京阪沿線の名橋を渡る

京阪沿線の名橋を渡る シリーズ19

流れ橋(上津屋橋)(ながればし(こうづやばし))

時代劇の有名ロケ地だった木造橋が、「撤去を含めた幅広い議論」の末に再生 若一光司

日本列島は南北に細長く、中央を急峻(きゅうしゅん)な山脈が縦断しているため、山地に降った雨は流れの速い川となって、一気に河口へと駆け下る。それゆえ日本の河川は、異常増水や洪水が発生しやすいという宿命を背負っており、それに耐える永久橋を架けるには、莫大な資金が必要となる。

しかし資金不足の場合、最初から「増水時や洪水時には流失する」のを前提とした、簡易な橋が架けられることがある。「流れ橋」と総称されるそれらの橋の多くは、「水の抵抗を受けやすい上部(橋桁・橋板)だけが流出し、橋脚は流されずに残る」という構造になっており、さらに、橋桁や橋板をワイヤーで連結して、流出後に回収・再利用できるようにしておくなど、再建費用を抑える工夫もされている。

日本には大小様々な100基以上の「流れ橋」があり、茨城県の小目沼橋(おめぬまばし)(橋長約100m)、徳島県の浜高房橋(はまたかぼうばし)(約210m、2007年に撤去)、福岡県の船小屋観光橋(約59.5m)などが知られているが、流れ橋の代表格として特に有名なのが、京都府の木津川に架かる「上津屋橋」だ。

八幡市と久御山町を結ぶ「上津屋橋」は、京都府の職員だった技術者の設計で、1953(昭和28)年に完成している。日本の流れ橋の中で最長(約356m)を誇るこの木造橋は、橋桁が橋脚に固定されていないため、水位が上昇すれば橋桁と橋板がそのまま水に浮かんで流される仕組みになっており、これまでに21回におよぶ流出をくり返してきた。

欄干(らんかん)や橋上灯はなく、丸太で組んだ橋脚の上に橋桁を渡しただけの素朴な姿は、まるで数百年前に架設された橋のような印象を与えるため、上津屋橋は時代劇撮影の恰好(かっこう)のロケ地として、絶大な人気を集めてきた。『水戸黄門』『暴れん坊将軍』『桃太郎侍』『必殺仕事人』『座頭市』『銭形平次』等々、数え切れない本数の時代劇がここで撮影され、郷愁感のあるその橋姿が映像を通して全国に知れ渡るにつれ、「上津屋橋」はいつしか、「流れ橋」とだけ呼ばれるようになった。今では、「流れ橋」の正式名称が「上津屋橋」であることを知らない人の方が多いだろう。

私も40年ほど前に初めて渡橋した際には、自分がまるで時代劇中の点景人物と化したような、不思議な錯覚にとらわれた。そして迷うことなく、「私の大好きな日本の橋のベスト10」の一つに、「流れ橋」を加えたのだった。

しかしその「流れ橋」が、流れにくくなった。

近年の気象変化により、2011年以降は豪雨で毎年流失し、特に2014年8月の台風で壊滅的ダメージを受けた流れ橋は、安全性や経済性の面から存廃議論の対象ともなった。それを知った幅広い層から、存続要望の声が寄せられたことから、「流れにくく強化しての存続」が決定したのだ。

◆京都府宇治市宇治金井戸・宇治紅斉 ◆宇治駅下車 南東へ徒歩約30分

こうして本年3月末に再生を果たした「流れ橋」は、橋桁が以前より75cm高くなり、橋脚数がほぼ半減。しかもそれをコンクリート柱で補強するなど、水の抵抗や漂着物の衝突を減らすための、いくつもの改善が加えられている。

その結果、かつての風情が部分的に損なわれたのは否めないが、多くの人に愛されてきた「流れ橋」の基本イメージは、しっかりと温存されている。ホッとしながらも、いささか複雑な思いを禁じえないのは、私ばかりではないだろう。

[流れ橋(上津屋橋)付近をのんびり散策]1.奈良御園神社/2.サイクリングロード/3.石田神社/4.伊佐家住宅/5.やわた流れ橋交流プラザ四季彩館

歴史街道

花の器ギャラリー 喫茶去

はなのうつわぎゃらりー きっさこ

陶芸家の松田一男さんが、自ら考案した「流橋(りゅうきょう)焼」を販売。八幡市の花木であるツバキをモチーフにした可憐な器のほか、ゆう薬に茶や竹、米ぬかを混ぜた独創的なものが並びます。

  • 10時~17時 ※要予約
    不定休
  • 075-981-3235
  • 京都府八幡市上津屋里垣内35
  • 八幡市駅からバス 上津屋下車すぐ
おすすめメニュー・店内写真

八幡屋

やわたや

お昼は、地元の農家から届く新鮮野菜をふんだんに使ったおばんざいがビュッフェ形式で楽しめます。常時30~35品がそろい、中でも九条ネギとともに味わう「国産豚ロースの酒しゃぶ」が人気です。

  • 11時~21時
    ※ランチビュッフェは15時(L.O.)
    月曜(祝日を除く)休業
  • 075-983-7789
  • 京都府八幡市上津屋里垣内56-1
  • 八幡市駅からバス 上津屋下車すぐ
おすすめメニュー・店内写真

レンタサイクル

れんたさいくる

八幡市駅改札口を出てすぐの観光案内所でレンタルできるワンコイン(500円)の自転車。八幡市内の松花堂庭園や四季彩館でも返却でき、各所で観光マップも配布しています。

  • 9時~16時30分
  • 075-981-1141(観光案内所)
  • 京都府八幡市八幡高坊8-7
  • 八幡市駅下車 徒歩すぐ
おすすめメニュー・店内写真
制作:2016年9月
価格・営業時間・電話番号等が変更される場合がありますので、
おでかけ時には、ご確認くださいますようお願い申し上げます。
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