京阪沿線に此の塔あり

京阪沿線に此の塔あり シリーズ11

三室戸寺 三重塔

変転の歴史を経てまさに適地に端座する三重塔 若一光司

日本における仏塔建立は6世紀の飛鳥(あすか)時代に始まり、蘇我馬子(そがのうまこ)の造営による飛鳥寺の五重塔が、その最初だと考えられている。以来、日本各地に多数の仏塔が築かれ、いまも過半が現存するが、それらの塔は、「建立の地から動ぜぬ塔」と「変転を経て現在地に収まった塔」とに、大別できる。その後者の代表格とも言えるのが、三室戸寺の三重塔だ。

京都有数の「花寺」で、紅葉の名所としても知られる三室戸寺は、宝亀(ほうき)年間(700~781年)の開創と伝えられる古刹(こさつ)で、西国三十三所観音霊場の、第10番札所(ふだしょ)でもある。

三室戸寺 三重塔
◆ 8時30分~15時30分(受付)※12/29(水)~31(金)は拝観休止 ◆大人500円・小中生300円※宝物殿(毎月17日公開)は別途300円必要 ◆0774-21-2067 ◆www.mimurotoji.com ◆三室戸駅下車東へ徒歩約15分

宇治市の明星山(みょうじょうざん)の山腹を寺域とする三室戸寺には、趣向を凝らした5千坪もの回遊式大庭園が広がり、2万株を擁する「つつじ園」や、1万株を配した「あじさい園」などが、関西屈指の規模と美しさで、参詣者を迎えてくれる。加えて、平安時代に西行法師(さいぎょうほうし)が、「暮はつる 秋のかたみにしばしみん紅葉ちらす三室戸の山」と詠み、江戸時代には「宇治十二景」の一つ(三室戸の紅楓<こうふう>)にも数えられたほどの紅葉が、いまも変わることのない濃密さで、秋の風情を醸し出す。

本山修験(しゅげん)宗の別格本山である三室戸寺は、寛正年間(1460~1466年)の火災で伽藍(がらん)を焼失。再興が果たされた後の1573(天正元)年にも、織田信長の焼き討ちにあっているため、現在の本堂や阿弥陀堂、鐘楼(しょうろう)は、江戸時代になってから建立されたもの。

三重塔も同じ江戸期の作だが、この塔はかつて、播磨国(はりまのくに)(兵庫県佐用郡三日月町<さようぐんみかづきちょう>)の高蔵寺(こうぞうじ)に立っていた。高蔵寺は725(神亀<じんき>2)年の創建とされるが、近世に三日月藩主・森家の菩提寺となった後、初代藩主の森長俊が1704(元禄17)年に、この塔を建立した。

しかし、明治維新後に藩主が領地を去り、廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)の波に直撃されるようになると、高蔵寺も例に漏れず資金難に直面。苦境を脱するために、三重塔も売却されることとなった。それを買い受けたのが、三室戸寺であった。

高さ16メートルの三重塔は、こうして1910(明治43)年に三室戸寺の参道西側に移築され、さらに1977(昭和52)年ごろ、鐘楼の東隣の現在地へと移された。同時に修復も施されたが、これ以上ないほどの適地に端座(たんざ)する三重塔を眺めていると、そうした変転の歴史が、にわかに信じがたく思えてくる。

各層の逓減率(ていげんりつ)が低く(つまり上下の屋根の大きさがそれほど変わらない)、軒が浅く、相輪(そうりん)が比較的短い等、江戸時代ならではの特徴を備えたこの三重塔は、眺める位置によっても実に多様に、その印象を変化させる。

ごく普通のアプローチで、本堂から阿弥陀堂、鐘楼の前を抜けて正面に見据える三重塔も、端正で魅力的だが、私は何より、谷を挟んだ東側斜面から眺めた三重塔が、大好きだ。

一切の装飾も権威も排し、ただただ質実の極みの如(ごと)くにたたずむその姿が、四季の移ろいと見事に融合し、何か根源的な、仏塔本来のありがたさを感じさせてくれるから。

三室戸寺界隈をのんびり散策

イタリア料理 La Vita

いたりありょうり らゔぃーた

イタリアの田舎をイメージし、オーナー夫妻が内装まで手掛けたレストラン。店内の雰囲気同様、気取らず心温まるようなイタリア料理がいただけます。伝統的で田舎風のひと皿は、素朴で懐かしい味わい。

パスタ4種類かピザからメーンを選べる「ラヴィータランチ/1,380円」。前菜・デザート2品・ドリンク付き

  • 11時30分~14時(L.O.)
    18時~21時(L.O.)
    月(祝日は翌日)・第2火曜、
    12/29~1/5休業
  • 0774-20-5018
  • lavita-uji.com
  • 三室戸駅下車 北東へ徒歩約10分
写真

CHEZ HAGATA

しぇ あがた

抹茶を取り入れたケーキが人気の洋菓子店。看板商品「挽きたて抹茶の贅沢テリーヌ」は、抹茶とホワイトチョコレートを使い、しっとり焼き上げた逸品です。常時20種類ほどそろう焼き菓子もお土産におすすめ。

手前から1日30本限定の「挽きたて抹茶の贅沢テリーヌ(ハーフ)/1,995円」と「朝焼きシュークリーム・1個/180円」

  • 10時~19時
    月・火曜(祝日、12/27・28、1/3・4を除く)休業
  • 0774-20-6025
  • www.kyoto-sweet.jp
  • 三室戸駅下車 北東へ徒歩約5分
写真

茶匠 ふじ井

ちゃしょう ふじい

宇治茶の生産農家が手掛けるカフェ。茶団子や茶そばなど、宇治茶をぜいたくに使った一品が味わえます。濃厚なお茶の香りがあふれるロールケーキなどのスイーツや自家栽培の茶葉約40種も販売。

抹茶の苦みとあずきの甘さが合う「宇治抹茶ぜんざい/770円」(手前)

  • 10時~17時30分(L.O.)※販売は18時まで
    金・第3木曜、12/30(木)~1/5(水)休業
  • 0774-28-4800
  • www.tea-fujii.jp
  • 三室戸駅下車 東へ徒歩約5分
写真
制作:2010年11月
価格・営業時間・電話番号等が変更される場合がありますので、
おでかけ時には、ご確認くださいますようお願い申し上げます。
バックナンバー
シリーズ15 清水寺 三重塔
シリーズ14 比叡山延暦寺 根本如法塔
シリーズ13 宝塔寺 多宝塔
シリーズ12 四天王寺 五重塔
シリーズ11 三室戸寺 三重塔
シリーズ10 大覚寺 多宝塔
シリーズ9 真如堂 三重塔
シリーズ8 浮島十三重石塔
シリーズ7 仁和寺 五重塔
シリーズ6 比叡山延暦寺 法華総持院東塔
シリーズ5 醍醐寺 五重塔
シリーズ4 石清水八幡宮五輪塔
シリーズ3 法観寺の八坂の塔
シリーズ2 石山寺の多宝塔
シリーズ1 東寺の五重塔
  • おすすめ!
  • おでかけナビ
  • 京阪沿線って?
  • K PRESSプレゼント
  • ぶらり街道めぐり
  • 京阪・文化フォーラム
  • 京阪グループおトク情報
  • 他社線から京阪電車へ
  • 京阪グループ沿線の遠足・社会見学施設のご案内
  • ひらかたパーク
  • 京阪グループのホテル・レジャー予約
  • 比叡山へいこう!
  • アートエリア ビーワン

ページの先頭へ