京都ツウのススメ

第六十四回 京の離宮

[古都の歴史の中で生まれた京の離宮]ふと見かけると不思議な町名には、思いがけない古都の歴史や文化が隠されています。興味深い京の離宮について、らくたびの若村亮さんが解説します。

枯山水庭園の基礎知識

其の一、
離宮とは天皇や上皇の別荘で、皇居以外の宮殿のことです
其の二、
江戸時代、王朝文化への憧れから、桂離宮と修学院離宮が造られました
其の三、
洗練された建物や庭園、舟遊びのできる池から構成されます

離宮が造られた背景

離宮は、皇居以外に設けられた宮殿のことで、天皇や上皇の別荘として全国に数多く造営されました。その中で、現在も離宮として残っているのが、京都市左京区の修学院離宮と西京区の桂離宮の2つです。修学院離宮を造営した後水尾(ごみずのお)上皇と、桂離宮を造営した智仁(としひと)親王は、ともに豊かな教養を持った文化人でありながら、戦国時代から江戸時代初期にかけ、動乱の時代に翻弄された人物でもあります。そのため、晩年は世俗から離れ、平安時代の貴族のような雅な生活を送りたいという思いから、離宮の造営に情熱を注ぎました。離宮は、世間のしがらみから解放され、王朝文化への憧れを現実のものにした理想郷だったのです。

京の離宮の美

修学院離宮は、周囲の自然の景観を取り込んだ構成で、その雄大な美の世界は圧巻です。また、約50年の歳月をかけて完成した桂離宮は、日本美の集大成とも言われています。どちらの離宮も、自然豊かな場所にあり、雅やかな建物と庭園、そして舟遊びを楽しめる広大な池があることが特徴です。

[都を望む雄大な別荘 修学院離宮]後水尾上皇が比叡山のふもとに造営した山荘。御茶屋と呼ばれる、3つのエリアから構成され、自然を借景に取り入れた雄大な景観が広がります。

下御茶屋(しものおちゃや)美しい眺めを楽しめる休憩処

離宮の入り口に位置します。中心にある寿月観(じゅけつかん)は、上皇が行幸の際に休憩をした建物。寿月観の西側には御輿寄(おこしよせ)があり、上皇はここに到着後、庭や比叡山の山並みを眺めて移動の疲れを癒してから、上御茶屋へ向かうのが離宮回遊のコースでした。

下御茶屋

上御茶屋(かみのおちゃや)舟遊びのための池泉庭園

高台にある隣雲亭(りんうんてい)からは、川をせき止めて造られた巨大な人工池・浴龍池(よくりゅうち)を見下ろすことができ、京都市街まで一望できる大パノラマの絶景が広がります。上皇は31回に及ぶ行幸の折に、必ずと言ってもいいほど浴龍池での舟遊びを楽しみました。

上御茶屋

中御茶屋(なかのおちゃや)雅やかな女性の住まい

創建当初はなかった御茶屋。中心となる建物・楽只軒(らくしけん)は後水尾上皇の娘のために建てられました。修学院離宮の中で最も華やかな空間で、女性の住まいらしい雰囲気が漂います。また、上皇の妻の住まいを一部移築した客殿には、5枚の棚板を互い違いに配した“天下の三棚”のひとつ、霞棚(かすみだな)があります。

中御茶屋
楽只軒の杉戸に描かれている、鯉の絵

楽只軒の杉戸に描かれている、鯉(こい)の絵。描かれた鯉が毎晩、絵から抜け出して庭の池で泳ぐので、それを防ぐために綱を描き加えたという伝説が残っています

ココがツウ

ココも見どころ

棚田

各御茶屋の間には、のどかな棚田が広がります。上皇は人々が田を耕す様子も自然の一部として愛で、農夫とすれ違う光景を歌に詠むなど、四季折々の田園風景を楽しみました。

松並木

3つの御茶屋をつなぐ松並木。背景に雄大な山々が連なり、道の両側に広がる田園風景を堪能できる、優美な散策路です。

松並木は、もともと棚田のあぜ道でした。明治天皇が行幸した際、馬車が通れるよう道を広げ、赤松を植樹したことから、“御馬車道”とも呼ばれます

上御茶屋

下御茶屋

中御茶屋

[もうひとつの京の離宮]桂離宮(お月見を楽しむ文化サロン)

平安時代から観月の名所として名高い洛西(現・京都市西京区)の地に江戸時代初期、当代きっての教養を持つ智仁親王が山荘の造営を始めました。後に息子の智忠(としただ)親王が完成させ、池の周りに書院や茶亭を配置しました。簡素に見えて、随所に技巧と意匠が凝らされた建物と庭園の調和は、ドイツ人建築家のブルーノ・タウトが「日本建築の世界的奇跡」と著書の中で紹介したことから、世界中に知られるようになりました。

桂離宮

桂離宮の造営にあたり、徳川将軍家からは銀千枚などの援助が度々ありました。これは、幕府が推進した公武和合の一環とされています

修学院離宮・桂離宮を観るには、事前の申し込みが必要です。詳しくはお問い合わせください。

075-211-1215(宮内庁京都事務所 参観係)

制作:2013年7月
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第三回 祇園祭の楽しみ方
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第一回 池泉庭園の眺め方
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