京都ツウ・ウオーク

第9回「都に残された狩野派の名作」 ~京狩野派の魅力に触れる~ 2013年4月27日(土)開催

青空広がる春の日、第9回京都ツウ・ウオークが開催されました。
今回のテーマは「狩野派の名作」。
狩野派は、古くは室町時代から御用絵師として活躍、天皇家・将軍家に代々仕えてきました。そのことから、京都には狩野派の絵画を所有しているお寺などが今でもたくさん残っています。京都ツウ・ウオークでは、狩野派の作品を所蔵している聖護院や南禅寺を訪ねます。

レポート風景

集合は神宮丸太町駅。
案内はらくたび・森明子さんです。

レポート風景熊野神社

丸太町通を東へ向かい、最初にやって来たのは、811(弘仁2)年に創建の熊野神社。

古来より、紀州(現・和歌山県)の熊野三山にお参りする熊野詣は天皇・貴族をはじめ、庶民にも広まっていました。
京都から熊野へは往復1カ月もかかったそうで、大変熱心に信仰していた白河上皇は9回、後白河上皇にいたっては34回もお参りしたとか。
811(弘仁2)年に修験道の日円上人が、そのよりどころとしてこの地に熊野権現を勧請したのがはじまりだそう。
またこの神社は、熊野若王子(にゃくおうじ)神社、新熊野(いまくまの)神社と並び「京の三熊野」と呼ばれています。
応仁の乱で社殿は焼失してしまいましたが、その後は小さな社により奉祀されていました。江戸時代に聖護院宮道寛法親王は令旨を下され、朝廷をはじめ多くの寄進により再興されました。

レポート風景

熊野神社の提灯や絵馬には「八咫烏(やたがらす)」が描かれています。
八咫烏とは熊野の神様にお仕えしている神使で三本足の大きなカラス。神武天皇を大和(現・奈良県)の橿原まで先導したという故事から、良い方へ導くご利益があるとして信仰されています。
また、太陽の化身でもあり、三本の足はそれぞれ天・地・人を表していると言われています。

レポート風景

ところで、京都の名菓のひとつに「八つ橋」というのがあります。
琴の名手・八橋検校(やつはしけんぎょう)にちなんだお菓子で、琴の形をモチーフにしています。
江戸時代中期に金戒光明寺の参道にある茶屋で出されるようになり、その後一旦途絶えてしまうものの、明治になって復活させたのが西尾八ッ橋の12代目・西尾為治(にしおためはる)氏。
八ッ橋の復活を成し遂げた偉業を称えて、彼の像が、境内の東側に建てられています。

レポート風景聖護院

次に向かったのは、聖護院です。
代々、天皇家あるいは摂家の人が出家して住職を務めてきた門跡寺院。
平安時代から明治時代末期まで続いた37代のうち、25人が天皇家、12人が摂家の出身という、非常に格式の高いお寺です。
江戸時代の終わりに御所が焼けた際には、仮御所として光格(こうかく)天皇の住居になったこともありました。幕末には孝明天皇と幼い明治天皇が滞在したことも。

レポート風景
宸殿二の間「吐綬鶏」(聖護院提供)※堂内の撮影はできません

堂内へ入って狩野派の障壁画を眺めながら、お寺の方の話を聴きました。
このお寺は天皇家との関わりが深いことから、御用絵師・狩野家が手掛けた襖絵などが数多く残されています。
拝観は事前申込み制となっています。
障壁画はすべて原画で、部屋の中で間近に見られるため、当時と同じ目線で眺めることができます。
およそ170面あるという狩野派の金碧(こんぺき)障壁画(襖や壁に金箔を貼りその上に顔料で絵を描いた絵画)。その7割が狩野永納ら京狩野によるもので、残りは狩野益信ら江戸狩野が描いたといわれています。
「孔雀の間」は「使者の間」とも呼ばれ、仮皇居として使われていた時、天皇を訪ねてきた使者が待機する部屋でした。狩野永納による襖絵は吉祥を表す孔雀を中心に、日本画の定番モチーフである華やかな牡丹と、南国の植物で、権力の象徴として好まれたソテツが配され、また孔雀も雄雌一対のみならずひな鳥も描かれた珍しい構図となっています。
また「上段の間」「二の間」「三の間」は江戸狩野・狩野益信によるもの。「上段の間」の天皇や門跡(聖護院宮)が座る玉座には、権力を示す松の絵が大きく描かれています。対面所となる「二の間」には花鳥画が描かれており、その中には綬鶏(じゅけい)という中国に実在する鳥をモチーフに描かれた「綬鶏図」があります(写真)。頭に飾り羽があり、のどに大きな赤い肉垂れを付けていることから「血を吐いているように見える」として「吐(と)綬鶏図」とも呼ばれています。
宸殿は昭和30年頃まで聖護院宮の住居として非公開であったため、300年前に描かれた障壁画ですが、金箔が剥がれたり色が落ちてしまうこともなく、たいへん保存状態が良いものばかりです。

