第1部は「宗教」を題材にした落語を3席。笑福亭たま・林家染雀・笑福亭福笑の三師匠が、仏教に神道、キリスト教など、信仰する人々の熱心さと度の過ぎた時のおかしさを、巧みな話術で笑いの世界へと誘います。第2部は相愛大学教授の釈先生・笑福亭福笑師匠・髙島先生の3人で、仏教と落語の関わりについてユーモアを交えながら鼎談が行われました。
- 平成24年11月17日(土)14時~16時30分
- 龍谷大学 顕真館(京阪電車深草駅下車 徒歩約5分)
第1部 [落語]
- 陰陽師
- 落語家
笑福亭 たま(しょうふくてい たま)
- 宗論
- 落語家
林家 染雀(はやしや そめじゃく)
- 宗教ウォーズ
- 落語家
笑福亭 福笑(しょうふくてい ふくしょう)
第2部 [鼎談(ていだん)]
- 相愛大学教授
釈 徹宗(しゃく てっしゅう)
- 落語家
笑福亭 福笑(しょうふくてい ふくしょう)
- 大阪大学招聘教授
高島 幸次(たかしま こうじ)
京阪沿線の文化や歴史を広く紹介し、その魅力を再発見していただく機会となる京阪・文化フォーラム。第30回の会場は、龍谷大学深草キャンパスにある顕真館(けんしんかん)です。
深草駅から西へおよそ5分ほどのところにある深草キャンパスは、レンガ色の壁面とガラス張りの建物が織りなす印象的な空間。1960年に親鸞聖人の七百回忌記念として開設されました。
この学舎の中でも中心的な存在となるのが顕真館です。
■第1部 落語
第1部は落語を3席。フォーラムのテーマが「信仰とお笑いの狭間で落語」であることから、「信仰」をテーマとした落語です。陰陽師・安倍晴明(あべのせいめい)の子孫が見せる何やらおかしな陰陽術の話や、熱心な浄土真宗の門徒である商家の主人と、キリスト教信者になったその息子が自分の信じる神様の尊さを持ち上げ相手をやり込めようとする話、そして、とある町で繰り広げられる仏教と神道のあくなき戦いの話を披露。
まじめに信仰を語りつつも、主張がどんどんおかしくなったり矛盾していく登場人物たちが楽しく豊かに表現され、笑いの絶えないひとときとなっていました。
■第2部 鼎談
第2部は、釈先生、髙島先生、福笑師匠の3人による鼎談です。
まず、宗教と芸能についての研究者であり、ご自身が住職で、お寺でも落語会を開催するほどの落語好きである釈先生の感想を中心に、第1部の落語3席について触れていきます。
その中で印象的だったのが、落語というのは日本仏教の「お説教」から生まれたものだということ。僧侶が説法をする時、話の中に笑いを取り入れ、聞きやすくしたのが元になっていて、仏教の形態を色濃く残した日本独自の希有な芸能なのです。落語の「高座」も元は仏教用語で、お坊さんが座って説教をする場だったと言います。
また落語が、宗教の説く道を横から崩しても許されてきたのは、宗教というものがすでに日本人の生活の中で成熟していたからで、新しい宗教が社会に揉まれ、社会と折り合っていくうちに芸能・アートが発生し、分厚い文化性を生み出していくものなのだということでした。
そして、宗教が価値観を濃縮させていく性質を持ち、反対に芸能は拡散させるものだということでした。
こういった話に、聴講者の多くが「なるほど」とうなずいて耳を傾けていました。
それから、落語のルーツについての話にも花が咲きました。
そもそも落語となる流れは大きく3つあり、1つは前述した「説教」。2つめは「説話文学」で、これは神話・伝説・昔話など、口頭で伝えられてきた説話を文字によって構成された文学のことです。そして3つめ「おとぎ話」です。この3つが安土桃山時代に交わり、その時に話の上手いユニークな人々が大勢登場します。それが、それぞれ落語、講談、絵解きなどに変化していったそうです。
鼎談は、お三方の掛け合いが楽しく、まるで落語を聞いているかのような笑いに包まれていました。
最後に、釈先生の「宗教はある価値観を共有するものであり、特に浄土真宗という宗派はギューッと中心に寄っていく性質のものです。そのギューッと寄りすぎる力を芸能(落語)で緩めると、周辺を豊かにすることができ、社会が良いバランスになっていくと考えています。今日の落語は3席ともよかったですね」という感想で締めくくられました。
- 京阪グループ開業110周年記念事業「記念フォーラム」
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- 第32回 神に祈った武将たち -石清水八幡宮と源平・足利・織田・豊臣・徳川-
- 第31回 天下統一の夢 -信長と光秀の光と影-
- 第30回 信仰とお笑いの狭間に落語
- 第29回 平清盛と平家物語
- 第28回 葵祭
- 第27回 酒は百薬の長 落語は百楽の長
- 第26回 今に生きる熊野詣