京阪沿線に此の塔あり

京阪沿線に此の塔あり シリーズ7

仁和寺 五重塔

時代劇にも頻繁に登場する近世の代表的な名塔 若一光司

日本に現存する主要な五重塔は55基に上るが、その中でもっとも多くの人の目に触れているのは、仁和寺の五重塔だろう。京都市右京区御室(おむろ)にある仁和寺に直接足を運ばなくても、映画やテレビなどの時代劇に、仁和寺の五重塔が頻繁に登場するからである。「時代劇に出てくる五重塔の大半は、仁和寺の五重塔」といっても、過言ではないぐらいだ。

これほど多く映像で扱われているのは、仁和寺の五重塔が、「下層から上層に至る各層の屋根の大きさがほぼ同一」であるなど、江戸期の五重塔の様式特徴を、わかりやすい形で備えているからだ。江戸期の時代感を演出する上で、恰好(かっこう)の素材なのである。

仁和寺 五重塔
◆ 9時~16時30分※ 御殿拝観受付は16時10分まで※ 3~11月は17時まで※ 御殿拝観受付は16時40分まで◆ 境内無料※御殿拝観は大人500円・小中生300円◆ 075-461-1155◆ www.ninnaji.or.jp◆ 嵐電(京福)御室仁和寺駅下車北へ徒歩約10分

法隆寺の五重塔に代表されるように、古い時代の五重塔は、上層になるほど屋根のサイズが小さくなる。そうした五重塔では時代感の違いが見えてしまい、泰平下で町人文化が花開いた江戸時代の雰囲気が出ないのだ。

加えて、仁和寺では広大な境内に様々な伽藍(がらん)や建物が配置され、景観変化も多様なので、ロケ・スポットが数多く存在する。

都大路(みやこおおじ)に模されることもある白砂の「参道」や、京都もののサスペンス・ドラマでもおなじみの「二王門」。その二王門を遠景にして艶(あで)やかさを見せる「中門」や、江戸市中の景観演出にもってこいの「観音堂周辺」。それに、城内や大名屋敷内の場面撮影に活用されることの多い「御室御所跡」や、遠景でも近景でも画面映えのする「五重塔」などなど、撮影された場所やモチーフは切りがない。

さらに仁和寺の魅力を高めているのが、季節の彩りのすばらしさだ。境内は桜と紅葉の名勝としても有名だが、とりわけ、中門内の西側一帯にある遅咲きの「御室桜(おむろざくら)」は、江戸期から「庶民の桜」として親しまれてきた。

テレビの人気時代劇『鬼平犯科帳』では、満開の御室桜越しに眺めた五重塔がエンディングを飾っていたが、仁和寺の紅葉の風情もまた格別で、こちらは『遠山の金さん』や『暴れん坊将軍』などで、真っ赤な紅葉透かしの五重塔を、何度か目にしたことがある。

真言宗御室派の総本山である仁和寺は、光孝天皇の発願(ほつがん)を宇多天皇が引き継ぎ、886(仁和2)年に金堂が落成。このときの元号がそのまま寺名とされたが、譲位後の宇多天皇が法皇となって出家し、仁和寺に室(僧坊)を設けたことから、「御室」の呼称が興った。

創建から鎌倉初期まで興隆(こうりゅう)がつづいたが、たびたび火災と復興をくりかえし、応仁の乱では全山が炎上。江戸初期に第三代将軍・徳川家光の支援で再興されたが、現在の五重塔も同時期(寛永21年)に再建されたものだ。

重要文化財でもあるこの五重塔を初めて見たとき、彫刻的ともいえる端正な姿の美しさに、しばし心を奪われた。と同時に、妙に懐かしい既視感を覚えたのは、やはり、映像を媒介としたイメージが、いつしか脳裏に刷り込まれていたからだろう。

醍醐寺・東寺・法観寺の五重塔と並び、近世の五重塔を代表する名塔である。

仁和寺界隈をのんびり散策

和食堂 梵

わしょくどう ぼん

仁和寺の宿坊内にある食事処。京都の老舗湯葉店の大きな生湯葉がのった「ゆば丼」は、梅干しとワサビ、そこへ温泉卵を混ぜていただくと、上品な湯葉の風味にまろやかさが加わり、より印象深い味に。

甘めでコクのあるタレがたっぷりかかった「ゆば丼/850円」。ボリュームがあり食べ応え十分です

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いっぷく茶屋

いっぷくぢゃや

ご主人が仁和寺の桜守を務めていることから、メニューには、桜にちなんだデザートがラインナップ。丸みを帯びて咲く御室桜や黄緑色の花をつける御衣黄(ぎょいこう)という八重桜をモチーフにしたアイス、桜団子などの甘味が楽しめます。

抹茶シフォンケーキの上に、香りがさわやかでほどよい甘さの桜アイスがのった「おむろ桜/600円」

  • 9時~17時(L.O.)
    木曜(祝日を除く)・12/28(月)~1/1(祝・金)休業
  • 075-462-8296
  • 嵐電(京福)御室仁和寺駅下車 北へすぐ
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佐近

さこん

京料理とフレンチの両方が楽しめる和洋折衷のコースが人気。月替わりで、京野菜や旬の魚介類がふんだんに使われます。店内から仁和寺の二王門が一望できるのも魅力。

メーン・八寸・お造りなど、魚介類が中心の「さくらコース/4,600円」は全7品。季節のご飯も楽しみ

  • 11時30分~14時30分(L.O.)
    17時~20時30分(L.O.)
    水曜(祝日を除く)・12/25(金)~1/1(祝・金)休業
  • 075-463-5582
  • www.sakon-kyoto.com
  • 嵐電(京福)御室仁和寺駅下車 北へすぐ
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制作:2009年11月
価格・営業時間・電話番号等が変更される場合がありますので、
おでかけ時には、ご確認くださいますようお願い申し上げます。
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