京都ツウのススメ

第五十八回 京のしきたり

伝統と心遣いが息づく 京のしきたり]人々の想いを織り込みながら、連綿と受け継がれてきた作法や風習。京都に伝わるしきたりについて、らくたびの佐藤理菜子さんが紹介します。

京のしきたりの基礎知識

其の一、
しきたりとは、昔から“仕来(しき)たること”(=して来たこと)という意味です
其の二、
物事を円滑に進めるための作法のひとつです
其の三、
社寺や年中行事が多い古都ならではのしきたりも数多く存在します

長い歴史の中で育まれた風習

しきたりの語源は「仕来たる」、つまり昔からずっと「して来たこと」という意味です。1200余年の歴史をもつ京都には、先人たちより脈々と引き継がれてきたしきたりが数多く存在します。それらは、要点を押さえれば物事をうまく進められる、理にかなったマニュアルのようなもの。日々の暮らしや人間関係を円滑に進めるための細かな心配りと工夫であり、これこそが京都人の知恵が生み出したコミュニケーション文化と言えるでしょう。

京都のしきたりの特徴

長きに渡って都であり、政治や文化の中心地であった京都。年中行事や、御所を中心とした宮廷文化から影響を受けた独特の風習が数多く残されています。それらの中には、お返しの作法である「おため」などのように、京都近郊でのみ受け継がれている風習がある一方、鬼を追い払う追儺式(ついなしき)から始まったとされる節分の豆まきのように、京都から全国に広がり日本文化として定着したものもあります。

受け継がれる暮らしの中のしきたり 京都の文化が反映された数々のしきたり。その代表的なものから、そこに込められた意味をひもときます。

「おため」の画像 「おため」

自宅でご祝儀を受け取ったら、その場で1割の現金をため紙(半紙)とともに返すことを「おため」と言います。ため紙は次の祝い事の際に使ってもらうために渡すもので、これには“末永いお付き合いを”という気持ちが込められています。「おうつり」とも呼ばれ、“幸せが移りますように”という想いの表現とされます。

「逆さほうき」の画像 「逆さほうき」

長居する客がいる場合、ほうきを逆さに立てておく風習は全国的に見られますが、さらに京都ではほうきに布や手拭いをかけ、拝んだりお供えをします。

ココがツウ

神様を掃き出してしまうことになるので、お正月は、ほうきを使わない風習があります。そこには、普段忙しい女性に休んでもらうための思いやりが隠されています

八のつく日には「アラメ」を、月末には「おから」を食べるの画像 八のつく日には「アラメ」を、月末には「おから」を食べる

京都の商家では、毎月8日・18日・28日にアラメ(コンブの一種)を食べる風習があります。これは「商いに芽が出るよう」という商売繁盛の願いが込められています。また、おからは“炊く”ではなく“炒る”と言うので、お金やお客が“入る”とかけて、月末に験を担いで食されました。

結婚祝いのマナーの画像 結婚祝いのマナー

京都の結婚祝いは、心が込もった丁寧なもの。片木台(へぎだい)に金封・寿恵廣(すえひろ)・熨斗(のし)をのせ、それを広蓋(ひろぶた)にのせて袱紗(ふくさ)をかけ、さらに風呂敷で包みます。これを大安・先勝・友引の午前中に先方へ届けるのがマナーです。また、もったいないという京都人の“始末”の考えから、寿恵廣・熨斗は使い回してよいとされています。

お葬式には[黄白]の水引

京都のお葬式では、黒白ではなく黄白の金封を使用するのが礼儀です。宮廷への献上品に使用されていた最も格の高い“紅白”の水引の紅色が、黒に近い玉虫色に輝くものでした。それと黒白の水引とを見間違えないようにするため、仏事には黄白の水引が使用されるようになりました。また、金封の表書きは「御香典」ではなく「御仏前」と書きます。

ココがツウ

生死を白黒はっきりさせる武家社会の考えから生まれた“黒白”は、公家文化中心の京都では浸透しませんでした

寺社への信仰や年中行事から生まれたもの
愛宕神社の「火迺要慎」の画像 愛宕神社の「火迺要慎」

京の家庭の台所にはよく「火廼要慎」と書かれたお札が貼られています。これは愛宕神社(京都市右京区)で授与される火災除けの護符です。

ココがツウ

毎年、地域や町内の代表が愛宕神社に参拝し、人数分の護符を買って配る代参の風習があります。また、3歳まに愛宕神社に参拝すると一生火難を逃れると言われます

6月30日に食べる「水無月」の画像 6月30日に食べる「水無月」

京都では、毎年6月30日に「水無月」というお菓子を食べます。これは、宮中の人々が氷を食べて暑気払いをした「氷の節句」という年中行事に由来するもの。氷のかけらを模した三角形のういろうの上に、“魔を滅する”という意味の小豆がのっています。

五山の送り火の「消し炭」

毎年8月16日に行われる京都五山の送り火に用いる護摩木の消し炭を、白い奉書紙に巻いて家の軒先に吊るし、家内安全を祈る盗難除けのお守りとする家庭が多く見られます。

こんな暮らしのしきたりも
  • 京都の「門(かど)掃き」は、門前を掃除しながらあいさつや世間話ができる、コミュニケーションの手段でもあります。近所と程良い関係を保つため、お隣の前も一尺(30cm)程度を掃き清めます。
  • 人のお宅を訪問する際、もてなしの準備で忙しい相手を思いやる気持ちから、先方の準備が整ってほんの一息ついた頃に到着するよう、約束の時間から“髪の毛一本”遅れて行くのが京都のマナーです。
  • 嫁ぎ先から戻って来ないよう、お嫁入りの時には、堀川に架かる一条戻橋を渡ることがないようにします。
制作:2013年1月
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第六回 京都の着物
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第三回 祇園祭の楽しみ方
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第一回 池泉庭園の眺め方
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