京都ツウ・ウオーク

第6回「気品薫る京のひな祭り」 ~西陣の門跡尼寺を訪ねて~ 2012年3月24日(土)開催

ようやく今年の梅の見頃を迎えた 3 月のある土曜日。第6回京都ツウ・ウオークを開催しました。
テーマは3月らしく「ひな祭り」。
人形の寺として名高い門跡尼寺を目ざし、西陣エリアを散策します。

レポート風景

出町柳駅の改札口前に集合です。
今回も、らくたび・森明子さんのガイドで楽しく出発です。

レポート風景 レポート風景

出町柳駅の5番出口から高野川に掛かる河合橋を渡り、高野川と賀茂川が合流して鴨川となる地点へと向かいます。
駅名になっている「出町柳」は、実は地名ではありません。
かつてこの辺りに出町と柳町という町があり、川が合流する場所ということから「出町柳」と呼ばれるようになったそう。

レポート風景 幸神社(さいのかみのやしろ)

最初のスポットは幸神社(さいのかみのやしろ)。
この神社はかつての平安京を守護するため北東(鬼門)の位置にあります。

レポート風景 木彫りの猿

平安京を守護していた名残を、今でも神社の一隅に見ることができます。
本殿の北東に置かれた木彫りの猿がそれ。京都御所の猿が辻の猿と兄弟だ、という説もあるそうです。

レポート風景

ところで、猿がなぜ厄除けになるのでしょうか?
昔は方角を東西南北ではなく、干支(えと)で表していました。
鬼門である北東は、干支でいうと丑虎(うしとら)にあたり、これと反対の方角の干支、つまり申(さる)を置くことが鬼門封じとなったのです。
また、難が去る=猿というのも理由の1つ。

レポート風景 相国寺(しょうこくじ)

続いては相国寺(しょうこくじ)。このお寺の南には京都御所があります。
かつては天皇が住む御所の北側に住宅やお寺を建てることは禁じられていました。
しかし室町時代に、当時の天皇をしのぐ強い権力を持った室町幕府3代将軍・足利義満(あしかがよしみつ)によって、1392(明徳3)年にこの相国寺が創建されました。
最盛期には現在のおよそ36倍もの敷地を有し、高さ約109mもある七重塔が立っていたといいます。
諸堂の多くは応仁の乱(1467~77年)で失われ、三門跡や仏殿跡はそのときに焼け落ちたもの。
京都の観光名所として名高い金閣寺・銀閣寺は、相国寺の末寺でもあります。

レポート風景 法堂

禅宗寺院では法堂など、お堂に龍の絵が描いてありますが、それには訳があります。
建物が木造建築であることから、水をイメージする生きもの=龍を描くことで火災除けとしていました。
また、龍は仏の守護神であること。
そして雨を降らせる生きものであることから「あまねく人々に仏法の雨を降らす」という意味を持たせているのです。

レポート風景 大聖寺

烏丸通を少し南に下がり、西へと進む道の角に大聖寺があります。
ここには室町幕府3代将軍・足利義満の邸宅が置かれ、四季折々の花が咲くたいへん美しい庭があったことから「花の御所」と呼ばれていました。
8代将軍・足利義政(よしまさ)まで暮らしていたといいます。

日本では、「鎌倉」、「江戸」など将軍の住んでいた場所が幕府名であり、時代名となっています。
しかし、足利義満が造営した花の御所の正門が室町通に面していたことから、足利将軍の時代は「京都」ではなく「室町」と呼ばれています。

レポート風景

ところでこの大聖寺は、室町時代~江戸時代の終わりまで代々天皇家の第一皇女が住職を務めていた門跡寺院。
尼門跡の中でも非常に格式が高いお寺です。

レポート風景 白峯神宮

花の御所からさらに西へと歩き、白峯神宮に到着です。
祭神は平安末期の崇徳(すとく)天皇。
保元の乱に敗れて讃岐に配流された崇徳天皇は、亡くなると白峯陵という御陵に葬られます。
しかし明治元年、孝明天皇の遺志を継いだ明治天皇の命によって神様として京都に戻ってきていただくことになり、この白峯神宮が創建されたのです。

レポート風景

この地には、以前は蹴鞠(けまり)の家元である飛鳥井家(あすかいけ)の邸宅がありました。
しかし、明治天皇に従い東京に移住し、その跡地に神社が建てられたのです。
飛鳥井家がここで蹴鞠の神様をまつっていたことから、球技上達のご利益があるとして、野球、サッカー、バスケットボールなど多くのスポーツ選手が参拝に訪れています。

