京阪沿線の名橋を渡る vol.24
喜撰橋(きせんばし)
宇治の歴史性や品格にふさわしい
情緒あふれる朱塗りの反(そり)橋若一光司
日本最大の湖である琵琶湖(びわこ)には119本もの河川が注ぎ込んでいるが、琵琶湖から流れ出る河川は瀬田川だけで、その瀬田川は京都府に入るあたりで、「宇治川」と名を変える。
宇治川はやがて、京都と大阪の府境で桂川・木津川と合流して「淀川」になるため、宇治川としての長さは25kmほど。
ただし、河川法の上では「宇治川」の名を持つ河川は存在せず、「淀川中流部」の通称が「宇治川」ということになる。
にもかかわらず、宇治川の名の響きが人々を惹(ひ)きつけるのは、宇治川が育んできた風土や歴史文化が、日本人の普遍的な精神性を、そこはかとなく感じさせてくれるからだろう。
宇治には、「古都京都の文化財」としてユネスコの世界文化遺産に登録された、平等院と宇治上神社が存在する。
藤原一族の栄華を今に伝える平等院は、藤原頼通(よりみち)が平安時代中期に父から伝領した別荘を寺に改め、阿弥陀堂鳳凰堂(ほうおうどう)を建立して阿弥陀座像を安置したことに始まる。
その平等院の鎮守社としても長く崇拝されてきた宇治上神社は、本殿が「現存する日本最古の流造(ながれづくり)の神社建築」として知られ、拝殿とともに国宝にも指定されている。
平等院は宇治川の西岸、宇治上神社は東岸に位置するため、双方に参拝するには、宇治川の中州である「中の島」(「塔の島」と「 橘(たちばな)島」の総称)を経由するのが近道となるが、この中の島には、風情に満ちた三本の橋が架かっている。
一番上流で西岸と塔の島を結んでいるのが喜撰橋、同じく西岸と橘島を結ぶのが橘橋、そして、中の島から東岸に渡ることのできる唯一の橋が、朝霧橋である。
喜撰橋は1912(明治45)年、橘橋は1950(昭和25)年、朝霧橋は1972(昭和47)年の完成だが、喜撰橋が架けられるまで、中の島に船で渡ろうとする人はごくごく限られていた。
ところが1907(明治40)年頃に、1756(宝暦6)年の大洪水で倒壊水没していた浮島十三重石塔が、宇治川の川底から発見され、塔の島に再建された。これを新たな観光名所にするための整備事業の一環として、喜撰橋が架けられたのだ。
鎌倉時代の高僧・叡尊(えいそん)が宇治川での殺生を戒めようと建立した浮島十三重石塔は、現存する石塔としては日本最大にして最古のもので、国の重要文化財にもなっている。
私見ではあるが、「喜撰橋」の橋名は、平安時代の「六歌仙」の一人である、喜撰法師に由来すると思われる。
喜撰法師が詠んだ「わが庵は都の辰巳しかぞすむ世を宇治山と人はいふなり」の一首は、『小倉百人一首』に選歌されて宇治の名を広く世に知らしめ、宇治茶の銘柄名としても、「喜撰」の名が用いられるようになった。
架橋当初の喜撰橋は欄干もない素朴な木造橋だったが、1953(昭和28)年の大洪水で流出後、数次の改修が施され、1968(昭和43)年にはついに、水害に強いコンクリート橋となった。

◆ 宇治駅下車 南東へ徒歩約10分
さらに、1984(昭和59)年の宇治川河川改修にともない、喜撰橋はようやく現在の構えを得たが、朱塗りの反り橋に擬宝珠(ぎぼし)や桁隠しを備えたその姿は、宇治ならではの歴史性と品格にふさわしい、情緒あふれる景観をかもし出している。
中の島で記念写真を自撮りしたい方は、後景に浮島十三重石塔を配して喜撰橋に佇(たたず)めば、納得の一枚が撮れるはずだ。
喜撰橋(きせんばし)付近をのんびり散策
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菟道稚郎子皇子御墓(うじのわきいらつこのみことおんはか)
応神天皇の子である菟道稚郎子の墓。宇治の地名の由来になったとも言われています
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大吉山(仏徳山)
標高約131mの山で、中腹には展望台が設けられています。宇治の街並みを見下ろす人気の展望スポット
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興聖寺(こうしょうじ)
曹洞宗の名刹。開祖道元が深草に建てた道場が始まりと伝えられています。龍宮造りの山門が印象的
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浮島十三重石塔
宇治川の中州に供養塔として建立された石塔で、約15mの高さを誇ります
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平等院
平安時代後期、藤原頼通が父・道長の別荘を寺に改めたもの。池に面した鳳凰堂は国宝で、極楽浄土の世界を表しています。12月1日(金)から3日(日)は夜間特別拝観も
つばめ屋
つばめや
揚げたての天ぷらとそばが自慢のお店。旬の野菜を、注文を聞いてから米油で丁寧に揚げています。十割・二八・四六とそば粉の割合による違いが楽しめるそばもオススメです。
- 11時30分~15時(L.O.)
15時~22時
※15時からは要予約
木曜休業 ※ほか不定休あり - 0774-21-9111
- 京都府宇治市宇治東内13-3
- 宇治駅下車 南東へ徒歩約5分


Second curry
セカンドカレー
今年3月にオープンしたキーマカレー専門店。メニューは1品のみで、国産ミンチ肉たっぷりの和風キーマカレーに、野菜の素揚げと、だしで煮込んだ大根が添えられています。追加トッピングやテイクアウトもOK。
- 11時~14時30分(L.O.)
- 0774-25-6882
- 京都府宇治市宇治里尻2-17
- 宇治駅下車 南西へ徒歩約10分


GOCHIO cafe(伍町カフェ)
ゴチョウカフェ
江戸時代創業の宇治の茶園清水屋が手掛ける、気軽に抹茶を楽しめるカフェ。多彩なメニューのほとんどに清水屋の茶葉が使用され、上質な抹茶の味わいが堪能できます。
- 11時~18時(L.O.)
※土・日・祝日は10時から
不定休 - 0774-25-3335
- 京都府宇治市宇治壱番63
- 宇治駅下車 南西へ徒歩約15分


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- シリーズ29 下鴨神社 輪橋(反り橋)
- シリーズ28 三井寺 村雲橋
- シリーズ27 指月橋
- シリーズ26 東福寺 通天橋
- シリーズ25 上賀茂神社 橋殿
- シリーズ24 喜撰橋
- シリーズ23 星のブランコ
- シリーズ22 泰平閣
- シリーズ21 水晶橋
- シリーズ20 法成橋
- シリーズ19 流れ橋(上津屋橋)
- シリーズ18 天ヶ瀬吊り橋
- シリーズ17 中立売橋
- シリーズ16 近江大橋
- シリーズ15 第11号橋
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- シリーズ12 社家町の石橋
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