京阪沿線の名橋を渡る

京阪沿線の名橋を渡る シリーズ10

淀屋橋(よどやばし)

大阪の近代化の象徴でもある淀屋橋は、なぜ「淀屋橋」と呼ばれているのか? 若一光司

大阪市北区の中之島といえば、「大阪のビジネスと文化の中心ゾーン」として広く知られているが、この地は江戸時代を迎えるまで、堂島川と土佐堀川に挟まれた中州の湿地帯で、ススキや葦(よし)が密生するばかりだった。

人が住むこともできなかったその無用の地が、実は「物流拠点としての最適地」であることをいち早く見抜いたのが、江戸時代初期の豪商・淀屋常安(じょうあん)であった。常安は5年の歳月をかけて湿地帯を開拓し、美しく整地された細長い島(中之島)へと変貌(へんぼう)させた。

「水運の利便性」に着目した常安の狙いは、見事に的中。中之島にはそれ以降、諸藩の蔵屋敷が集中的に建設されるようになり、商都大阪の発展を支える一大拠点となった。

そして、常安の跡を継いだ淀屋个庵(こあん)は、諸大名の蔵屋敷に集積される蔵米の販売を一手に引き請けて、土佐堀川南岸に米市場を設立。その市場への利便性を図るために自費で架けた橋が「淀屋橋」の始まりだとされている。

淀屋个庵はまた、青物市場や魚市場の開設にも尽力し、巨万の富を築き上げた。淀屋橋のそばにあったその邸宅と巨大店舗の総面積は、甲子園球場の3倍にも匹敵したという。

しかし、淀屋の歴史は短かった。桁外れの浪費家だった5代目淀屋辰五郎の時代に、「町人の分限を超えた贅沢(ぜいたく)な生活が目に余る」との倹約令違反で、幕府に全財産を没収され、大阪から追放されてしまったのだ。また、淀屋が諸大名に貸し付けていた100兆円以上の金も帳消しにされた。幕府が淀屋をこうした闕所(けっしょ:財産刑)に処した本当の理由は、「大名貸し」の増大によって大名が商人の実質的支配下に置かれるという「身分の転倒」を見過ごせなかったからだ、との説もある。

ともあれ、罪人とされてしまったからなのか、淀屋一族に関する現存史料は極めて乏しく、淀屋橋に関する資料も皆無に近い。最初に架けられた橋がどのような長さや形のものだったのかも、まったく知りようがない。

ただ、淀屋が滅びた後も淀屋橋だけは架け替えられながら存続し、大阪市の第1次都市計画事業による御堂筋の拡幅に伴い、1935(昭和10)年に現在の姿となった。

重厚さの中にも瀟洒(しょうしゃ)な美しさが見事なそのデザインは、全国からの懸賞募集で一等賞を獲得したデザインを、「関西建築界の父」と言われた武田五一らが実施案化したもので、鉄筋コンクリートによるアーチ橋でありながら、躯体(くたい)側面には花崗岩(かこうがん)が施されている。

◆大阪市中央区北浜4 ◆淀屋橋駅下車 北西へすぐ

水都大阪を象徴する中之島一帯の都市景観美を形成する上で、淀屋橋が果たしてきた役割には絶大なものがあり、それが高く評価されて、2008(平成20)年には国の重要文化財にも指定されたが、最近ではこの橋が「豪商淀屋ゆかりの橋」であることを知らない人も多いようだ。

ちなみに、中之島周辺の天満橋・天神橋・難波橋はいずれも、徳川幕府の公費で維持管理されてきた「公儀橋(こうぎばし)」だが、淀屋橋は、地元の町民たちが私費で支えてきた「町橋」の代表格である。そうした意味も含めて、「もっとも大阪らしい橋は?」と問われれば、私は迷うことなく、「淀屋橋!」と答える。

[淀屋橋付近をのんびり散策]1.中之島緑道の彫刻「TWO RING 空間の軌跡」/2.堂島米市場跡/3.日本銀行大阪支店/4.適塾/5.淀屋の屋敷跡

歴史街道

アンティカ オステリア ダル ポンピエーレ

あんてぃか おすてりあ だる ぽんぴえーれ

1925(大正14)年に建てられた元消防署だったレトロな建物で、本格派イタリアンを味わえます。毎朝、市場で吟味した旬の食材をふんだんに使用。お昼は手軽なパスタランチ、コース仕立てのA・Bランチから選べます(A・Bランチのみ予約可)。

  • 11時30分~14時(L.O.)/17時30分~21時30分(L.O.)
    日曜(祝日を除く)休業
  • 06-4706-1190
  • 大阪市中央区今橋4-5-19
  • 淀屋橋駅下車 南西へ徒歩約5分
おすすめメニュー・店内写真

神宗

かんそう

1781(天明元)年に海産物問屋として創業した、塩昆布で有名な老舗。北海道道南産の天然真昆布のみを使い、自然の味わいを大切に作っています。カフェでは軽食も。

  • 9時30分~19時※土曜は16時まで
    日・祝日休業
    カフェ:10時~17時30分(L.O.)
    土・日・祝日休業
  • 06-6201-2700
  • 大阪市中央区高麗橋3-4-10
  • 淀屋橋駅下車 南へ徒歩約5分
おすすめメニュー・店内写真

Mole & Hosei Coffees

もーる あんど ほそい こーひーず

国の登録有形文化財である芝川ビルの地階にある喫茶店で、金庫室を改装したシンプルかつ洗練された空間。注文を受けてから豆をひいていれるコーヒーと、自家製スイーツでゆったりとしたひとときを過ごせます。

  • 11時~20時(L.O.)※土・日曜は9時~18時(L.O.)
    月曜休業 ※祝日不定休
  • 06-6232-3616
  • 大阪市中央区伏見町3-3-3
  • 淀屋橋駅下車 南へ徒歩約5分
おすすめメニュー・店内写真
制作:2014年5月
価格・営業時間・電話番号等が変更される場合がありますので、
おでかけ時には、ご確認くださいますようお願い申し上げます。
バックナンバー
シリーズ29 下鴨神社 輪橋(反り橋)
シリーズ28 三井寺 村雲橋
シリーズ27 指月橋
シリーズ26 東福寺 通天橋
シリーズ25 上賀茂神社 橋殿
シリーズ24 喜撰橋
シリーズ23 星のブランコ
シリーズ22 泰平閣
シリーズ21 水晶橋
シリーズ20 法成橋
シリーズ19 流れ橋(上津屋橋)
シリーズ18 天ヶ瀬吊り橋
シリーズ17 中立売橋
シリーズ16 近江大橋
シリーズ15 第11号橋
シリーズ14 渡月橋
シリーズ13 川崎橋
シリーズ12 社家町の石橋
シリーズ11 大宮橋
シリーズ10 淀屋橋
シリーズ9 七条大橋
シリーズ8 安居橋
シリーズ7 梶取橋
シリーズ6 一本橋
シリーズ5 難波橋
シリーズ4 祇園巽橋
シリーズ3 瀬田の唐橋
シリーズ2 宇治橋
シリーズ1 三条大橋
  • おすすめ!
  • おでかけナビ
  • 京阪沿線って?
  • K PRESSプレゼント
  • ぶらり街道めぐり
  • 京阪・文化フォーラム
  • 京阪グループおトク情報
  • 他社線から京阪電車へ
  • 京阪グループ沿線の遠足・社会見学施設のご案内
  • ひらかたパーク
  • 京阪グループのホテル・レジャー予約
  • 比叡山へいこう!
  • アートエリア ビーワン

ページの先頭へ