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|継ぐコラム|2023/04/27

京阪沿線 継ぐコラム Vol.1

きょうの餡を継ぐ

あるときは、四季を映しだす甘い芸術品。あるときは、素朴な昔ながらのおやつ。小豆を甘く炊いてつくる小倉餡などは、何百年も前から日本ならではの甘味として愛され、いまなお進化をつづけています。とくに京で愛されてきた餡は、甘すぎず、雑味なく、素材の良さを感じられるのが特長。いったい、どんな人たちがつくり、未来につなげているのでしょうか。京の餡を継ぐ出会いが、京阪電車からはじまります。

四角い餡の、ラブレター。

「餡の良さは、素材の良さ」。そう話すのは、220年つづく京菓子の老舗[亀屋良長]の8代目店主、吉村さん。伝統の上菓子から焼き菓子まで、多彩なアイテムがそろうお店は、洗練されたセレクトショップのよう。けれどすぐ上の階には昔ながらの“餡場”があり、毎朝、自家製のつぶあんが炊かれています。

「お店ごとの個性がわかりやすい」という、つぶあん。亀屋良長さんでは風味豊かな京都産の丹波大納言小豆を使用し、加えるのは敷地内に湧く「醒ヶ井」の水と砂糖のみ。色、ツヤ、香り、ヘラですくった感触などで、味見する前から「今日もいい出来だ」とわかるとか。

  • 亀屋良長
  • 亀屋良長

そんなこだわりの餡を新感覚で楽しめるのが、フレンチ出身の女将さんが開発した「スライスようかん」です。職人の手で厚さ約2.5mmに切り揃えたようかんを、食パンにのせて焼くだけで、熱々の極上あんトーストが完成。ちなみに女将さんのおすすめは、4枚でも6枚でもなく「5枚切り」の食パンです。

ようかんの新たな可能性を引き出したこの商品、じつは、当時小学生だった息子さんのために思いついたもの。「あんこ好きの息子に毎朝トーストをつくるうち、“あんこもスライスチーズみたいにパッとのせられたら”と」。試作の段階でも、子どもらしい率直な意見が助けになったそうです。

「私たちは、もともとオーダーメイドの上菓子屋です。 “目の前のお客さまに喜んでもらえること”を、これまでも、これからも一番に考えたい」。そんなつくり手の愛が詰まった餡は、まるで四角いラブレター。どおりでアツアツ、とろけるようにおいしいわけです。

  • 亀屋良長
  • 亀屋良長

亀屋良長(かめやよしなが)

だれに贈る?甘いブーケ。

さらに京の餡を追いかけて、にぎやかなアーケードが連なる三条寺町界隈へ。

1927年創業の「梅園 三条寺町店」は、外観も店内もレトロモダンな甘味屋さん。店舗ごとに違う雰囲気やメニューが魅力で、こちらのお店限定でいただけるのが、甘味を盛りあわせた「花点心」。そのなかの一品が、「あんの花束」という創作和菓子です。

点心で味わえる「カラメル」のほか、お持ち帰りで楽しめる「抹茶」や「紅茶」といったオリジナル餡には、3代目店主の「餡のおいしさを若い世代にも広めたい」という願いが。熱意を秘めたかわいい花、贈り物にもぴったりです。

  • 梅園 三条寺町店
  • 梅園 三条寺町店
  • 梅園 三条寺町店

梅園(うめぞの) 三条寺町店

復活して100年、縁起いい餅。

こちらは一転、にぎわいを避けるように、出町柳の路地にたたずむお店。

「大黒屋鎌餅本舗」は、稲刈りの鎌をかたどった江戸時代の縁起もの、「鎌餅」を100年以上前に復活。いまも当時と同じやり方で、餡のもとになる生あんからすべてを手づくりしています。

水からゆでた小豆をアク抜きして、水分を絞ったら甘みを加えて本炊き。「朝から晩まで15時間近くかかるけど、ひとつも手間を省けない」と笑う3代目がつくる餡は、自然な小豆の風味が格別。すべて手作業で数に限りがあるので、観光シーズンは早めに立ち寄るのがおすすめです。

  • 大黒屋鎌餅本舗
  • 大黒屋鎌餅本舗
  • 大黒屋鎌餅本舗

大黒屋鎌餅本舗(だいこくやかまもちほんぽ)

  • おすすめ商品:鎌餅(1個)/237円、鎌餅(5個箱入)/1,305円
  • 8:30~18:30
    水曜、第2・4木曜休業
  • 075-231-1495
  • 出町柳駅下車 北西へ徒歩約15分 MAP

おかえり、と迎えてくれる。

歴史ある餡といえば、やはり、洛北のこちらも外せません。

北野天満宮内の茶店としてはじまった「粟餅所・澤屋」は、創業1682年。京都人ならだれもが知る、全国でも希少な“粟餅”の専門店です。99歳まで餅をこねていた12代目の跡を継ぎ、13代目、14代目が伝統の味を守っています。

「うちの餡は昔からあっさり」という澤屋さんいわく、「“あんこ”と“きなこ”は、日本人にとって舌のふるさと」。だからこそ、変わらない味を大切に。ひとつひとつ手で丸められた粟餅は、みずみずしいこしあんと柔らかなお餅、粟の食感がやさしく調和。心を包み込むおいしさです。

  • >粟餅所・澤屋
  • >粟餅所・澤屋
  • >粟餅所・澤屋

粟餅所・澤屋(あわもちどころ・さわや)

  • おすすめ商品:紅梅(3個)/600円
  • 9:00~17:00(売り切れ次第終了)
    水・木曜・26日休業
  • 075-461-4517
  • 出町柳駅からバス 北野天満宮前下車すぐ MAP

ひかえめな、白あんの乙女。

最後に向かったのは、二条川端の東側、隠れた名店が並ぶ通り。

町屋を改装した店舗に洗練された空気が漂う「kashiya」のご店主は、パティシエだけでなく「亀屋良長」で和菓子職人も務めた経歴の持ち主。「食材のひとつとして、気づかれないぐらいに餡を使っています」。

そんな言葉どおりの商品が、「白あんと黒豆のロールケーキ」。コクのある生クリームにも口溶けのいい生地にも忍ばせた白あんは、まさに隠し味のような存在。繊細なバランスのなかで、ほかにないしっとり感や味わいをもたらしています。

  • Kashiya
  • Kashiya
  • Kashiya

Kashiya(かしや)

  • おすすめ商品:白あんと黒豆のロールケーキ/900円
  • 11:30~18:00(L.O.)
    火曜休業
  • 075-708-5244
  • 三条駅下車 北東へ徒歩約10分 MAP

餡への想い、お客さまへの想い。つくり方や伝え方は違っても、それぞれのお店ごとに愛がたっぷり詰まった京の餡。そのあたたかさを受けとめて、きょうも大切な人と分かちあいながら、いつまでもこの街に継いでいきたいおいしさです。

さて、つぎはどんな“継ぐ”に出会えるでしょうか。

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