レポート風景

本堂でご本尊を拝観した後、南の庭についてのお話を聞きました。
この枯山水庭園に見えるお庭は、実は修験道の道場。
節分と6月7日の本山修験宗の開祖・役行者(えんのぎょうじゃ)の命日に山伏が集まり、護摩壇をしつらえて護摩供養が行われます。
普段は白川砂を敷いて、砂紋の模様を時々変えながら庭の形にしているそうです。

レポート風景須賀神社

聖護院を出ると、すぐ近くにある須賀神社へ。
こちらは旅行・交通安全のご利益があります。

レポート風景

また、2月2・3日に良縁を結ぶお守り「懸想文(けそうぶみ)」とそれを売る人もこの神社の名物。
懸想文とは平安時代のラブレターで、貴族の中にはその代筆をアルバイトにしていた人も。ただし、そんなアルバイトの姿を見られては恥ずかしいので顔を隠していたそうです。

レポート風景岡崎神社

さらに東へ向かって歩きます。
到着したのは岡崎神社。
794(延暦13)年の平安遷都の際に造られた、王城守護の社のひとつ。
素盞嗚尊(スサノオノミコト)奇稲田姫命(クシイナダヒメノミコト)八柱御子神(ヤハラシノミコガミ)が祀られています。

レポート風景

昔は方角を十二支で表し、東は卯の方角にあたるため、この神社ではウサギを狛犬ならぬ「狛兎」をはじめ、ウサギの像があちこちに置かれています。
祭神が子宝に恵まれたこと、ウサギが多産であることから安産・子授けの神として信仰されています。

レポート風景

レポート風景

南禅寺を目指して、森さんオススメの道を進みます。
この道は桜並木が続き、春には見事な風景になるそうです。
途中で広い庭園の見える場所に差し掛かりました。ここは野村美術館前。
元は昭和のはじめに建てられた個人の邸宅で、代々両替商を営み株の売買によって財をなし、のちに野村證券・野村銀行(現・りそな銀行)などの野村財閥を築き上げた野村徳七のコレクションが収められています。

レポート風景南禅寺

南禅寺に到着しました。

京都には「五山」と呼ばれる5つのお寺(天龍寺・相国寺・建仁寺・東福寺・万寿寺)があります。臨済宗のお寺の中で、特に格式の高いお寺を指しています。南禅寺はその五山のさらに上に立つ最も格式の高い禅寺となります。
創建当時の伽藍は室町時代に火災や戦乱で失われましたが、桃山時代以降に再建され現在に至ります。
三門は京都にある三門の中でも大きなもので知恩院、仁和寺と並ぶ「京の三大門」の一つ(諸説あります)。石川五右衛門の「絶景かな、絶景かな」のセリフで有名な歌舞伎の『楼門五三の桐(さんもんごさんのきり)』にも登場します。

レポート風景

三門をくぐって法堂へ。
禅寺の法堂の天井には龍が描かれています。これは龍が仏教の守護神であると考えられていること、また竜神に雨乞いをしたことから「あまねく人々に仏法の雨を降らせる」という意味もあるそうです。このお寺の絵は、明治から大正時代に活躍した日本画家・今尾景年(いまおけいねん)によるものです。

レポート風景水路閣

南禅寺の本坊の近くにあるのが水路閣。
この上はびわ湖の水が流れています。
明治時代に行われた近代化事業の一大工事「琵琶湖疏水」の建設によってびわ湖の水を京都に引き込み、生活用水・工業用水に利用されてきました。現在でも京都市内の水の約97%がびわ湖の水で賄われています。
建設から約100年経ち、今では京都の主要な観光スポットとなっています。

レポート風景

最後に訪れたのは、南禅寺本坊の方丈です。
方丈とは住職の住まいのこと。豊臣秀吉が京都御所に建てましたが江戸時代になって移築されました。天皇が住んでいた御所にあったため、襖などの障壁画は狩野派が手掛けており、桃山時代らしい金箔が貼られた壮麗豪華なものや、金泥を施した穏やかな水墨画が並んでいます。狩野永徳がどの部屋にどのような構図・モチーフの絵を描くかという制作指揮を執り、狩野派の絵師たちが一丸となって取り組んだ障壁画です。永徳自らが描いた作品は、数々の戦乱・大火で焼けてしまい全国的にあまり残っていません。その中で、中国の神仙思想に基づいて描かれた南禅寺の「群仙図」は、虎に懐かれる仙人や、師匠が弟子に仙術を教える様子などを題材としています。“人物を描いた金碧画”が現存しているのは珍しく、貴重な作品と言われています。

聖護院から始まり、南禅寺で終了した今回の京都ツウ・ウオーク。類い希なる狩野派作品を見ることができ、大変充実した一日になりました。次回も楽しいウオークを企画いたしますのでご期待ください。

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