京阪沿線に此の塔あり

京阪沿線に此の塔あり シリーズ5

醍醐寺 五重塔

世界的な哲学者を呆然とさせた京都最古の五重塔の、奇跡的な美しさ 若一光司

京都市伏見区の醍醐寺は、「文化財の宝庫」として知られている。世界文化遺産にも登録された同寺には現在、41点の国宝と、39,363点もの重要文化財が所蔵されているからだ。

というと、「2008年度までに指定された重要文化財の件数は、国宝を含めて12,655件だから、数が合わないのでは?」と、疑問に思われる方がおられるかもしれない。

なので正確に記しておくと、醍醐寺が所蔵する重要文化財は、建造物から美術工芸品に至る幅広い分野に及んでいるが、その中には、宋版一切経(さいきょう:6,096帖)や、醍醐寺聖教類(16,441点)、醍醐寺文書(16,403通)など、1件で膨大な点数になるものも含まれている。それらを総計しての、39,363点なのである。

醍醐寺 五重塔
◆ 9時~16時30分(受付)◆ 大人600円・中高生300円※三宝院拝観料は別途必要◆ 075-571-0002◆ www.daigoji.jp◆ 六地蔵駅・京阪山科駅から京阪バス2(2A)系統醍醐三宝院下車すぐ/地下鉄醍醐駅下車 東へ徒歩約15分

古寺名刹の中にも、様々な時代の試練を経ることで、貴重な寺宝を散逸させてきた寺院が少なくない。とりわけ、明治維新期に仏教排斥(はいせき)運動(廃仏毀釈{はいぶつきしゃく})が吹き荒れた際には、存亡の危機に直面した多くの寺院が、やむなく、宝物である文化財を手放すしかない状況へと、追い込まれた。

しかし醍醐寺は、開山から1100年以上にわたり、信仰の証しでもある膨大な質量の文化財を、護持し続けてきた。その事実のゆるぎなさに、私は強く心を打たれる。

咲き誇る桜の見事さや、秀吉の「醍醐の花見に」ちなんだ「豊太閤(ほうたいこう)花見行列」、無数の灯篭(とうろう)や提灯(ちょうちん)の光が幻想的な「醍醐山万灯会(まんとうえ)」、それに、境内全体を鮮やかに彩る紅葉等々、四季折々の魅力の尽きない醍醐寺だが、私がもっとも惹(ひ)かれるのは、清瀧宮(せいりゅうぐう)拝殿や薬師堂、金堂、五重塔、三宝院表書院(さんぽういんおもてしょいん)など、国宝建造物のすばらしさだ。

その中でも圧倒的な存在なのが五重塔で、同塔はいつの時代からか、法隆寺と瑠璃光寺(るりこうじ)の五重塔と共に、「日本三大名塔」に数えられてきた。しかし私には、「構造物でしか生み出しようのない美しさを、極限まで追求しきっていると」いう点において、醍醐寺五重塔こそが「日本一の塔」であるように思える。

951(天暦5年)に完成したこの五重塔は、朱雀(すざく)天皇が(父醍醐天皇の)冥福(めいふく)を祈って起工したもので、醍醐寺で唯一、創建当時の姿をとどめている。もちろん、京都府内で最古の木造建築でもあるが、いまも瑞々(みずみず)しく秀麗(しゅうれい)なその姿は、密教における不動心の在り様を絶佳(ぜっか)に表象(ひょうしょう)して、見る者の心を釘付けにする。

醍醐寺五重塔が何より優れているのは、細部の完成度への徹底したこだわりを感じさせる木組みの精緻(せいち)さや、塔の3分の1の高さを占める相輪(そうりん:塔頂の金属製の部分の)大胆さなど、相反する幾つもの要素が、強烈な意志力で統合され、空前絶後の全体バランスを実現させていることにある。これはもう、奇跡としか言いようのない領域である。

フランスの哲学者サルトルは、この塔を前にして言葉もなく、ただただ呆然と立ちつくしたと伝えられているが、その「呆然」こそがまさに、「頂点の造形美がもたらす至福」そのものではなかっただろうか。

醍醐寺界隈をのんびり散策

そば処 萬寿亭 橘

まんじゅてい たちばな

もとは寺侍の屋敷だった築約400年の建物。北海道産のそば粉を使用した透明感ある二八そばがいただけます。毎朝、上質の利尻昆布と本枯れカツオなど5種類の節を削ってダシを引く、極上のつゆと一緒にどうぞ。

エビと季節野菜の天ぷらがセットの「天ざる/1,400円」

  • 11時~15時 ※売り切れ次第終了 木・金曜不定休
  • 地下鉄小野駅下車 南東へ徒歩約5分
    ※ 店内はセルフサービス。小学生以下は入店不可
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手作り洋食 かりんや

かりんや

ソースやドレッシングまですべてが店主の手作りという丁寧な仕事ぶりが伝わる昔ながらの洋食店。人気の手ごねハンバーグは4種類のソースから選べます。ネルドリップでいれる本格コーヒーも魅力。

メーンにご飯・みそ汁が付いた「日替わり定食/700円」。プラス100円でコーヒーが付きます

  • 11時30分~17時 日曜休業
  • 075-574-1534
  • 地下鉄醍醐駅下車 南東へ徒歩約10分
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京栄堂 醍醐店

きょうえいどう

1963(昭和38)年に八つ橋の専門店として創業。北海道産の小豆や国産の米粉など、質の高い原料を厳選。しっかりとコシのある皮と上品に香るニッキ、ふっくらした粒あんが奏でる、八つ橋の妙味が楽しめます。

「小町花伝(ニッキ・抹茶)/各47円」。風味を守るため、1個ずつ個別包装されています

  • 9時~18時
  • 075-574-2028
  • 地下鉄醍醐駅下車 北東へ徒歩約10分
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制作:2009年5月
価格・営業時間・電話番号等が変更される場合がありますので、
おでかけ時には、ご確認くださいますようお願い申し上げます。
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