京都市は11の行政区で構成されるが、その中でもっとも人口が多い(約284,000人)のが、伏見区だ。市内屈指の住宅地である伏見区は、門前町や城下町、それに、水運の拠点としても栄えた歴史から、数多くの神社仏閣・名所旧跡を有している。とくに知られているのが、伏見稲荷大社と醍醐寺だろうが、昨年はNHKの大河ドラマ『龍馬伝』の影響もあって、龍馬が定宿としていた寺田屋の周辺も、全国からの観光客でにぎわった。
他にも、国宝の阿弥陀堂や阿弥陀如来像のある法界寺、駈馬神事で有名な藤森神社、南浜界隈の酒蔵の町並みなど、人気の観光スポットが少なくないが、「一味違った伏見区の風情を楽しみたい」という方にぜひお勧めしたいのが、深草宝塔寺山町にある、宝塔寺だ。
京阪本線の深草駅から、琵琶湖疏水に架かる橋を渡り、緑の多い住宅地の中を東に10分も歩けば、宝塔寺の総門が見えてくる。
室町時代中期に建立されたこの総門(四脚門)をくぐると、100mほどの石畳の参道がまっすぐ、仁王門まで伸びている。その両側には、大雲寺や直勝寺、霊光寺、慈雲院などの塔頭が並んでいるが、宝塔寺の歴史は古く、関白だった藤原基経により、平安時代の845~851年に創建されたと伝えられる。
当初は真言宗極楽寺と称し、源氏物語の舞台の一つともなったが、鎌倉時代末期に日蓮宗に改宗し、やがて宝塔寺と名を変えた。
参道のゆるやかな傾斜を登り、修復されて朱色も鮮やかな仁王門を抜け、両脇に放生池を見ながら本堂前へと進むと、そこには実に静謐な空間が広がっている。
宝塔寺は観光寺院ではないため、雑誌やテレビでほとんど紹介されることがなく、いつ訪れても、人影はまばらだ。それゆえ決して人に邪魔されることなく、自分のペースで思いのままに参拝できる幸福を、つくづく実感できる寺でもある。
七面山中腹に大きな境内を誇る宝塔寺では、本堂と総門と多宝塔が、国の重要文化財となっている。その中で唯一、応仁の乱の兵火を逃れた建物が、本堂南側の多宝塔だ。 同塔は、京都市内に現存する多宝塔の中では最古のもので、1438(永享10)年以前の建立とされる。
高さが11.4mと小ぶりながらも、方形の初層と円形の二層がおりなすバランスの妙や、「行基葺」と呼ばれる特異な屋根形式により、独特の印象の強さを感じさせる。多宝塔特有の優美さに加えて、メリハリの効いた、凛とした存在感をたたえているのだ。
ちなみに、「行基葺」では、片方の端が細くなった丸瓦を重ねてゆくため、重なった部分の瓦の厚みが表面に出て、屋根全体を雄々しく見せる。そうした「繊細さに反する要素」をも巧みに包含することで、宝塔寺の多宝塔は独自の境地を顕現し、見る者の心に余韻を残す。
ゆっくりと多宝塔を拝した後は、さらに、七面山から深草墓園へと足をのばしたい。このコースは、折々の自然や眺望変化を楽しむことのできる、恰好の散策路となっている。

SUZU PAN
スズ パン
長時間熟成され、ふっくらと焼き上げられた無添加食パンや、スパイスの調合からこだわったカレーパンなど、常時50~60種類のパンが並びます。中には京水菜や竹炭を使った変わり種や季節限定の新作も。
(手前から)人気の「カレーパン」、「鈴木さん家のクリームパン」、「フレンチくん2号」
- 7時~19時 月曜休業
- 075-646-3380
- 深草駅下車 南西へ徒歩約5分

栄泉堂
えいせんどう
名物は、もちっ、ふわっとした軟らかな食感がたまらない「みたらしだんご」。1日限定250本で、昼過ぎには売り切れるほどの人気ぶり。どら焼き風の「深草雀」もおすすめです。
当代が製法に磨きをかけた「みたらしだんご」。全国菓子博覧会の金賞に輝いたことも
- 9時~19時 火曜休業
- 075-641-3462
- 深草駅下車 南へ徒歩約5分

みんなのカフェ ちいろば
伏見の町家の雰囲気を残したカフェ。添加物を極力控えたごはんやおかず、スイーツなどがいただけます。奥には個展やコンサートなど、多彩なイベントが行われるレンタルスペースも。
月・水・金曜限定のヘルシーな「プチベジタリアンランチ」。火・木・土曜には素材にこだわった「ちいろばランチ」を
- 9時~17時30分(L.O.) 日・祝日休業
- 075-643-2476
- 藤森駅下車 東へすぐ

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おでかけ時には、ご確認くださいますようお願い申し上げます。