京都ツウのススメ

第四十四回 京の町家〈外観編〉

[町中にたたずむ文化遺産京町家] 京町家とは、京都の町中で見られる伝統的な住まいのこと。虫籠窓や格子など、先人の知恵と美意識が詰まった町家の「外」と「内」について、らくたびの佐藤理菜子さんが2回にわたってご紹介します。

京の町家の基礎知識

其の一、
平安時代中期、平安京の東西にあった市場の店が町家の原形です
其の二、
京都市街に残る戦前の木造住宅を主に京町家と呼びます
其の三、
2階の天井が低い「中二階」様式が多く、外観にも様々な特徴があります

京町家の誕生と発展

京都を歩くと、100年以上も前に建てられた木造住宅が立ち並ぶ風情のある町並みに出会います。一般に「町家」と呼ばれるこれらの家は、平安時代、都の東西にできた市場で、物を売るための小屋「店屋(まちや)」として始まりました。その後、職住一体型の住まいの原型とも言える、商いの場に住居を併設した小屋が立ち並ぶようになります。室町時代には裕福な町衆たちが競って立派な町家を建築。江戸時代に入ると建築技術が発達し、建具や畳の寸法がそろえられたことから、統一感のある町並みが築かれました。

今日に受け継がれる端正な町並み

町家と呼ばれる建物は、現在京都市街に約5万戸あると言われます。その多くは明治から大正時代にかけて建てられたもので、間口が狭く奥行きのある敷地を生かした内部の間取りや、格子や虫籠窓をはじめとする独特の外観など、その内と外に先人たちの知恵と美意識の結晶が見られます。また、ひと口に町家と言ってもその種類は様々。生活様式の変化や流行によって多様なスタイルに発展した町家が連なり、今日に受け継がれる伝統的で端正な景観をつくっています。

[隠れた機能美の宝庫 外から町家を見てみよう] 町並みに統一感をもたらし、端正なたたずまいを見せる京町家。美しい外観の意匠に注目してみましょう。

鍾馗さん(しょうきさん)

唐の玄宗皇帝の夢に現れて鬼を退治したという中国の故事に由来する魔除けの神。家の守り神とされ、鍾馗の姿をかたどった瓦像を1階の屋根の上に置きます。

ココがツウ

向かいの家に鬼瓦がある場合は、正面から向かい合うように置き、向かいに鍾馗さんが置かれている場合は、近所付き合いが円滑にいくようにという願いを込め、目線を外して据えます

鍾馗さん

一文字瓦(いちもんじかわら)

軒先の瓦の端が切り落としたように一直線にそろえられたもの。町並みに統一感をもたらし、すっきりとした印象に。

ばったり床机(ばったりしょうぎ)

壁に造り付けた折り畳み式の棚。商品の陳列棚や椅子として使われました。

虫籠窓(むしこまど)

町家特有の低い2階部分にある、しっくいで塗り固めた窓。通風や採光を良くする機能に加え、たて格子が作り出す陰影の美しさも特徴です。

ココがツウ

名前の由来には、虫籠(むしかご)に似ているからという説と、麹(こうじ)屋が米を蒸すのに使った道具「蒸子(むしこ)」に似ているから、という説があります

虫籠窓

卯建(うだつ)

建物の端の壁を一段高く上げて屋根を載せたもの。隣家との境界を明確にするため、また隣家の火災から家を守るために設けられています。「うだつが上がらない」の語源にも。

卯建

格子(こうし)

外からは内部が見えにくく、中からは外の通りがよく見えるため、防犯の役割を果たします。家業によって、格子の太さや長さが異なります。

犬矢来(いぬやらい)

町雨の跳ね返りから壁を守るために付けられた竹製の囲いのこと。しなやかな曲線美が特徴です。

犬矢来

家業によって異なる格子の形

  • 麩屋格子

    麩屋格子

    麩・湯葉・豆腐屋など。水仕事ができるように、障子に油紙が使われています。
  • 酒屋格子

    酒屋格子

    主に酒屋。重い酒樽が当たっても壊れないよう角材を使った頑丈な造りが特徴。
  • 炭屋格子

    炭屋格子

    炭・薪(まき)屋など。炭粉の飛散を防ぐため、平らな板で格子の開きを狭くしています。
  • 糸屋格子

    糸屋格子

    織物業など。着物の柄などがよく見えるよう上部を切り欠いて室内の採光を良くしています。

[町家の種類]規模や用途、建てられた年代などによって異なる町家の主な様式をご紹介。

  • [中二階]江戸時代初期~明治時代後期町人が高い所から大名行列を見下ろさないよう、2階の天井が低く造られているのが特徴。虫籠窓が取り付けられることが多い2階は厨子二階(つしにかい)とも呼ばれ、主に物置きとして利用されました。
  • [仕舞屋]明治時代後期~大正時代表に店舗を持たない、住宅専用の町家。この時代に職住の分離が 進んだことから登場。「店を仕舞った」(=商いをやめた)ことにちなんで名付けられました。小さな出格子(ひさしや軒下に少し突き出た格子窓)が特徴です。
  • [三階建]昭和初期~第2次世界大戦頃明治時代以降、3階建て以上の建築が国から許可されたことで登場。狭い土地を有効活用するため、都市部を中心に建てられました。
制作:2011年11月
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