京阪沿線に此の塔あり

京阪沿線に此の塔あり シリーズ2

石山寺の多宝塔

「日本三名塔」の至宝が、紫式部も愛した観音霊場に 若一光司

滋賀県大津市にある東寺真言宗の石山寺は、実に恵まれた景勝の地に鎮座する。背景に伽藍山(がらんやま)を、眼前に瀬田川を望むその立地がすでに、独自の霊的な雰囲気を帯びている。

奈良時代後期に聖武天皇の発願により、良弁(ろうべん)によって開かれた石山寺は、当初は華厳宗東大寺の末寺(まつじ)だったが、醍醐寺を開創した聖宝(しょうぼう)が初代座主(ざす)となった平安時代に、真言密教の寺と化した。そしてこのころから、本尊である如意輪観音の霊験が広く知れ渡るようになり、貴族から庶民まで、幅広い人々が参籠(さんろう)や遊楽に訪れるようになる。その賑わいぶりは、「石山詣」という言葉をも生んだ。

特筆すべきは、こうした参籠者の中に、平安期を代表する女流文学者が何人も含まれていたことだ。清少納言は『枕草子』で、藤原道綱母(ふじわらのみちつなのはは)は『蜻蛉(かげろう)日記』で、菅原孝標女(すがわらのたかすえのむすめ)は『更級(さらしな)日記』で、それぞれ石山寺に触れているし、赤染衛門(あかぞめえもん)や紫式部も熱心に足を運んでいる。

石山寺の多宝塔
◆8時~16時30分 ◆大人500円・小学生250円(入山料) ◆石山寺駅下車 南へ徒歩約10分

とりわけ紫式部は、1004(寛弘元)年8月に石山寺で7日間を過ごし、十五夜の月が琵琶湖に美しく映えるのを眺めながら、『源氏物語』の「須磨(すま)」の巻の着想を得たと、伝えられている。式部はこのとき、脳裏に閃(ひらめ)いたイメージを忘れまいとして、大般若経の料紙(りょうし)に『今宵は十五夜なりけりと思し出でて、殿上の御遊恋ひしく…』と書き連ねたという。彼女が参籠したとされる部屋は「源氏の間」として、今も本堂の一隅に残されている。

こうした女流文学者にまつわる興趣(きょうしゅ)以外にも、滋賀県最古の木造建築物である本堂や、石山寺の名の由来となった巨大な硅灰石(けいかいせき)(天然記念物)の奇景。それに、花菖蒲(はなしょうぶ)が美しい回遊式庭園「無憂園(むゆうえん)」や、全山が燃え上がるような秋の紅葉など、石山寺では四季を通して見所の尽きることがない。加えて私が強く惹かれるのが、国宝でもある多宝塔だ。

多宝塔は寺院建築における仏塔の形式の一つだが、石山寺の多宝塔は真言宗に独特のもので、鎌倉時代の様式を持ち、見事なまでに均整のとれた構造美を誇っている。

源頼朝の寄進で1194(建久5)年に建立されたというこの塔は、多宝塔としては日本最古のもので、金剛三昧院(こんごうさんまいいん)多宝塔(和歌山)や慈眼院多(じげんいん)宝塔(大阪)と並び、日本三名塔の一つにも数えられている。建築装飾が少ない簡明な外観や、天井や化粧屋根裏の低さ、内外陣の結界の発達など、和様建築ならではの、実に気品に満ちた優雅さをたたえている。

塔の内部は非公開だが、四天柱の後方二本間に来迎壁(らいごうかべ)を設け、須弥壇(しゅみだん)には快慶(かいけい)作の大日如来(重要文化財)が安置されている。また、四天柱には各々16体の仏像が描かれていたが、現在では相当に剥落(はくらく)が進んでいるらしい。

この多宝塔が建立されたのは、紫式部や清少納言の没後百数十年を経てのことだが、もしも彼女らがこの塔を目にしていたら、どんな感想を抱き、それをどう表現しただろうか。

そうした想像がごくごく自然に喚起されるのも、やはり、石山寺ゆえのことである。

石山寺界隈をのんびり散策

豆風

とうふう

なめらかな自家製豆腐を主役にしたアイデア料理が豊富。少しずつ多彩な味を集めた「豆風おためしセット」には、シャリの代わりに豆腐を使った寿司も。こぢんまりとした落ち着きのある和風空間も魅力です。

八寸のような盛り合わせからデザートやコーヒーも付く「豆風おためしセット/2,500円」

  • 12時~13時30分(L.O.)
    17時~21時(L.O.) 不定休
  • 077-537-1301
  • 唐橋前駅下車 北西へ徒歩約5分
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至誠庵

しせいあん

滋賀の食文化・ふなずしを、子供にも親しんでもらいたいと開発した「ふなずしパイ」が人気。チーズに似た風味でワインにも合いそう。ふなずしやあゆ山椒煮のほか、無添加にこだわった手作り総菜がずらり。

オリジナルの「ふなずしパイ/500円」はプレーン・シナモンシュガー・スパイスの3種

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志じみ茶屋 湖舟

しじみじゃや こしゅう

「志じみめし」は、注文後に1人前ずつ鉄の釜で炊く名物料理。瀬田川のしじみを使った赤だししじみ汁も付きます。エビ豆や丁子麩など地元食材を生かした近江のおばんざいとセットのコースが4種類あり、ランチにもぴったり。

志じみめしに、近江牛しぐれ煮ほか4種類のおばんざいがセットになった「鳰(にお)/1,200円」

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制作:2008年8月
価格・営業時間・電話番号等が変更される場合がありますので、
おでかけ時には、ご確認くださいますようお願い申し上げます。
バックナンバー
シリーズ15 清水寺 三重塔
シリーズ14 比叡山延暦寺 根本如法塔
シリーズ13 宝塔寺 多宝塔
シリーズ12 四天王寺 五重塔
シリーズ11 三室戸寺 三重塔
シリーズ10 大覚寺 多宝塔
シリーズ9 真如堂 三重塔
シリーズ8 浮島十三重石塔
シリーズ7 仁和寺 五重塔
シリーズ6 比叡山延暦寺 法華総持院東塔
シリーズ5 醍醐寺 五重塔
シリーズ4 石清水八幡宮五輪塔
シリーズ3 法観寺の八坂の塔
シリーズ2 石山寺の多宝塔
シリーズ1 東寺の五重塔
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