琵琶湖疏水は水運を活性化し、電気をつくり、人々に安定した飲み水を提供しています。
しかし、こうした私たちの暮らし以外にも、疏水によって大きく発展したものがありました。
それは明治・大正期の庭園文化。今も私たちを魅了する名庭をご案内します。
「もみじの永観堂」でおなじみの京都屈指の紅葉名所。
毎年秋の特別拝観では、みかえり阿弥陀をはじめとした寺宝が特別公開されることでも知られています。
境内の放生池は、四季の自然を写す天然の水鏡。風光明媚なこれらの景色を形づくる池にも疏水分流からの水が引かれています。
疏水の竣工から間もない1895(明治28)年に創建され、社殿を囲うようにして造られた神苑は、無鄰菴をはじめ数多くの名庭を手掛けた7代目小川治兵衛によるもの。疏水の水を引き込んだ池泉回遊式庭園で、春はベニシダレザクラ、初夏は花しょうぶなど四季折々の花が彩ります。
明治・大正期に活躍した七宝家・並河靖之の旧邸宅と工房跡。
当時、七宝焼を求めて訪れた外国人をも魅了した庭園には、
七宝焼の研磨用として引かれた疏水の水を利用していました。
躍動的な水の流れや池の造形と、落ち着いた佇まいの家屋の対比が見所。
この庭も7代目小川治兵衛の手によるもので、
無鄰菴や平安神宮の庭園より前に造られており、
後の造園手法のルーツを感じることができます。
上野動物園に続き日本で2番目の動物園として、1903(明治36)年に開園。3世代にわたるニシゴリラの繁殖や、ゾウの飼育に力を入れており、身近に動物たちと触れ合える憩いの場として人気です。2015年秋にオープンした「京都の森」には、疏水の水を利用した棚田や小川があり、田園の中で暮らす生き物の生態を学ぶことができます。