京阪沿線に此の塔あり

京阪沿線に此の塔あり シリーズ6

比叡山延暦寺 法華総持院東塔

28年ぶり、濃霧の中の東塔は一幅(いっぷく)の絵図のように美しく 若一光司

比叡山には、もう20回以上は登っている。だが、母と2人で延暦寺に参ったのは、一度だけのこと。それは1981(昭和56)年の5月だった。

比叡山ではその前年の秋に、法華総持院の東塔が再建されていた。伝教大師(最澄)は日本全国6カ所の聖地に宝塔を建立したが、それを総括するのがこの東塔で、根本中堂(こんぽんちゅうどう)に並ぶ重要な信仰道場として、862(定観4)年に、慈覚大師円仁(じかくだいしえんにん)によって創建されている。

比叡山延暦寺 法華総持院東塔
◆ 東塔地区:8時30分~16時(受付)※西塔・横川地区:9時~15時30分(受付)◆ 諸堂巡拝料 大人550円・中高生350円(東塔・西塔・横川共通)※国宝殿拝観料は別途必要◆ 077-578-0001◆ www.hieizan.or.jp◆ 三条駅または出町柳駅から比叡山ドライブバス 延暦寺バスセンター下車すぐ/坂本駅のりかえ坂本ケーブル ケーブル延暦寺駅下車 北西へ徒歩約10分/叡電八瀬比叡山口駅のりかえ叡山ケーブル・ロープウェイ比叡山頂から比叡山内シャトルバスまたは比叡山ドライブバス 延暦寺バスセンター下車すぐ

その後、織田信長に焼かれて消失したままだったのが、伝教大師出家得度1200年慶讃大法会(けいさんだいほうえ)に際し、400余年ぶりに再建されたのである。1971(昭和46)年の横川(よかわ)中堂落慶(らっけい)法要に参加している母は、東塔の法要も楽しみにしていた。

ところが、落慶法要の直前に母は心臓発作で倒れ、半年の入院生活を余儀なくされた。

ようやく回復し、どうにか歩けるようになった、翌年5月。母の希望であらためて、法華総持院東塔の拝観に出かけたのだ。

その日は幸い暖かく天気もよかったが、延暦寺の駐車場から法華総持院までの坂道と石段は、体力もなく足の弱った母には、かなりの苦行だった。私が手を引きながら、長い時間をかけて登ったのを覚えている。

しかし、ようやく対面できた真新しい東塔は、そんな疲れを吹き飛ばしてくれるだけの、神々しい輝きを放っていた。目にも鮮やかな朱色の柱や欄干(らんかん)、真っ白な壁、木材の薄板を用いた柿葺(こけらぶき)の屋根などが、実に華麗な均整を保ち、霊山の緑に際立った輪郭(りんかく)を示していた。

「古いお寺も、出来た当初はこんなに派手やったんやねぇ」などと母が感心していたが、「わび・さび」の代名詞のような古寺名刹(めいさつ)も、創建時には同様の彩色が施され、極楽浄土の艶(あで)やかさで人々を感嘆させたに違いない。

早いもので、母との比叡山参りから、28年。すでに母も父も他界し、比叡山上でも「ロテル・ド・比叡」が開業したり、比叡山頂遊園地が閉園して、「ガーデンミュージアム比叡」が誕生したりと、様々な変化があった。

私もこの間、2、3年に一度は比叡山を訪れてきたものの、客人を案内したり、仕事がからんでいたりで、東塔地区から西塔(さいとう)地区、横川地区を駆け足で移動することが多く、法華総持院にまで立ち寄ることはなかった。

なので今回、28年ぶりに法華総持院東塔と対面し、言葉にしがたい感慨を覚えた。

境内はおりからの濃霧と小雨に煙り、雲上界(うんじょうかい)のような、幽玄たる気配に包まれていた。周囲の緑も他の伽藍(がらん)も、ただ茫漠(ぼうぜん)とした陰影となって霧に溶けこみ、何もかもが渾然(こんぜん)一体となって、ひそやかにたゆたっている。

そんな水墨画のような世界の中に、落慶法要の直後とはまた趣の異なる、しっとりとした朱の色彩と威風を湛(たた)えて、法華総持院東塔が浮かび上がっていた。それはまるで、人智を超えた意志で演出された一幅の絵図のように、深く美しく、胸にしみいる光景だった。

私は撮影スタッフとも離れて、ただ一人、霊域ならではの冥界(みょうかい)の近さをひしひしと感じながら、母の思い出に浸るばかりだった。

比叡山延暦寺界隈をのんびり散策

延暦寺会館内望湖

えんりゃくじかいかんないぼうこ

眼下にびわ湖を望みながら、延暦寺伝統の比叡ゆばやごま豆腐、地元・滋賀の食材をふんだんに使った精進料理が味わえます。

くみあげ豆腐鍋、刺身コンニャクなどが付いた「比叡御膳/2,100円」

  • 11時30分~13時30分(L.O.)
    ※「比叡御膳」以外のメニューは5日前までに要予約
  • 077-578-0047
  • syukubo.jp
  • 延暦寺バスセンター下車 南東へ徒歩約5分/ケーブル延暦寺駅下車 北へ徒歩約10分
写真

延暦寺バスセンター売店

えんりゃくじばすせんたーばいてん

延暦寺バスセンター内のお土産物店。比叡山ゆかりのお菓子や漬物のほか、延暦寺オリジナルのお香や念珠、ストラップなどがそろいます。併設の「比叡の茶店」では、名物のごま大福を食べてほっとひと息。

ごま大福と抹茶のセット「お抹茶セット/500円」

  • 9時~17時
  • 077-578-2139(代)
  • 延暦寺バスセンター下車すぐ/ケーブル延暦寺駅下車 北西へ徒歩約15分
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鶴喜そば 一隅会館店

つるきそば

江戸時代に創業したそばの老舗。延暦寺を訪れた貴人への食事として、そばを提供していたのが始まりだそう。窓のすぐ外に杉木立が並ぶ美しい眺めの中、自家製そばが楽しめます。お土産にはそばぼうろも。

山菜や生麩(なまふ)が載った温そばに、ちらし寿司が付いた「そば定食/840円」

  • 9時~16時15分(L.O.)
  • 077-578-7083
  • www.tsurukisoba.co.jp
  • 延暦寺バスセンター下車 東へ徒歩約5分/ケーブル延暦寺駅下車 北西へ徒歩約10分
写真
制作:2009年8月
価格・営業時間・電話番号等が変更される場合がありますので、
おでかけ時には、ご確認くださいますようお願い申し上げます。
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シリーズ1 東寺の五重塔
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