2009年は演劇界や映画界で、石川五右衛門を主人公とする作品が人気を博し、ちょっとしたブームとなった。私が出演しているテレビ番組でも五右衛門の特集が組まれ、私が取材レポーターを務めたが、その過程で、「浮島十三重石塔の上から5 層目の笠石が、五右衛門に盗まれた後、藤森(ふじのもり)神社の手水鉢(ちょうずばち)の台石にされている」との伝承を、初めて耳にした。
宇治市の、平等院にほど近い宇治川の中洲(なかす)に建つ浮島十三重石塔は、私もよく知っている。おそらく十数回は対面しているだろうが、その5層目の笠石がどうなっているのか、意識して注目したことはなかった。
そこで京都市伏見区の藤森神社を訪ね、手水鉢の台石を確認してみると、たしかに、浮島十三重石塔の笠石とそっくりの形状で、サイズ的にも合致する。どうやら、十三重石塔に由来すると見て、間違いなさそうだった。
なのでいま一度、浮島十三重石塔を凝視してみると、なるほど5層目の笠石だけは、他層に比していささか新しさが感じられ、創建時のものとは異なっているように思える。
ちなみに、石川五右衛門は1594(文禄3)年夏に、京都の三条河原で釜煎りの刑に処されているが、史料が乏しく、実像は謎に包まれている。浄瑠璃(じょうるり)や歌舞伎は五右衛門を「義賊」や「英雄的盗賊」として描いているが、これはみな、後世のフィクションである。そして、浮島十三重石塔にまつわる五右衛門の伝承も、やはり作り話だった。
宇治川の中洲には2つの島があり、「中の島」と総称されるが、上流側の「塔の島」にそびえる浮島十三重石塔は、高さが15.2m。現存する石塔の中では、日本最大にして最古で、国の重要文化財にも指定されている。
中の島の下流に架かる宇治橋の度重なる流出を、「魚霊の祟(たたり)」だと考えた高僧・叡尊が、その供養と、宇治川での殺生の戒めのために浮島十三重石塔を建立したのは、1284(弘安7)年のこと。基礎に縁起の銘文、初層の石芯に金剛界4仏の大梵字(ぼんじ)を刻んだこの十三重石塔は、雄渾(ゆうこん)なる鎌倉期の精神を見事に体現し、見る者を凛(りん)とさせずにはおかない。
しかし、石塔の建立後も宇治川の氾濫(はんらん)は繰り返され、1756(宝暦6)年の大洪水では、浮島十三重石塔も倒壊。以後150年間にわたり、川の中に没したままになっていた。
それが1907(明治40)年ごろに川底から引き上げられ、塔として再建されのだが、なぜか5 層目の笠石だけは行方不明のまま、発見されなかった。おそらく、それ以前に何者かの手で引き上げられ、やがて藤森神社の台石にされたと思えるが、その経緯の不明さが、五右衛門が盗んだとの伝説を生じさせたのだろう。
中の島全体は「宇治公園」として整備され、春の「桜まつり」、夏の「花火大会」、秋の「観月茶会」や「茶まつり」など、四季各々の催しの舞台となってきた。瀟洒(しょうしゃ)に移ろいゆくその風景の中で、常に屹然(きつぜん)とした風格を湛(たた)えているのが、浮島十三重石塔だ。まさしく、宇治の風土と一体と化した名塔である。
京阪宇治駅前 駿河屋
けいはんうじえきまえ するがや
宇治川のほとりで営む、茶だんごの製造直売店。長年通うファンも多い名物・茶だんごは宇治産の抹茶を使い、豊かな香りともっちりとした弾力のある歯応えが絶品。持ち帰りのほか、店内でも味わえます。
米粉にもこだわった「茶だんご・1本/85円」(手前)。ういろうに大納言小豆をのせた「水無月(みなづき)/160円」(奥)
- 9時~19時 木曜不定休 ※3/4(木)休業
- 0120-36-8191
- www.chadango.jp
- 宇治駅下車南東へすぐ

石臼挽き十割そば しゅばく
いしうすひきじゅうわりそば しゅばく
つなぎを使わずそば粉100 %で作る十割そばの店。季節に応じて北海道・茨城県・新潟県などいろいろな産地のそばの実を仕入れ、店主自ら石臼で挽いて手打ちします。デザートにはそばの実アイスがオススメ。
長野県産の辛味大根と、利尻昆布とカツオのダシでいただく「辛味大根おろし/950円」
- 11時30分~16時30分(売り切れ次第終了)
月曜(祝・休日は翌日)休業 - 0774-22-5470
- 宇治駅下車南東へすぐ

cucina italiana TRE VERDI
くっちーな いたりあーな とれゔぇるでぃ
木の温もりが感じられるスタイリッシュな内装のイタリア料理店。昼はコースのほか、パスタランチや数量限定のワンプレートランチがスタンバイ。旬の野菜をふんだんに盛り込んだ、滋味あふれる料理が楽しめます。
「お昼のコース/2,400円」より前菜・スープ・パスタ・本日の魚料理。メーンは肉か魚が選べます。自家製パン・ドリンク付き
- 11時30分~14時30分(L.O.)17時30分~21時(L.O.)
水曜(祝日は不定)休業 ※ほか不定休あり - 0774-20-9545
- 宇治駅下車南東へすぐ

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