レポート風景 蹴鞠の碑

レポート風景 報恩寺

報恩寺にやってきました。
快慶作と伝わる阿弥陀三尊像を本尊とするお寺で、通称「鳴虎(なきとら)」。
鳴虎というのは報恩寺が所蔵する虎を描いた寺宝の掛け軸のことで、宋~明時代に中国の画人四明陶佾(しめいとういつ)によって画かれたもの。
毛が1本ずつ描かれていて、見る位置によって姿が異なって見えるそうです。
豊臣秀吉がこの寺を訪ねた際、鳴虎の掛け軸を見て非常に気に入り、聚楽第に持ち帰ってしまいます。
ところが、夜になると「寺に帰りたい」と訴えるように虎が鳴き続けるため、眠れなくなった秀吉は「これは鳴虎じゃ。寺に返せ」といって返却したといいます。
このことから、掛け軸は「鳴虎」として有名になり、報恩寺を鳴虎さんと呼ぶようになったそうです。

レポート風景 撞かずの鐘

また、境内にある鐘は「つかずの鐘」と言われ、由来には悲しい物語があります。
この辺りには西陣織の織屋が軒を並べ、この鐘が時を知らせていました。
ある日、織屋の織子と丁稚が、夕方を知らせる鐘がいくつ鳴るかで賭けをします。
織子は9つ、丁稚は8つで、賭けの内容は負けた方が勝った者のいうことを聞くというもの。
翌日の夕方、鳴ったのは8つ。
本来は9つなのですが、丁稚が寺の男に8つにするよう事前に頼んでいたのです。
それを知らない織子は悔しさのあまり、帯を鐘にかけて首をつってしまったのでした。
以来、この寺では大晦日と大法要の時以外は鐘をつくのを止めてしまい、今もそれが続いています。

鐘は、つけばつくほど音が鳴りにくくなってくるもの。
つまり古くてもつく回数が少ないほど音が鳴ります。
国の重要文化財のこの鐘は平安時代末期に鋳造されたもので、この時代のものが今でも音が鳴るのはとても珍しく、重要文化財に指定されています。
悲しくも、「つかずの鐘」になったことは幸いだったともいえます。

レポート風景 人形塚

次に訪ねたのは、今回のテーマの目的地ともいえる宝鏡寺。
正式には宝鏡寺門跡といい、天皇家ゆかりのお寺です。
境内には御所風に左近の桜、右近の橘が植えられ、その真ん中には人形塚が建てられています。

代々皇女が務めていたことからこの辺りの地名を付け、百々御所(どどのごしょ)との呼び名もあります。

レポート風景

宝鏡寺は、孝明天皇ゆかりの人形をはじめ、数多くの人形を保存しています。
そのため「人形寺」と呼ばれ、毎年春と秋に行われる特別公開では、テーマを設けた人形展を開催しています。
当日は、皇女和宮御降家150年を記念した特別公開が行われていて、たくさんのひな人形が展示されていました。

ひな祭りとは、古くから宮中で紙の人形使った「ひいな遊び」と、人形を川に流して人の罪や汚れを流す「ひとがた流し」が一緒になり、室町時代に「人形を飾ることで女の子の成長を願う」行事になったといわれています。
江戸時代になって現在のようなひな飾りの形式が確立したようです。

なお、関西と関東では男びなと女びなの置き方に違いがあります。
男びな・女びなの位置は、天皇・皇后の並び方を表していて、関西では、日本古来のしきたりに従い向かって右に男びな、左に女びなを置きます。
関東では、昭和天皇の即位の礼で国際マナーを取り入れたことから、向かって左に男びな・右に女びなを置くようになりました。

レポート風景 京菓子資料館

再び烏丸通に戻り、京菓子資料館に到着です。

京菓子の老舗・俵屋吉富が、京菓子文化を広く伝えるために開設した資料館です。
まず、2階の展示室へ。
これまでに菓子博で出品された糖芸菓子のほか、奈良時代から江戸時代までの和菓子の歴史の紹介や、江戸時代のパンフレット、和菓子の木型や原材料などが展示されていてます。

レポート風景

1階に戻ってお茶席へ。
床飾り、立礼棚(りゅうれいだな)が美しく整えられたお茶席で、老舗の心遣いが伝わってくるようです。

レポート風景

レポート風景

ここで、作りたての京菓子(生菓子)と薄茶をいただきました。
京菓子は、ひな祭りのお菓子「引千切(ひちぎり)」です。
引千切は餅を引き千切ったような形をしたお菓子で、平安時代には公家の子ども達の成長を願って食べていたそう。
現在では千切った部分の形を整え、生地にくぼみを作って、餡玉ときんとんの飾りを乗せています。
ひな祭りが近づくとたくさんの方が買われるそうです。

レポート風景

今回は、京阪沿線からちょっと離れて西陣エリアを歩くという、ちょっと珍しいウオークになりました。時代を経て大切に扱われてきたひな人形の美しさに感動したり、意外と知らなかった門跡尼寺や御所跡、京都の歴史や文化にまつわる場所で思いを馳せたりと、新しい発見がいろいろとあって、またもう一度訪ねてみたいと思える時間が過ごせました。
次回のツウなウオークも楽しい企画を用意していますので、お楽しみに!

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