噺の情景を思い浮かべるだけで、なんかええなぁ…と

　「三十石夢の通い路」は、船頭さんが歌う三十石船唄や、船が夜の淀川をゆっくり進んでいく感じなど、聞いているうちに自分も一緒に乗っているような感覚になって、「なんかええなぁ」とほっこりした気持ちになる噺です。諸説あるようですが、くらわんか舟は関ヶ原の戦いで徳川軍の物資補給に協力したことから、徳川幕府より営業特権を与えられたそうです。「餅、食らわんか！」と売り人の言葉が荒っぽかったというのも、お上からの不作法御免の特権だったそうですが、お客さんも旅から大坂に帰るところでお金を出し渋ってたんと違いますか。気前良く買っていたら、言葉も優しくなっていたかもしれませんね（笑）。
この噺は、くすぐりも最初の方しか出てこなくて、笑いも少ないので、初めて落語を聞く人は物足りないと思うかもしれません。でも、何度も聞いてみてください。僕も年齢を重ねるごとに噺の味わい深さを感じることができました。
昔は旅に出るのも徒歩や船などでの移動が基本で、時間が掛かって大変やったんやろうなぁと思いました。鍵屋資料館で京阪電車が1910（明治43）年に開業したという記録を見ましたが、電車が開通して枚方へも気軽に行き来ができるようになって、こうして噺の舞台を巡れるとは便利な時代になりましたね。こんなふうに歩くのもいいですし、電車の車窓から「昔はこんな感じやったんかなぁ」と落語の世界をイメージするのもおすすめです。実際に噺を聞いた時、より想像が膨らむと思います！