洋の東西や時代の新旧を問わず、モノの形の基本は「丸・三角・四角」である。
これらの図形は有史以来、世界中の美術史に登場し続けてきたし、現代でも世界の国旗や交通標識のほとんどが、「丸・三角・四角」で占められている。これは、人間の脳の特性に根ざしてのことらしい。
私たちが何かモノを見たとき、脳はまずその全体イメージを「丸・三角・四角」の図形として把握し、同じ認識プロセスを細部へと応用・反復することで、全体としての複雑な形体を理解する。つまり、私たちの脳にはあらかじめ、丸や三角や四角に強く反応する特定の脳細胞が存在するのだという。
たしかにそうかもしれない。先日、石清水八幡宮(いわしみずはちまんぐう)で日本最大級の五輪塔と対面したときに、私の胸を貫いた鮮烈な感動は、何かそうした根源的な理由をもってしか説明できないような気がする。この超弩級(ちょうどきゅう)の五輪塔は、あらがいようもない実存感と完結度の高さにおいて、まったく比類がない。
五輪塔は仏塔の一種で、わが国では平安後期から江戸時代に至る長期間、おもに供養塔や墓として造立(ぞうりゅう)されてきた。材質的には圧倒的に石材が多いが、木製や金属製、鉱物製(水晶)のものもある。
五輪塔は密教思想にもとづき、「地・水・火・風・空」という「宇宙の五大要素」を形象化している。下から一段目が地輪(四角)、二段目が水輪(丸)、三段目が火輪(三角)、四段目が風輪(半月)、五段目が空輪(宝珠)とされ、「五輪」をあわせて、「すべての徳を具備(ぐび)する」という意味をもつ。
一般的な墓石ほどの大きさの五輪塔が多い中で、奈良県・西大寺の五輪塔(高さ3.35m)や、兵庫県・須磨一ノ谷の敦盛塚五輪塔(高さ約4m)など、巨大な五輪塔もいくつか知られるが、約6mもの高さを誇る石清水八幡宮五輪塔は、まさに別格の迫力と巨大さで、見る者を圧倒せずにはおかない。もちろん、日本最大級である。
しかも、鎌倉時代のものと推定されるこの五輪塔には、刻銘(こくめい)がないため、だれがどのような意図で製作したのか、謎のままである。
「宋(中国)と貿易していた尼崎の商人が、石清水八幡宮に祈って海難を逃れたため、その報恩で建立した」との伝承から、「航海記念塔」とも呼ばれているが、「鎌倉時代の武士の霊を慰めるための武者塚だ」、「石清水八幡宮を勧請(かんじょう)した行教律師(ぎょうきょうりっし)の墓である」等々諸説があり、定かなことはわからない。
しかし、五輪塔の由来やこの塔をめぐる来歴など、いかなる予備知識もなしで向き合ってこそ、石清水八幡宮五輪塔の「造形物としてのすごさ」が、実感される。それは、ピラミッドなどとほとんど同種の感動を、与えてくれる。
人間の視覚認識の基底をなす「丸・三角・四角」に、これほどまでの生々しさと威圧で肉迫されるというのは、まことに希有(けう)な体験といえるだろう。ただ向き合い、凝視しているだけで、意識の本元にある何かが呼び覚まされる。
朝日屋
あさひや
100年以上続く庶民的な食堂。めん類から丼、定食、造り、焼鳥まで幅広いメニューがそろっていて、昼も夜も楽しめます。手間ひまかけて作る「鯖(さば)寿司」や「八幡(やわた)巻」(要予約)はグルメにも評判の逸品。
厳選した焼津産の鯖に、利尻の白板昆布を用いた「鯖寿司/1人前・1,360円、1本・2,990円」
- 11時~21時30分(L.O.) 木曜休業
- 075-981-3202
- 八幡市駅下車すぐ

やわた 走井餅老舗
やわた はしりいもちろうほ
1764(明和元)年に大津市追分の走井の名水を使って作られたのが最初という「走井餅」。今では石清水八幡宮の門前名物として定着しています。江戸時代は旅籠(はたご)だったレトロな店内で、ぜんざいなどの甘味が楽しめます。
「抹茶と走井餅/550円」。走井餅は北海道産大納言小豆をなめらかで伸びがよい羽二重餅で包んだ素朴な後味
- 8時~18時 月曜(祝日は翌日)休業
- 075-981-0154
- www.yawata-hashiriimochi.com
- 八幡市駅下車 南東へすぐ

カフェ キャンドル
かふぇ きゃんどる
グランドピアノやコントラバスのほか、発明王エジソンゆかりのグッズが並ぶ異色の町角カフェ。切れ味のあるオリジナルブレンドコーヒーや軽食を味わいながら、ゆったりと過ごせます。週末にはジャズライブも。
「ソースかつライス(サラダ・スープ付き)/800円」は、豚ロースのサクッとした食感と控え目なソースが絶妙
- 7時~19時(L.O.)
※土・日・祝日は9時~19時(L.O.)
火曜(祝日を除く)休業 - 075-981-8330
- www.eonet.ne.jp/~candle
- 八幡市駅下車すぐ

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