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京都ツウのススメ

第百九十二回 京都の植物

フジバカマ

京都にゆかりの深い植物 京都の社寺の祭りや行事などで見る植物にはどのような意味があるのでしょう。
「らくたび」の森明子さんが、その由来を紐解きます。
京都で守り継がれている花も合わせてご紹介しましょう。

基礎知識

其の一、

京都の社寺で行われる祭りや行事には特別な植物が捧げられます

其の二、

それらの植物には祭りや行事に関わる言い伝えがあります

其の三、

京都では様々な在来の野生種を守る活動が行われています

祭りで捧げられる植物の意味

神棚や仏前には日常的に植物が供えられますが、社寺の重要な儀式である祭りや行事の際には特別な植物が捧げられます。例えば、京都の上賀茂神社で毎年5月に行われる賀茂競馬(かもくらべうま)では乗尻(のりじり)<騎手>がヨモギとショウブを身に着けます。これは、ヨモギとショウブに古来厄除けの力があると信じられているからだと考えられています。このように、祭りや行事で捧げられる植物には言い伝えなどが深く関わっています。

京都の自然が育んだ花々も

周囲を山に囲まれ、また河川や地下水が豊富な京都には多種多様な在来の植物が自生していました。中には、紫式部や清少納言が活躍した平安時代にルーツを持つほど歴史があるものや、長い歴史を経て今はほとんど見られなくなってしまったものも。京都では今、そんな植物を守ろうという活動も行われています。今回は京都の祭りや行事に登場する植物、京都にゆかりのある植物をご紹介しましょう。

神とともに歩んできた植物

京都の祭りや行事には様々な植物が登場します。

祇園祭の時期に登場する祭花

ヒオウギ

祇園祭の期間中、京都の家々ではヒオウギを飾る風習があります。ヒオウギは、細長い葉が扇を広げたように重なりながら伸びるのが特徴。ヒオウギは病気に強く、葉も長持ちすることから古来、縁起物とされており、京の町の疫病退散を願う祇園祭の祭花になったとも言われています。

ここがツウ

夏になると、八坂神社の境内では「祇園守」と呼ばれる白いムクゲが咲きます

葵祭を彩る清らかさの象徴

フタバアオイ

フタバアオイの葉を、カツラの枝葉に絡ませて作る「葵桂(きっけい)」は、葵祭に欠かせない装飾品。アオイ、カツラともに清らかさの象徴であるとされ、祭りを清めるために付けられているとも考えられています。

ここがツウ

『葵』はかつて、「あふひ」と書かれました。「ひ」は神を表すと言われ、「あふ(遭う)ひ(神)」から、神と人をつなぐ 植物だと伝えられています

神に奉げる12種類の造花

供花神饌(きょうかしんせん)

京都府八幡市の石清水八幡宮で毎年9月15日に行われる石清水祭。この儀式では、祭神に四季を表す12種類(水仙、椿、南天、菊、梅、竹、松、牡丹、橘、桜、杜若、紅葉)の植物を供えます。供えられる植物は紙で作ったもの。化学染料を一切使わず、和紙を染めて作られたこの供花神饌は石清水祭のみで見られるお供えです。

京都で愛された美しい花々

自然豊かな京都では
様々な植物が自生していました。
中には長い歴史を持つ花もあり、
守り継ぐ活動が行われています。

京都在来の野生種の育成も

フジバカマ

『万葉集』や『源氏物語』にも登場するフジバカマ。葉や茎から甘い桜餅のような香りがします。現在、京都府では絶滅寸前種に区分されていますが、1998(平成10)年に西京区で京都在来の野生種が発見されて以来、保全活動が行われています。

ここがツウ

例年10月中旬、中京区の革堂〈行願寺〉や下御霊神社、その周辺では「藤袴祭」が開催され、挿し芽で増やした京都在来のフジバカマが鑑賞できます

晩秋の京都の彩り

キクタニギク

小さな花を茎の先に泡のようにたくさん咲かせるのでアワコガネギクとも呼ばれるキクタニギクは、高台寺や円山公園の東側の国有林を源流とする菊渓(菊谷)川のそばに生えていたことが名前の由来です。現在、東山では絶滅していますが、環境保全団体などにより栽培が続けられています。花をつけるのは10月下旬から11月。晩秋の京を彩る花として知られていました。

天皇が愛した古代菊

嵯峨菊

細長い花びらが特徴の大覚寺ゆかりの菊です。平安時代、大沢池(おおさわのいけ)のほとりに自生していたこの野菊を嵯峨天皇が好んだと伝えられており、下から3段に分けて7輪、5輪、3輪と花をつけるように剪定します。11月の1カ月間、大覚寺境内では嵯峨菊展が行われます。

制作:2024年8月
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第六回 京都の着物
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第四回 送り火の神秘
第三回 祇園祭の楽しみ方
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