江戸時代、現在の料理旅館である旅籠（はたご）では、旅する武士のためにイワシを炊いて保存食を作っていました。さびた刀に似ていることから「鈍刀煮（どんとうに）」と呼ばれ、武士はこれを印籠（いんろう）に入れて旅に携えたそうです。

京都の老舗料亭で作られ続けていたイワシの佃煮を、保存食「鈍刀煮」として復活させたのが、京の六味・店主の綾木俊治さんです。約45年前、修業先の祇園の老 舗割烹で日持ちしないイワシを常温で保存するための難しい技術を要する料理があることを知り、その製法や味を探求。嵐山・嵐亭の料理人・竹端寅一さんに弟子入りし30年かけてその味を習得しました。

「しょう油が変われば料理の味がすべて変わる」と、江戸時代から伝わるしょう油を使い、イワシを5時間炊いては乾燥するという行程を繰り返して約3日間天日干しに。真っ黒な塊になったイワシには、旨味やカルシウム、脳や目に良いとされるDHAが凝縮されています。お茶漬けなら1本で約3膳分。ご飯の上にほぐして熱いお茶をかけると、濃厚なしょう油とイワシの旨味がしみ出し、豊かな味わいを楽しめます。おにぎりの具やお酒のアテとしてもぴったりの逸品です。