沿線おでかけ情報

京阪沿線の名橋を渡る vol.26

京阪沿線の名橋を渡る シリーズ26

東福寺 通天橋(とうふくじつうてんきょう)

思索的な空間性に富んだ木造廊橋。
その橋上から見た四季の絶景に忘我する。若一光司

京都五山の一つである東福寺に関する文章の中で、「東福寺の伽藍面(がらんづら)」という表現に出会うことがある。最初はその「伽藍面」という言葉の意味がわからなかったが、やがて、「大徳寺の茶面(ちゃづら)」「南禅寺の武家面(ぶけづら)」といった表現もあることを知り、ようやく「禅面(ぜんづら)」というものを理解した次第だ。

禅面とは、京都の臨済宗大本山の特徴を表した呼び名のことである。大徳寺が「茶面」と呼ばれるのは、千利休が帰依して以来、茶の湯文化と深い関わりを持ってきたからであり、南禅寺が「武家面」と呼ばれるのは、足利義満や徳川家康など、武家の篤(あつ)い信仰を得てきた寺院だからである。

それ以外にも、詩文芸術に秀でた禅僧を多く輩出した建仁寺は「学問面(がくもんづら)」と評され、徹底した組織運営で臨済宗第一の大教団を形成した妙心寺は、「算盤面(そろばんづら)」と呼ばれてきた。

ではなぜ、東福寺が「伽藍面」と呼ばれて来たかというと、鎌倉時代に摂政関白・九条道家が19年もの歳月をかけて創建した東福寺には、幾つもの大伽藍が甍(いらか)を並べ、その寺容がまさしく、圧倒的な壮観を誇っていたからに他ならない。

現在でも、威風堂々たる佇(たたず)まいで国宝となっている日本最古の三門や、昭和期木造建築では日本最大級となる本堂、それに、日本最大にして最古の禅宗式東司(とうす)(=御手洗)などから、東福寺のかつての「伽藍面」を偲(しの)ぶことができる。

しかし、そうした伽藍面とはまた異なる意味で、「東福寺らしさ」を大いに感じさせてくれるのが、主要伽藍の北側を流れる渓谷(洗玉澗[せんぎょくかん])に架かる、「東福寺三名橋」だ。

これらの三名橋は、下流から、臥雲橋(がうんきょう)、通天橋、偃月橋(えんげつきょう)の順で架かっている。京都府指定重要文化財である臥雲橋も、日本百名橋に選出されている偃月橋も、それぞれに格調高い魅力的な橋なのだが、三名橋の中でも特に有名なのが、京都を代表する紅葉スポットにもなっている通天橋だろう。

方丈と常楽庵(じょうらくあん)(開山堂)を結ぶ通天橋は、長さ約27mの木造廊橋(屋根付き橋)で、幅は約2.7m。約10.5mの高さを持つこの廊橋の周辺には、2千本以上の楓が繁茂し、それが一斉に紅葉する様は、超絶的な美しさで見る者の胸を打つ。

しかし、通天橋からの景観を堪能できるのは、決して紅葉期だけではない。春には一面の新緑、夏には青楓の広がりが、雲上界のごとき世界を体感させてくれるし、枯木立越しに相貌をあらわす洗玉澗の眺めも、冬ならではの絶景だ。

通天橋は、谷を渡る労苦から僧を救おうと、普明国師(ふみょうこくし)(春屋妙葩[しゅんおくみょうは])が室町時代に架けたもので、南宋の名高き禅の修行場である径山の橋を模したと伝えられる。廊橋入口に掲げられた「通天橋」の扁額(へんがく)も、普明国師の筆によるものだ。

天災で崩壊したりして何度も架け替えられてきたが、現在の通天橋は、1961(昭和36)年に再建されたもの。橋脚部分が初めて鉄筋コンクリート化されたことで、紅葉見物に訪れる参拝者の多さにも、十分耐えられるようになった。

東福寺 通天橋(とうふくじつうてんきょう)
◆ 京都市東山区本町15-778
◆ 東福寺駅下車 南東へ徒歩約10分

開山である聖一(しょういち)国師を祀(まつ)る常楽庵に通じる橋なので「通天橋」と名付けられた、と思われがちだが、日常のあらゆる所作を修行と考える禅宗においては、「通ずるべき天」もまた、自らの心のうちに見出すべきものなのかもしれない。

日々の慌ただしさの中で見失いかけていたものの多さに、ふと気づかされる、思索的な空間性に富んだ名橋である。

東福寺 通天橋付近をのんびり散策

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  • 新熊野神社(いまくまのじんじゃ)
    新熊野神社(いまくまのじんじゃ)

    1160(永暦元)年、後白河上皇によって創建。境内のクスノキは上皇のお手植えと伝わります

  • 伏水街道(ふしみかいどう)第二橋
    伏水街道(ふしみかいどう)第二橋

    かつて伏見(伏水)街道に架けられていた橋のひとつ。現在、川はなくなりましたが、橋の柱は移設され残されています

  • 泉涌寺(せんにゅうじ)
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    皇室ゆかりの寺院で「御寺(みてら)」とも言われます。初夏は涼しげな新緑が楽しめます

  • 芬陀院(ふんだいん)
    芬陀院(ふんだいん)

    東福寺の塔頭。雪舟作と伝わる、鶴島と亀島のふたつの石組みがある枯山水庭園が有名で、別名・雪舟寺とも呼ばれています

  • 東福寺 三門
    東福寺 三門

    室町時代に足利義持によって再建されました。現存する禅宗寺院の三門としては日本最古のもので、国宝に指定されています

麺道楽 大

めんどうらく だい

コシが強めの多彩なうどんが地元で愛される一軒。うどんのだしをベースにした親子丼が人気で、京都府・美山町の卵や九条ネギをぜいたくに使っています。夜は串かつを中心とした一品が楽しめます。

  • 11時30分~15時
    18時~22時
    不定休
  • 075-532-1919
  • 京都市東山区今熊野池田町4-14
  • 東福寺駅下車 北東へ徒歩約10分
おすすめメニュー・店内写真 おすすめメニュー・店内写真

ニシダや

1936(昭和11)年創業の漬物店。初代が考案した、名物のしば漬け「おらがむら漬け」は、酸味をおさえ、パリパリとした食感が楽しめるように仕上げられています。大原女をあしらったノスタルジックな包装紙もお土産にぴったり。

  • 9時~17時
  • 075-561-4740
  • 京都市東山区今熊野池田町6
  • 東福寺駅下車 北東へ徒歩約10分
おすすめメニュー・店内写真 おすすめメニュー・店内写真

DRAGON BURGER

ドラゴンバーガー

町家を改装した空間で、日本をイメージした創作バーガーが味わえるお店。漬物や万願寺とうがらし、九条ねぎなど京都らしい素材を取り入れた6種類のハンバーガーがそろいます。テイクアウトもOK。

  • 8時~22時30分(L.O.)
    不定休
  • 075-525-5611
  • 京都市東山区本町13-243
  • 東福寺駅下車 南東へすぐ
おすすめメニュー・店内写真 おすすめメニュー・店内写真
制作:2018年6月
価格・営業時間・電話番号等が変更される場合がありますので、
おでかけ時には、ご確認くださいますようお願い申し上げます。
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