第五十八回 京のしきたり
第五十七回 百人一首
第五十六回 京の年末
第五十五回 いけばな
第五十四回 京の城
第五十三回 観月行事
第五十二回 京の塔
第五十一回 錦市場
第五十回 京の暖簾
第四十九回 大原女
第四十八回 京友禅
第四十七回 京のひな祭り
第四十六回 京料理
第四十五回 京の町家〈内観編〉
第四十四回 京の町家〈外観編〉
第四十三回 京都と映画
第四十二回 京の門
第四十一回 おばんざい
第四十回 京の焼きもの
第三十九回 京の七不思議
第三十八回 京の作庭家
第三十七回 室町文化
第三十六回 京都御所
第三十五回 京の通り
第三十四回 節分祭
第三十三回 京の七福神
第三十二回 京の狛犬
第三十一回 伏見の酒
第三十回 京ことば
第二十九回 京の文明開化
第二十八回 京の魔界
第二十七回 京の納涼床
第二十六回 夏越祓
第二十五回 葵祭
第二十四回 京の絵師
第二十三回 涅槃会
第二十二回 京のお漬物
第二十一回 京の幕末
第二十回 京の梵鐘
第十九回 京のお豆腐
第十八回 時代祭
第十七回 京の近代建築
第十六回 京のお盆行事
第十五回 京野菜
第十四回 京都の路地
第十三回 宇治茶
第十一回 京菓子の歴史
第十回 枯山水庭園の眺め方
第九回 京阪沿線 初詣ガイド
第八回 顔見世を楽しむ
第七回 特別拝観の楽しみ方
第六回 京都の着物
第五回 仏像の見方
第四回 送り火の神秘
第三回 祇園祭の楽しみ方
第二回 京の名水めぐり
第一回 池泉庭園の眺め方
  • おすすめ!
  • おでかけナビ
  • 京阪沿線って?
  • K PRESSプレゼント
  • ぶらり街道めぐり
  • 京阪・文化フォーラム
  • 京阪グループおトク情報
  • 他社線から京阪電車へ
  • 京阪グループ沿線の遠足・社会見学施設のご案内
  • ひらかたパーク
  • 京阪グループのホテル・レジャー予約
  • 比叡山へいこう!
  • アートエリア ビーワン

ページの先頭へ